beeさんの作品

幸福論


きっかけも理由も解りません。
いじめだったのかも解りません。
幸福だったのだから解りません。

ゆーこちゃんという子、いました。
初めて会った時、栄養失調でした。
高校生でしたが、ゆーこちゃんは私服の学校で、パンクスの男の子みたいな格好していて、
一度ゆーこちゃんの学校の学園祭に行ったら、生徒の年齢もバラバラで、学校というより、
クラブ(お店)みたいでした。学校自体、廃虚みたいに荒れてた。

あたしとゆーこちゃんは同じ歳で、だから16歳だったと思います。
最初は、あんまり不健康で危ない事ばっかりしているゆーこちゃん、
電話してて貧血で倒れたりするし心配で、ご飯を食べさせてあげました。
お家がすごく乱雑だったから、お掃除しに行ってました。
煙草を買うお金を貸す位から始まって、よくわかんないけど、欲しい物買ってあげると喜んでくれるから、
買ってあげてたら、「お財布」と呼ばれてました。

あたしは高校生だったけど、ゆーこちゃんが学校まで迎えに来てくれるし、
あんまり学校行ってなくて、デートクラブの社長さんと知り合いだったから、
そうやってお金はいっぱいありました。
「サエちゃんは言わなくてもして欲しい事するから良い子だからペットにしてあげるね」
「変なおじさんやおばさんやお兄さんやお姉さんや犬や猫についてっちゃ駄目だよ」
ゆーこちゃん、ニコニコ言うから、嬉しかった。機嫌悪い時は、蹴ったりされたけど、
家族じゃないから、蹴られても殴られても、安心でした。

ジュース、買います。プルタブ、外します。ゴミ、出ます。
「あげるね」
ゆーこちゃん、いつも手ぶらで、物を持ってるの嫌いだったみたい。
プルタブはあたしの指輪。
ガム、買います。
あたしは歯医者さんでガム禁止令出てるので、ゆーこちゃんが食べます。
ゴミ、出ます。
「はい」
噛み終わったガム、渡されます。手が塞がってると、口に入ります。
煙草、吸います。
灰はその辺に落とします。
吸い終わります。
「灰皿ない」
あたし、手でも舌でも煙草の火、消せる特技、つきました。

金のなる木で、お財布で、ゴミ箱で、ペット。

飲み屋さんで皆と(バンドやってたから、沢山友達いて、歳も性別もバラバラの)お酒飲んで、
よく落書きされてました。
(あ。なんで羞恥や屈辱なかったのかな?おかしいね。)
うん。よく下着だけにされたりして、身体に線路とか文字とか、書かれて遊びました。

でも、ゆーこちゃんじゃなくて、あたし好きな好きな人いて、彼女の方がうんと我侭で、手がかかって、
お金もかかって。

高校生、春休みに補習沢山受けて、卒業したから、就職したけど、お仕事よりも彼女や
ゆーこちゃんの相手、忙しかったし、
なにより会社って変な所。人より仕事出来て上司に可愛がられたら、邪魔されるし、
噂流されるし。効率悪くなるのに、仕事に私情はさむのは理解出来ない。
ストレスで腎臓壊したりして、退職しました。
「夜の仕事の方があってるよね」って退職届け出しに行ったら人事の偉いおじさんに言われた。

デートクラブは相変わらず働いてたし、風俗の社長さんが雇ってくれて、
ゆーこちゃんは時々「お金ちょうだい」って位になって、だからゆーこちゃんより、
好きな好きな彼女に好きなだけ贅沢させてあげれたし、我侭きいてあげれました。

色々と事柄は省略してるけど、「車が欲しい」って言ったゆーこちゃんを、
あたしがどうしたかっていう事で、終りにします。
売りました。
あたしは、面倒見続けれる自信なかったし、だから、ゆーこちゃんを、
懇意にしてた風俗会社のチェーン店に、売りました。
多分、当時19歳。

いじめなのか解りません。
家ではない何処かにいられれば幸福だったし。
好きな好きな人もいたし。
ゆーこちゃんの我侭聞いてる間は人間でいなくて済んだし。
好きな好きな彼女がいれば何があっても何されても
幸福でした。

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