どらごんさんの作品

性奴系図外伝(佐藤敬吾篇)

第16章  決断


調教室の鏡台の前で、圭子はすっかり化粧を終えていた。
檻の中で静江が悲しげな顔で圭子を見上げた。
明美が脛を蹴って圭子を立ち上がらせた。
圭子は静江をじっと見た。
目と目で見つめ合う。
これでもう娘の静江とも永久の別れになるのか。
圭子は悲痛な思いにくれた。過去のさまざまな思い出が蘇ってきた。
涙がどうしてもあふれてくる。
「圭子。時間だからね。もう行くよ」
明美が無情にも太腿に軽く鞭を当てて、圭子を引き立てた。
圭子が後ろを振り返った。
静江が鉄格子を掴み、顔を押し付けるようにして、圭子を見送っている。
圭子の目が涙で見えなくなった。
性奴隷志乃が海外へ売られていったときは、志乃の肉体は荒縄で亀甲縛りにされ、
全身をマジックで寄せ書きされた。
それに比べ、圭子は全身にピアスを施されているとはいえ、縄も打たれず、
ただ全裸に白いガウンを羽織らされている。
それにしても圭子は美しかった。
プロポーションは相変わらず保たれており、かえって妖艶な輝きを増している。
薄く口紅を引いているのも妖しげな魅力を増している。
圭子がいよいよはるか遠いところまで売られていく。
慶蔵が港まで見送りにいくことになった。
例年よりも早く梅雨入りしているせいか、外は小雨が降っていた。
慶蔵が直々に圭子を傘に入れてあげた。
「圭子。お前を売るのが何か惜しくなってきたぞ」
助手席に乗り込む慶蔵が、車のドアを開けるときに後ろを振り向いた。
圭子は全てをあきらめたかのように軽く微笑んだ。
慶蔵が助手席に座り、圭子が幼児を抱いて、雅代とともに後部座席に乗り込んだ。
二年近く飼われていた山野邸から敬吾が車を出した。
車は普段よりも磨き上げられている。内部の清掃も完璧でチリ一つ落ちていない。
圭子の門出を送るために、慶蔵が徹底的な車の清掃をリディアに命じたのである。
リディアは何時間もかけて、明美に怒鳴られながら、丁寧にワックス掛けしたのであった。
車窓の風景を圭子は目に焼き付けるようにして眺めた。
車は国道から高速道路に入り、ところどころ渋滞に巻き込まれながらも、大都会の真ん中を走っていく。
小雨で濡れそぼった街は圭子の心を表しているようである。
雨足が強くなってきていた。
港の近くで高速を下りた。
敬吾の運転する高級車が指定された桟橋に停車した。
すでに圭子の買主である中近東の王族の代理人が圭子の到着を待っていた。
岸壁には小型の貨物船が停泊していた。
慶蔵にリード紐を引かれて、圭子は車から下り立った。
圭子の首輪につけられた紐が代理人の手に渡された。
慶蔵は最後に、圭子に声をかけた。
「圭子。お前とは知り合ってからいろいろとあったが、これでもう会うこともあるまい。
でも、楽しかったぞ。身体を大切にな」
「旦那様もお元気で。静江と一郎をよろしくお願いします」
深々と下げた頭を上げた圭子の頬に涙が流れていた。
その涙を慶蔵が指で掬ってあげた。
褐色の肌をした王族の代理人が圭子を船へと引っ張っていく。
その後ろを雅代が圭子の幼児を抱いたまま続く。
圭子が船の階段を一段一段登っていく。
圭子の栗毛色の髪が水分を含んで重くなっていく。
甲板に上がったとき、港を見た。
おそらく日本の見納めであろう。
涙がこぼれて止まらない。
圭子はそのまま船底へと引かれて行った。
圭子が船の中に消えるのを見ると、慶蔵は敬吾の待つ車へと乗り込んだ。
敬吾の車から死角になって見えないところに、悟が車を停めていた。
圭子が載せられた船が港を出て行く。
おそらくもう二度と圭子を会うことはないであろう。
悟は涙を溢れさせながら、船の出港を見送っている。
