どらごんさんの作品

性奴系図外伝(佐藤敬吾篇)

第2章  兄と弟


山野邸の庭では春爛漫を誇るかのようにつつじが咲き誇っていた。
春の明るい日差しが傾きかける中で、蝶も花の上を飛び回っている。
山野家の門扉が開いて、白塗りの国産車が乗り込んできた。
運転してきたのは、中年の紳士だった。
すでに腹がせりだしており、髪もだいぶ薄くなっているが、柔和な笑みをたたえている。
「おー、慶次。良く来た。久しぶりだな」
山野家当主の慶蔵が駆け寄ってきた。
「お久しぶりです、兄さん。お母さんの葬式以来ですね」
慶次が兄の慶蔵と会うのは本当に久しぶりである。
慶次は東京郊外のとある市の市長をしている。
市長に転進する前は、東大を卒業し、ある中央官庁の課長補佐をしていた。
幼い頃から徹底的な帝王教育を受けた長男の慶蔵とは異なり、慶次はどことなくおっとりとしていた。
ただ、数歳違いとはいえ、容貌は慶蔵と瓜二つと言ってよかった。
「兄さんはお変わりありませんか」
「いやあ、元気だよ。慶次の方はどうだい。時々、テレビで見かけるけどね」
慶次は市長就任後、クリーンな市政を旗印し、いっさいの無駄を排除し、汚職撲滅に勤めた。
「慶次は昔から曲がったことが嫌いだったなあ、はっはは」
リビングから見える庭にはすでに夕闇が迫っていた。
「うん?」
慶次の視界に白い塊が動いているのが入った。
なんと全裸の女性が首輪に紐をつながれて、庭を歩かされている。
腹部も妊娠しているのかかなり大きかった。
「ああ。あれは圭子といって、手に入れてからもう1年になるかな。
たぶん、庭の花壇にお水遣りをしようとしているのだろう」
「お水遣り?」
慶蔵の説明はおぞましかった。
圭子の肛門に大量の水を注入して貯えさせ、隅の花壇まで歩かせて、貯えた水を放出するのだという。
「兄さん。まだ、そんな趣味を持っているんですか」
慶次の声が詰問の色を帯びたが、慶蔵は意に介した風がなかった。
慶蔵が性奴隷を飼う趣味を有していることには、以前から慶次も知っていた。
山野家は江戸時代には藩の城代家老として、
殿様が参勤交代で江戸滞在中には藩政を取り仕切っていたほどの名門であった。
明治以降も山野家は実業の部門で成功を収めた。
ついには、山野財閥と言われるほどにまで成長させたのである。
ある程度ビジネスの成功を見た祖父は、政界に進出し、国会議員としても活躍した。
父も祖父の事業を受け継ぎ、地方銀行や商社を買収して、山野グループをさらに大きく発展させた。
ただ、父はものすごく厳格な性格であり、徹底的な合理主義者で一円単位の無駄も嫌った。
長男の慶蔵には子供のときから厳しく帝王教育を施していた。
慶蔵は常に勉強でもスポーツでも一番になることが求められた。
父は慶蔵の友人関係にも干渉し、将来の役に立たないと思われる友人とはいっさい付き合せないようにした。
反面、慶次は父の干渉をほとんど受けず、自由な環境の中でのびのびと運動や勉強を楽しみ、
大学でも普通の学生生活を送っていたのである。
そういう慶次には、性奴隷を飼うという趣味が全く理解できない。 
慶次には慶蔵のおぞましい趣味がますますエスカレートしていっているように感じられた。
「父の厳しい教育が兄の心をゆがめてしまったのではないか」
慶次にはそう思えてならなかった。
慶次が初めて兄にそのようなおぞましい趣味があることを知ったのはいつであろうか。
そうだ。もう10年以上も前のことだった。
慶次は当時、北海道のある地方自治体に出向していたころであった。
慶次は北海道で現在の妻と知り合い、結婚して男の子が生まれていた。
「わあ、あなたの実家って、まるでお屋敷じゃないの」
実家の門に入った慶次の妻である洋子がはしゃいでいた。
門から玄関までは数十メートルの歩道が続いている。
洋子は陽気な性格である。見たものに素直に感動する心を持っていた。
北海道で生まれ育った洋子は、本州の家屋がマッチ箱のように小さいという思い込みがあり、
