Aさんの作品

素人


いじめってひどい。無抵抗の人間を大勢で取り囲み、屈辱を与えて、楽しみに浸る。
いじめられっこが泣いても許してもらえない。
それどころか、泣くことで、かえっていじめを煽る結果になってしまう。


ここに一人のいじめられっこがいた。
名前をAとしておこう。

Aがいじめられだしたのはいつ頃からだろうか。
Aにも分からなかった。
物心ついたときには親から相手にされていなかった。
親は姉ばかり可愛がった。
着る服は姉のお下がりばかりだった。
幼稚園にも行かせてもらえなかった。
学校に行くようになってからは、クラスの子が鬼に見えた。鬼は毎日のように、ちょっかいを出してきた。
Aは鬼から髪の毛を引っ張られたり、カバンを蹴られたり、物を隠されたりした。
毎日がつらくないといえばうそになる。だが、鬼にいじめられると思えば、心が落ち着いた。
自分はお姫様なんだ。
運悪く鬼に捕まっただけ。
いつかは白馬の王子様が助けてくれる。Aは毎日願ったが、その願いがかなうことはなかった。
鬼からのいじめは、ますます激しくなった。

Aには友達もいない、仲間もいない。
存在価値のない記号にしか過ぎない。

昨年の今頃も鬼にたっぷりといじめられた。
鬼にトイレに連れて行かれた。
十匹の鬼にはやしたてられた。
人間としての心を失った。
灰になった。


学校を卒業した。
周りに誰もいなくなった。
Aは完全な記号となった。
このまま記号で終わるのであろうか。
それはAにも分からない。

記号は記号であり、人は人である。
この二つは永遠に交わることはない。
記号には感情はない、感傷もない、感激も感謝もない。
ただ点として生きるのみである。
記号になった以上は、自殺したいと気持ちもない。
そもそも気持ちというものがなくなっていた。


Aはもはや涙を流さなかった。
Aには過去も未来もない。
現在だけがあった。
いじめられていたという過去に苦しむことはもうなくなった。
将来への希望も絶望もない。
それでもいいじゃないか。
地球は永遠に自転している。
同じようにAも永遠に存在し続けるのである。

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