どらごんさんの作品

性奴系図外伝(佐藤敬吾篇)

第19章  リディアの帰国


リディアに1ヶ月ほど里帰りを許すことになった。
強盗罪で服役していたリディアの父親にいよいよ仮釈放が認められるのだという。
敬吾の調査能力は神業に近いと慶蔵も感じている。
法律顧問である澄子のアドバイスもあり、慶蔵はリディアをいったん返すことにした。
「リディア、向こうでお父さんと楽しいクリスマスを過ごしてから、戻ってくるといい」
慶蔵は鷹揚に笑った。
リディアが帰国する前に、慶蔵はリディアをショッピングに連れて行き、
クレジットカードを与えて、洋服でもバッグでも何でも好きなものを買わせた。
迎えに行った敬吾の運転する高級輸入車がリディアの荷物でいっぱいになった。
リディアの周りを明美や雅代が華やかに取り囲んでいる。
リディアが買ってもらった商品を褒めているのだ。
「はい、雅代さん、これどうぞ」
「わあ、こんな高そうなバッグ。いいの、リディアさん」
「問題ないねー」
リディアが独特の調子を持つ日本語で愛嬌たっぷりに言った。
「明美さん、これどうかしら」
明美は高級スカーフをもらい、満面の笑みである。
「瑠美さんにはこれ買ってきました」
リディアはやや緊張しながらも、ふてくされている瑠美に高価なカシミヤセーターを渡そうとする。
「要らないわ、そんなの」
瑠美は面白くなさそうな顔をして、横を向いた。
「お嬢様が要らないのでしたら私がもらいますよ」
明美が喜色満面でもらい取って行った。
「This is for you」
全裸でうずくまっている静江に、リディアは犬用のシャンプーを投げつけた。
シャンプーのラベルには、犬のイラストが描かれてあった。
明美や雅代が静江をあざ笑った。
その夜。
慶蔵はリディアと寝室で抱き合っていた。
慶蔵は丹念にリディアの白い肌に舌を這わせた。
「もしかするとこれが最後の夜になるかもしれん」
慶蔵は漠然とした不安に駆られたが、リディアを12年ぶりに父親と一緒にクリスマスを
過ごさせてやりたいという気持ちにもなっていた。
性奴隷に対してそういう気持ちを持つのはかつての慶蔵にとり考えられないことであった。
弟から長文の直諌状を受け取ったのはもう10ヶ月以上も前になる。
自分の性癖を難詰する弟の文章に腹を立てたのは正直なところである。
「所詮、慶次のような次男坊には山野家を率いる長男の背負う重圧を理解できはしまい」と
慶蔵は諦観していた。
自分が性奴隷に興味を持ち出したのがいつ頃なのかは覚えていない。
圭子がその大きな要因になっていることは間違いなかった。
かつて圭子に求愛し、拒絶され、大きな屈辱を受けた。
その屈辱を返すべく事業に邁進したが、圭子から受けた屈辱が心に与えた波紋が妙な具合に歪んで、
性奴隷を飼うという異常な趣味に発展したのであろうか。
圭子を飼い始めて、圭子から受けた屈辱を何千倍、いや何万倍にもしてお返ししている。
だが、その圭子も中東の王族に売ってしまい、もはやここにはいない。
圭子が売られてから、慶蔵の心の中はぽっかりとした空洞ができたようになった。
その空洞を埋めるように、慶蔵の心の中でリディアが大きな位置を占めてきたのである。
慶蔵はリディアを四つん這いにし、白くむっちりと肉の引き締まった尻を抱くようにして背後から挿入している。
慶蔵の激しい腰の動きに、リディアはよがり声を上げている。
リディアのことをこんなにも気に入るのはなぜなのだろうかと慶蔵は思った。
リディアの理知的な青い瞳を特に慶蔵は気に入っている。
リディアは決して欧米人にありがちな自己主張の激しいタイプではない。
どちらかといえば内気なタイプであろう。
「リディア、頼む。戻ってきてくれよな」
慶蔵は喘ぎ声を上げて乱れ続けるリディアに哀願するように言って、
おびただしい量の白液をリディアの胎内に放出した。
ニューヨークのJFK空港に着いたリディアはタクシー乗り場の長蛇の列の中にいた。