慶次の実家の大きさにびっくりしていた。
「お前の実家は牧場じゃないか。それよりは、ここはずっとこじんまりしてるだろ」
山野家のリビングで慶次一家はくつろいだ。
天井からはシャンデリアが下がり、ソファーも深々としていた。
洋子はうれしそうにきょろきょろ見回した。
「おお、邦治ちゃん。おじさんだよ」
慶次の息子を相手に、慶蔵は珍しく相好を崩した。
「慶次おじさん、こんにちは」
舌足らずの声で、おかっぱ頭の可愛らしい女の子が慶次に挨拶した。
慶蔵の娘の瑠美であった。
「邦治ちゃん。一緒に遊びましょう」
瑠美は慶次の息子の手を繋ぐと、二階へと上がっていった。
その様子を慶次夫妻は微笑ましく見送った。
慶蔵と慶次夫妻は慶蔵の事業の話や北海道の話で盛り上がった。
「そろそろお暇しなくては」
洋子は邦治を連れ戻しに二階へと広々とした階段を上がっていった。
「わっ、何なのよ、これ」
洋子は瑠美の部屋に上がって驚いた。
20代後半くらいの女が全裸になって四つんばいになっていたのだ。
真っ赤な首輪をしていて、首輪に付けられたリード紐を瑠美が握っている。
「あ、これ、うちの性奴隷なの」
まだ小学2年になったばかりの瑠美が悪びれずに言った。
「せ、せい……どれい?」
洋子はショックのあまり口を利けなかった。
ようやく3歳になったばかりの美紀が性奴隷の尻を棒で叩いて遊んでいる。
同じ歳の邦治が、性奴隷の背中に乗って遊んでいる。
邦治は新しいオモチャをもらったかのような顔をしていた。
「邦治、下りなさい」
洋子は邦治を抱えあげるようにして、瑠美の部屋を出た。
そして、洋子は挨拶もそこそこに慶次を引っ張るようにして、慶蔵邸を後にしたのである。
少しでも早く山野邸を離れたかった。逃げたかった。
「あなたのお兄さん達があんな変態だなんて知らなかった…………」
洋子は珍しくヒステリックになっていた。
慶次をなじるような口調になっている。
その後、洋子は慶蔵邸を訪れることはおろか慶蔵の話題をすることもいっさいなくなった。
慶次は目の前でよちよち歩く裸の女性に目が釘付けになった。
「慶次、そんなに圭子のことが気になるのかい」
慶蔵が慶次の目を見据えるように言った。
慶次は赤面しながらも、手を横に振った。
「まあ、今晩は圭子を使った楽しいパーティがあるんだけど、お前もせっかくだから見ていくかい?」
慶次の脳裏で想像が膨らんだ。
「いやいや、兄さん。またにしますよ」
慶次は立ち上がった。慶蔵が玄関まで見送った。
「兄さんの趣味はもう直らんな」
慶次はアクセスを吹かしながら、兄の異常性にあきれる思いであったが、
股間が怒張していることが恥ずかしかった。
慶次は兄の家で見かけた性奴の惨めな姿が脳裏に残ったまま、自宅に帰りついた。
「お父さん、日曜日くらい休めばいいのに。今日は、つきあいゴルフだったんでしょ」
すでに高校2年になっている息子の邦治が帰宅したばかりの慶次に声をかけた。
慶次の自宅は官僚時代にローンで購入した3LDKのマンションのままであった。
「そうよ、あなた。過労で倒れたらいやよ」
妻の洋子も息子に調子を合わせた。
「いや、市長の仕事はほんとに休みなしだよ。でも、邦治。お前も勉強に部活と休みなしだな」
邦治は屈託のない笑顔を向けた。
「そうだ、邦治。お前、昔、慶蔵おじさんの家に行ったことを覚えているか?」
10年以上前の記憶を思い出したのか、洋子がいやそうな表情を浮かべた。
「慶蔵おじさんのとこ?行ったことあったっけ?」
邦治は全く覚えていなかったようである。
慶次は安心したような顔をすると、食卓に着いた。
慶次一家はいつものように明るい笑いにつつまれた。
「兄さんにもこのような暖かい家庭があったならば…………」
慶次は兄を哀れに思った。


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