再会

再会・シーン6『必然?』



 この国のとある地方都市での出来事。
 偶然というのは、時にその人の人生を変える時がある。
偶然は偶然の確率で起こるというが、はたして本当にそうなのだろうか?
 電車内のつり革に掴まり、男は揺れに身を任せていた。
西日を避けて太陽に背を向けていると、いつもの様に視線を感じた。
辺りを見回すと、偶然ガラスの反射の中に見覚えのある顔を見つけた。
男は振り向き軽く会釈したが、相手は気付く様子が無かった。
 男はその女に近づくと改めて声を掛けた。
「こんばんはマリちゃん。ユウだが覚えてる?」
長い黒髪が印象的なその女性は、一瞬ビクッとなり声のする方を見上げた。
「あっ、えっ、そっ、その節はどうも。こんばんは」
ユウはマリのぎこちない反応を気にするでもなく、話を続けた。
「今帰り?俺もそうなんだ。近所に良い店があってね、夕飯付き合ってよ」
マリが反応出来ずに戸惑っていると、ユウは半ば強引に彼女の手を取り電車を降りた。
 駅から徒歩数分の小さな繁華街の外れにその店はあった。
小じんまりとした温かい雰囲気の店だった。店に入るとユウは慣れた感じで、
「二人だけどいいかな?」
と、髪を後ろで束ねた涼しげな印象のウエイトレスに声を掛けた。
「いらっしゃいませ木村様。どうぞこちらへ」
ウエイトレスに案内され、店内奥に二人は通された。
 ユウは壁を背にして腰掛けると、メニューも見ずに注文を始めた。
マリが慌てて注文を決めようとしたのを見て、
「好きな物を注文しなよ。今日は俺の奢りや。遠慮はいらないよ」
と微笑んでみせた。マリはその後、メニューと格闘するが中々決まらなかった。
見かねたユウは助け舟を出した。
「辛いのとかって大丈夫?」
マリはホッとしたのか、
「はい。大丈夫です」
と首を縦に振ってみせた。
「なら、ジターナが良いかも?だが、覚悟しな。後からくるよ」
と、ユウは悪戯っ子の様な笑顔を作って見せた。注文が決まり、ウエイトレスを呼ぶと、
同時にワインとグラスが二つ運ばれてきた。
「あの、私お酒は・・・」
断ろうとするマリをよそに、
「大丈夫よ。ジュースみたいなものだから、飲んでみてよ」
とユウは杯を勧めた。断りきれずにマリは恐る恐るグラスを口にした。
 ワインは、いとも簡単にマリの口内を占拠した。思っていた以上に簡単に飲み乾した事にマリは驚いていた。
その光景を眺めながら、
「いいねぇ。ささ、もう一杯」
と、空いたグラスを再び満たしていった。
 程無くして料理が届き、二人は他愛もない事を話ながら、楽しい一時を過ごしていると、店に新たな客が訪れた。
冷たい印象の中に美しさを湛えた女性は、食事中のユウ達に話しかけてきた。
「ユウくんじゃない?あら、もしかしてデート?」
「よう。デートじゃないよ。」
ユウがポツリと答えると、女はマリを見つめながら、
「こちらどなた?」
と、尋ねてきた。
「チョッとした縁で最近知り合ったマリさん。今日は俺が強引に誘ったのよ」
ユウは照れくさそうにそう答えた。
「始めましてマリさん。千田恭子です」
冷たい印象を掻き消す笑顔で、恭子が握手を求めてきた。マリはぎこちなく
「角田マリです」
恭子と握手を交わす。
「邪魔しちゃ悪いから、あたしは消えるね」
二人を茶化した後、恭子はカウンターへと消えた。
 その後運ばれてきたデザートの甘美な魅惑を感応した二人は、店を後にする。
会計を済ませ店を出ようとすると、外は雨が降っていた。
「くそっ。本降りじゃんよ。困ったねぇ」
ユウが天気予報を無視したことを悔やんでいると、支払いを済ませた恭子がやってきて、
「あたし車だから送ってあげるわよ」
と、声を掛けてきた。
「ありがとう。助かるよ。やっぱ持つべきものは友だね」
ユウは調子よく恭子の誘いに乗った。
「じゃあ、私は・・」
マリの言葉は届かなかった。
「そうと決まればダッシュ」
恭子の掛け声が鳴る。三人は雨降る闇の中へと消えて行った。


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