時差ぼけで朦朧としているリディアは前に並んでいた50歳前後のトレンチコートを着た男の背中に
軽くぶつかった。
「すみません」
謝るリディアに男が話しかけた。
「つらそうですね。どちらからです?」
リディアと男の会話がはずんだ。
リディアにとっては久しぶりの母国語での会話である。
いじめの後遺症があったとはいえ、根は話し好きのリディアである。
短い時間で、話しが弾んだ。もちろん山野邸での生活はいっさい話していない。
「リディアさん。貴女は日本語ができるんですか?それはすごい。
実は私の会社で日本語をできる人材を探していましてね。
給与は年収で6万ドルぐらいを考えてはいるんですが…………」
「えっ?6万ドルもですか?」
リディアは目を丸くした。
いわゆるプアホワイトと呼ばれる白人低所得層出身のリディアには6万ドルは大金である。
欧米では所得格差が急拡大しているが、低所得層の平均年収は2万ドルとも言われている。
タクシーに乗り込む前に、男はリディアに名刺を渡した。
「興味があったらいつでもお電話下さい。それでは、リディアさん。また会いましょう」
男の名刺にはニューヨーク市の郊外を住所とする貿易商社のものであった。
「ハンス・クルーガー」というのが男の名前であった。
男はなんと社長の肩書を持っていた。
ハンスは日本に連絡した。
「ターゲットに接触した。先方は関心を示している」
ハンスの言葉に、敬吾は微かな喜びの声を上げた。
「さっきターゲットから電話があってね、面接の日取りもすでに決めてしまったよ」
「そうか、それはよかった」
ハンスは中流家庭に育った白人であったが、幼少期より先進国が発展途上国を搾取する現状に憤りを
覚えていた。
ふとしたきっかけで独自の国作りを目指している北海共和国に密航することになった。
二年ほど研修を受けていたときに敬吾と知り合ったのである。
年はだいぶ離れていたが、二人は理想の社会についてよく語りあったものであった。
ハンスは研修後ニューヨークの貿易商社に幹部として入社した。
北海系の企業だが、あくまで表のビジネスをやっている。
従業員のほとんどは北海系の企業と気づいていないであろう。
ハンスは数年前に社長に昇格した。
おそらくリディアが入社してもハンスたちの正体を知ることはないであろう。
それでもハンスには良かった。
日本との取引を大きく増やそうと思っていたのだ。
表のビジネスで成功することも本国に役に立つという強い信念をハンスは持っている。
敬吾はカーテンを閉め切った自室にこもっている。
敬吾は暗号を乱数表に合わせて解読していた。
敬吾は思わず息を飲んだ。
「ケイサツノキョウセイソウサチカシ ジュンビセヨ」
敬吾は机の引き出しを開けた。
手にした小型拳銃から弾丸を取り出し、弾頭を咬んで、不発弾でないかどうかを丹念に確認した。
敬吾の目は氷のように澄み切っている。
ニューヨークから車を運転して自宅に帰りついたときは、すでに暗くなっていた。
本日のハンスとの面接は大変うまくいったとリディアは思った。
それどころか、面接官で社長でもあるハンスがリディアになんと年収7万5千ドルを提示したのである。
「7万5千ドル!」
その金額を聞いたとき、リディアは飛び上がりそうになった。
大学卒でもない26歳の自分にとり、法外な金額である。
走っているのが不思議なくらいのサイドミラーが取れかかった30年モノの超中古車を運転している
リディアは、もう少しまともな中古車に乗り換えられると思った。
山野邸での1年近い生活はつらいものであったが、リディアの日本語力は飛躍的に向上していた。
さらに、リディアはこの3ヶ月ほど日本の新聞を奴隷生活の合間に読むようにしていた。
当初は瑠美や美紀に露骨に読解力や単語力のなさを馬鹿にされたりもしたが、
元々知能の高いリディアは驚くほどの短期間で新聞もすらすら読めるようになっていたのだ。
リディアはハンスとの握手の感覚がまだ残っていた。
明日は、リディアの父親が仮釈放されて家に戻ってくる予定になっている。
