再会

再会・シーン1『凝視』



 この国のとある地方都市での出来事。
ストーカー行為をする人は、多分出世するであろう。
その情熱を違う事に向ければ。違った未来もあるはずなのに、勿体無い気がする。
小さな街のスーパーで、男は昼食のおかずを求めて惣菜コーナーの棚を物色していた。
今日はコロッケにするか、それとも豚カツにするかと男は悩んでいた。
それ故に彼は、背後からの視線を感じる事は無かった。
そう、手にしたコロッケを買い物カゴに入れるまでは。
 男はコロッケをカゴに入れる瞬間、時折感じていた視線を感じた。
「まさかな・・」
ポツリと一言言うと、そのまま男は気にする素振りもなくレジへと並ぶ。
支払いを済ませると、男は買ったばかりのコロッケを摘みながら、街並みに消えて行った。
 男の感は間違ってはいなかった。離れた場所から、その男の後姿を見つめる一人の女がいた。
女は、一定の距離を取りながら男の後を追った。
彼が自宅に入るまでは。
そして女は、再び街並みの中へと消えて行った。
 男は昼食を摂りながら今日感じた視線の事を思い出していた。
何時の頃からかは忘れたが、男には時折視線を感じる事があった。
思い当たる人物がいない訳では無かった。
「罪は償ったんだ。それに物理的にも不可能なはず。では、誰なんだ?」
男の口から独り言が零れる。
残ったコロッケとご飯を、何かをかき消す様に口の中へと放りこんでいた。
 食後の一服を深く味わいながら、まだ視線の事を考えていた男は、自身の思い過ごしだと結論付けて、
再び退屈な日常へと戻っていった。


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