「圭子さん、お元気で……」
水平線へと消えていく船を見ながら、悟は軽快な音を立てて雨を弾いている車のボンネットを
拳で強く何度も叩いた。
家へ戻った悟は沈痛な表情を崩さなかった。
悟は警察関係者と名乗っていた「出井智也」の名刺を探し出すと、受話器を上げた。
帰りの車の中で慶蔵は圭子をより過酷な場所へと、家畜として売り払ってやったという興奮に浸っていた。
長年誓っていた復讐がとうとう完結したのだ。
だが、車が高速道路を外れ、家に近づいていくと急に空虚感を覚えた。
「今日は久しぶりにリディアを徹底的にいたぶることにしようか」
慶蔵が家に戻ると、リディアを探し求めた。
リディアはちょうどキッチンの掃除を終わり、食卓で日本語会話のテキストを勉強しているところであった。
リディアは恥ずかしそうに微笑んだ。白い頬がピンク色に輝く。
「私の日本語はまだまだですから……」
リディアは頭のカチューシャを押さえるようにして頭を下げた。
その様子を見て、慶蔵はこの赤毛の白人女をたまらなく可愛く思った。
赤毛の頭を撫でてあげた。
「リディア、準備しなさい。これからお前を責めるからね、いいね」
リディアは、「はい」と消え入りそうな声で言った。
リディアは全裸にされた。
慶蔵によってメイド服のボタンが外されていき、下着も慶蔵の指で脱がされた。
敬吾の縄で食卓の椅子にきつく縛り付けられた。あられもない開脚した姿である。
キッチンにはいつの間にか明美と雅代がいやらしそうな目をして集まっている。
「リディア、素敵な格好してるじゃないの」
明美が意地悪そうに笑って、リディアの小振りの乳房を鞭で撫でた。
「白人のってきれいよね、いつも思うけど」
明美の正直な感想に、雅代も「あらら、ツユが垂れてきていますわ」と笑った。
「リディア、どうだ……。恥ずかしいだろう……」
慶蔵が息を吹きかける。
「け、慶蔵さん。恥ずかしいです……」
リディアが妙なアクセントのある日本語を返すと、「『旦那様』と言いなさい」と
明美がリディアの乳房に鞭を見舞った。
「まあまあ、明美さん。リディアは日本の習慣に馴染んだわけじゃないから」
慶蔵がリディアの傷ついた乳房をやさしく撫でた。
雅代が巨大な張り型を持ってきて、リディアの股間に挿入した。
リディアは喘ぎ声を上げている。
「なんか獣みたいに激しい声ね」
「ほんとですわ。こっちが恥ずかしくなりますね」
リディアは完全に玩具と化していた。
「旦那様。そろそろリディアのココにリングを填めますか」
明美が訊ねた。指でリディアの可愛い淫核を弄んでいる。
「少し考えさせてくれ」
慶蔵は雅代から受け取った張り型をリディアの胎内で小刻みに揺すりながら答えた。
慶蔵の目はリディアの狂態に釘付けになっている。
「今日は夜まで徹底的にいたぶってやるからね……」
慶蔵はリディアの顔を両手で挟みこんで、吸い込まれるような青い目に語りかけた。
「ねえ、川上さん。知ってる?」
水曜日の定例会議が終わり、山野建設本社の会議室から出てきたところで、
悟は海外部長の相馬始から声をかけられた。
「山野会長、とうとう圭子さんを中近東の王族に売っぱらったらしいな。
なんでもロバの相手をさせられるんだってね」
圭子に対して元々良くない感情を持っていた始が一方的にしゃべっている。
悟は気の無さそうな返事を返した。
藤川建設時代に冷遇されていた始の顔には「いい気味だ」という表情が浮かんでいた。
悟と同じ会議に出席していた常務の田沢も話しに加わってきた。
「そうらしいね。圭子さんもこうなっては哀れとしかいいようがないね。
でも、マゾ奴隷になっている圭子さんにとっては、ロバの相手をするというのも本望かもしれないね」
と田沢が言う。
