どらごんさんの作品

性奴系図外伝(佐藤敬吾篇)

第18章  包囲網


「佐藤敬吾はなかなか尻尾を表しませんね」
尾行を担当している捜査員たちが山科警部に報告した。
佐藤はもしかしたら無関係なのではないかと山科は思いかけたが、
刑事としての勘が佐藤に何かがあると思わせていた。
「佐藤が動き出しました」
山科に連絡が入った。
佐藤敬吾が高級輸入車を運転して都心に向かったという。
輸入車を運転するというのは慶蔵に命じられた仕事であることを意味していた。
慶蔵の在宅は確認されているので、慶蔵の送り迎えではない。
「佐藤を尾行してくれ」
山科は指令を出した。
十五分ほど後で、山科は尾行に失敗したという連絡を受けた。
佐藤はなかなか油断のならない男のようだ。
山科はふとひらめいた。
山野邸の近くに住んでいる情報屋の顔を思い出した。
「確か、狭山と三年ぐらい前に会ったことがあると言っていたな」
山野邸脇の並木道からセミの鳴き声が響いている。
すでに日は暮れかけていた。
「あ、山さん。遅れてすまん」
「いいよ。俺もほんの十分前に着いたばかりだから」
山科はすでに50代に差し掛かっている情報屋を助手席に引き入れた。
30分ほどして高級輸入車が山科の車が停まっている前を通りかかった。
佐藤敬吾の運転する車が戻ってきたのだ。
「あ、こいつですよ。狭山です」
助手席に座っていた男の横顔を見て、情報屋が叫んだ。
山科はすぐに出井に連絡を入れた。
「狭山さん、いらっしゃい。いつもお世話になっていますよ」
山野家当主である慶蔵は自ら狭山を玄関で出迎えた。
「外人女の具合はどうです?」
白髪交じりなのに茶髪にしたぼさぼさ頭を掻きながら、狭山が訊ねた。
「なかなかいい具合だね。津島君のところから買ったんだが、もうすっかりうちになついているね」
慶蔵がうれしそうに笑った。
最近では、リディアも慶蔵にすっかり従順となり、毎晩のように激しくリディアの肉体をむさぼっていた。
「それはよかったね」
狭山がニヒルに笑った。
リビングに通された狭山に、当のリディアがメイド姿で、コーヒーを出した。
リディアの胸が顔の前に来た狭山は思わずリディアの乳房をメイド服の上から触った。
慶蔵は思わず不快な表情を見せた。
(俺のリディアに何しやがる……)
リディアも驚いた顔をして胸を手で覆っている。
「中近東に売られた圭子のときは触り放題だったのにね」
狭山が皮肉っぽく言った。
「はっはは。まあ、いいでしょう」
慶蔵はすぐに表情を戻し、鷹揚に笑って、用件を狭山に言った。
圭子の息子である一郎の売り先についてである。
一郎は山野家によって性転換手術を施され、外観上はすっかり美少女姿に改造されている。
狭山は人身売買のブローカーとして国内外に幅広い人脈を持っていた。
「わかりました。なんとか探してみましょう」
狭山は慶蔵の要望を引き受けた。
とりあえず地下の調教室にいる一郎の肉体を見せてもらうことにした。
安東真はかつてカーレーサーであったが、2年前に警察官に転職してきた変り種である。
山科は佐藤の尾行に安東の腕を賭けようと思った。
佐藤の持つ高度なドライビングテクニックに対抗するためには安東に頼るしかない。
安東が山野邸の横に到着した。
山科に目礼をする。「たのんだぞ、安東」山科は祈るような思いである。
時計が10時を回った頃に、敬吾の運転する輸入車が再び山野家の正門を出た。
山科はすぐに高速道路の入り口周辺で待っている安東に連絡した。
「うん、変だな」
バックミラーを見ていた敬吾は先ほどから同じ車が自分を追跡していることに気づいた。
助手席の狭山はすでに熟睡している。
ここまで自分に気づかせずに尾行してくるとは、相手もなかなかの運転技術を持っているようである。
敬吾の闘志に火が着いた。負けるわけにはいかない。
敬吾は次のインターチェンジで高速から降りた。
国道を走り、間道を走っていく。
住宅街の細かい路地にも入り込んだ。
ちょうど真っ暗な路地に入ったとき、車を隠すのに最適のスペースを見つけた。
そこに付けて、ヘッドライトを消した。
尾行している車はもはや追ってこなかった。
敬吾は狭山の住む築40年近いアパートの前で狭山を降ろした。
狭山は裏ビジネスでかなり財を築いたはずなのに、住宅にはほとんど関心がなかった。
敬吾が去っていった後、アパートの前を徐行してくる車があった。
安東の運転する車であった。
その頃、慶蔵は寝室でリディアの白い肌に欲望を打ち込んでいた。
ベッドでともに横たわると、リディアの大柄な肉体に慶蔵の醜い肉体が包み込まれるようになる。