父親が家に戻ってくるのはほぼ12年ぶりである。
リディアは父を迎えるべく、妹と一緒に掃除を始めた。
それから、リディアはスーパーに父を迎えるごちそうを作るべく食材を買いに行った。
お土産代として、慶蔵が別れ際に100万円くれたのがありがたかった。
町はすでにクリスマス一色に染まっていた。
小雪が舞う中をリディアはスーパーまで車を走らせた。
リディアがスーパーに行くと、かつて少女時代にいじめっこのリーダー格だったケイトがレジを打っていた。
リディアは学校のトイレなどでケイトたちから激しいいじめを受けていた過去がある。
ケイトはファーストフードの食べ過ぎのせいか、だらしなく肥満していた。
顔も薄赤く日焼けした豚のようであり、リディアに意地悪く笑いかけている。
前のリディアであれば、傲然としたケイトの前で萎縮してしまい、からかわれるままになっていたであろう。
しかし、リディアはもう変わっている。
今や七万五千ドルの年収を約束される身分なのである。それが大きな自信を与えていた。
おそらくこの小さな田舎街でリディア以上の年収を誇るのは数えるほどであろう。
この国では金持ちは金持ち、貧乏人は貧乏人で集まって街を作っている。
ここは高額所得者が住むような街ではなかったのだ。
リディアは大富豪の邸宅であった山野家のそばに小さなアパートや住宅が混在している
日本の住環境を思い出していた。
「リディア、お前、日本に行ってたんだって。お前のような負け犬の相手はジャップがお似合いだね。
なんで戻ってきたの?また昔みたいにいじめられっこになっちゃうよ」
ケイトが別のレジに行こうとするリディアを呼び止めて、口汚く罵った。
リディアは憤然と睨み返した。
「ふざけるんじゃないわよ。それが客に対する態度なの?
私はね、今、あんたの三倍も給料をもらう身分なんだからね」
リディアの剣幕に驚いたのか、ケイトは何も反論できず、そそくさと視線を避けた。
慶蔵は机の引き出しから小さな木箱を取り出した。
中身は純金製のリング状のピアスであった。
もともとはリディアに奴隷としての徴を着けようということで注文していたものである。
かなり前に受領していたのであるが、
リディアの肉体に取り付けるきっかけもないまま、ずるずると日数だけが経っていた。
すでに出来上がっている金のリングを見て、慶蔵はリディアの股間に貫通させるべきかどうか非常に迷った。
お抱え医師の小淵に指示すれば、すぐに実行されるであろう。
それともダイヤモンドをはめ込んで指輪に改造できないかとも考えた。
指輪に改造するには1週間ほど必要という。
慶蔵はリディアに対する気持ちが揺れ動いていた。
リディアに指輪を送るべきか、それともその肉体に奴隷としての徴を植え込むべきか。
山野財閥総帥として決断力に定評のある慶蔵が珍しく決めかねた。
リディアが再来日する予定の最後の一週間前まで結論を先延ばししようと考えた。
「ガサ令状が出たぞ」
竹川検事が裁判所から発行された捜査令状を手にしている。
竹川の声は興奮している。
無理もなかった。
いよいよ悪の巣窟である山野邸に踏む込むことができるのである。
とりあえず捜査令状をもって山野邸に踏み込んで証拠を押収し、
山野慶蔵には任意同行を求めた上で容疑を固めて逮捕するという作戦が決められた。
警視庁の出井警視正が現場の指揮官ということになり、県警と警視庁の合同捜査ということになった。
山野慶蔵は暴力団とも深いつきあいがあり、外国勢力とも親しい。
武器をもって捜査陣に反撃してくるケースも想定され、秘密裏に開かれた捜査会議でも
対応策が慎重に検討された。
山野邸の出入り口は巨大な正門と裏門の二箇所である。
千坪を優に超える敷地は周囲を高さ3メートルを超える漆喰の壁にぐるりと囲まれている。
当日の配置は、正門に8割以上の人員を置き、残りを裏門に置くことになった。


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