「前に宴会やったでしょう。そのとき、圭子さんにいろんな恥ずかしい芸をやらせたけど、
アソコがすごい濡れていましたね。やっぱりマゾですよ」
「ほんとだね、わっははは」
田沢と始の下卑た笑いを後ろに、悟は廊下を歩いていった。
本日は遅い時間まで残ることにしている。
悟はそんなに急ぎでもない決裁書類を読んでは、判子を押していく。
時計を見ると、もう夜の10時になっていた。
すでに、悟の部下たちは帰宅していた。
誰も周りにいないことを確認して、悟は山野建設広島支店開設パーティーの案内状と
招待者リストを素早くコピーした。
コピー機のスタートボタンを押すとき、自分のやろうとしていることを考え、思わず指先が震えた。
コピー機が作動し、書類がコピーされてきた。
もう引き返せないところで来ていると悟は感じた。
土曜日になった。
梅雨空でどんよりとしている。
悟は出井警視と郊外のファミリーレストランで会っていた。
時間は3時過ぎであり、もっとも空いている時間帯である。
周囲に会話が聞かれるおそれはなかった。
「協力してくれる気になりましたか、川上さん」
出井は静かに悟の目を見ながら、タバコを悟に勧めてきた。
喫煙の習慣がない悟は、手を横に振った。
無言で、書類入れから数枚のコピーを取り出す。
受け取った出井が静かに紙をめくる。
「広島支店開設パーティーの招待者名簿です」
悟がつとめて冷静を装って言う。
出井が書類から顔を上げると、悟が続けた。
「このパーティーでは圭子さんを性奴隷として使った淫らなパーティーが行われました。
ここにある名前は山野会長の極めて親しい人たちと思います」
「圭子さんって、藤川圭子さんのことですね」
「ええ」
悟の双眸から涙があふれ、頬をつーっと流れていった。
出井はいぶかしげに見ていたが、「どうしたのですか?」と声をかけた。
悟はしばらく言葉を発することができないでいたが、言葉を繋ぎ合わせるように言った。
「圭子さん……圭子さん。圭子さんは数日前に、貨物船で中近東に売られていきました」
出井は驚きの目を上げた。
悟は続ける。
「ぼ、僕は圭子さんが貨物船に乗せられていくことを見ていました」
出井は手帳を取り出した。
悟の話の要点をしっかりと書き込んでいく。
「これで、山野慶蔵が少なくとも藤川圭子を売買したという証人が得られたわけだ」
出井の声はやや上気していた。
慶蔵の人身売買疑惑については、いわゆる情報屋による状況証拠ばかりで、
直接慶蔵が人身売買に関与したと言う直接証拠はなかったのであるが、
悟の目撃でその証拠が手に入ったことになる。
ただ、いきなり慶蔵の身柄を押さえるには時期尚早と思われた。
人身売買組織を地道にあぶりだしていくことが必要になってくるであろう。
「出井さん。私が圭子さんについて知っていることを全てお話ししますね」
悟はコップの水を一気にあおると、自分の運転手時代のことや、山野邸で初めて性奴隷としての
圭子を見たことや、
山野建設の宴会で圭子に淫らな淫芸をさせたことなどを一気に話した。
「広島のパーティーでも圭子さんを使いました。オブジェとしてです」
悟は話しながらも、自分ももしかしたら犯罪の共犯で逮捕されるのではないかと感じていたが、
中東に売られた圭子の惨めな境遇に比べれば、そんなことは大したことはないように思われた。
「圭子さんを助け出すことは難しいでしょうか。船ですので、まだ現地には着いていないと思います」
悟はすがるように出井に聞いた。
出井は外交上の問題があり難しいと前置きをした上で「やるだけはやってみましょう」と言った。


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