「慶蔵さん…………。いいー。いいー」
リディアは慶蔵のことを「旦那様」とは呼ばずに、「慶蔵さん」と呼んでいた。
そのことで、明美や雅代から折檻されることもあったが、
「まあまあ、リディアは外人だから仕方ないよ」と慶蔵はとりなしている。
「リディア。今度は上に乗ってくれ」
慶蔵の腰の上に載ったリディアは激しく乱れた。
白く透き通るような肌がピンク色に染まっている。
慶蔵の巨大なオベリスクがリディアを根底から刺し貫いているのだ。
「イクっ、イク。慶蔵さんも一緒に、一緒だよ」
赤毛の髪を振り乱しているリディアの日本語が少々妖しくなっていく。
「おお。いくぞ、リディア」
慶蔵とリディアは同時に果てたのであった。
次の日。
「リディア。お前もだいぶ日本語が流暢になってきたな。うれしいぞ」
夕食のテーブルで、慶蔵は傍らで侍る白人女の胸を触った。
「いやいや、慶蔵さん。あっははははは」
メイド服を着ているリディアが胸を肌けさせて笑いながら、慶蔵の手から逃れようとする。
「待ちなさい」
「慶蔵さん、悔しかったら捕まえてよ」
リディアは椅子から立ち上がって慶蔵の椅子の周りをじゃれ回った。
慶蔵が座ったまま、リディアの腰や胸を掴もうとする。
「ほら、リディア、捕まえたぞ」
「あっはっはは」
慶蔵とリディアが楽しくじゃれあっているのを、瑠美と美紀は冷たい視線で見ていた。
瑠美はいらついたように、床に這いつくばって食事のおこぼれを待っている全裸の静江の尻を
思い切り蹴飛ばした。
静江が悲鳴を上げた。
リディアはもはや奴隷というより、どちらかというと慶蔵の妾の地位を占めつつある。
圭子や静江とは違い、リディアにはいまだに性器にピアスを着けられることもなければ、
焼印を入れられることもなく、質素とはいえメイド服や下着の着用を許されていた。
奴隷らしい格好といえば、真っ赤な犬の首輪だけであった。
最近では、ほぼ毎日のように慶蔵の寝室で寝泊りしていた。
慶蔵の愛情に包まれた生活といってもいいかもしれない。
調教師の明美も気配を察してか、最近はあまりリディアに調教の鞭を揮えない状況になっていた。
むしろ明美はリディアに調子を合わせるようになり、一緒になって静江を虐待することも多くなってきていた。
瑠美は危機感を覚えた。
このままではリディアのことを「お母様」と呼ばなくてはならない日が来るかもしれない。
ちょっと前までは性奴隷だった外人女に頭を下げるのは、瑠美の自尊心が許さなかった。
それよりも、新しい母親がやってくることが我慢ならなかった。
そこで敬吾に相談することにしたのである。
「お父様の気持ちがよくわからないの。どうしたらいいのかしら」
瑠美は敬吾の自室にいる。
晩秋の冷え込む晩にもかかわらず、敬吾は暖房がきらいなのか、部屋は寒々としていた。
「このままでは、あの外人女にこの家が乗っ取られてしまうかも……」
いつになく弱気になった瑠美は敬吾の目をじっと見た。
「旦那様のお気持ち次第ですからね」
敬吾は冷静な目で応えた。
「そ、それはそうだけど……」
瑠美が唇を濡らし、上目使いで敬吾を見たが、敬吾は無表情のままである。
しばらく敬吾は考え込んでいた。
「お嬢様。考えてみましょう。なんとかしてみます」
敬吾は冷静な声で瑠美に告げると、瑠美が喜色満面となった。
「佐藤さん、ありがとう」
そう言って、瑠美は敬吾に抱きついていった。
山科、葉山らの厳しい取調べに、狭山は全面自供に追い込まれた。
狭山の自供により、人身売買グループの全容や慶蔵の関わりが明らかになった。
グループは予想よりもかなり大掛かりなものであり、国内の暴力団関係者だけでなく、
海外の裏社会ともつながっていた。
それだけでなく国内外の政治家の関わりもあった。
慶蔵はグループにとり、上得意の顧客であり、総元締めといった立場にいる。
出井たちは慎重に裏付け捜査を進めていった。
「竹川さん。あと少しですね」
出井警視正は検察庁を訪れていた。
「問題は政治介入があるかどうかですが」
竹川検事は山野財閥の政治献金額の膨大さをふと思い出して、心配そうに視線を下に落としたが、
「ここまで来た以上はやるしかないですね」と力強く言い切った。
竹川も社会正義のために検事になったのである。
山野慶蔵のような悪を野放しにするわけにはいかなかった。
「山野慶蔵の弟の慶次さんがなんとかうまくやってくれると思いますよ」
出井としても、ここまで来て後には引き下がれなかった。
出井の携帯が鳴った。
広島県警からであった。


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