どらごんさんの作品

性奴系図外伝(佐藤敬吾篇)

第9章  妻獲り


師走になった。
山野邸では年越しの準備に忙しい。
広い敷地を誇る山野家では大掃除も忙しい。いつも1ヵ月ほど時間をかけるのである。
性奴隷である圭子もリディアも静江も明美や雅代に怒鳴られながら、掃除や庭の手入れを行っている。
現在は零落しているが、かつて大臣が出たこともある名家が、山野邸からほど近いところにあった。
その名家の主人は中原隆良というすでに70代を超えている老人であったが、
最近40歳も歳の離れた後妻を娶ったということを慶蔵は聞きつけてきた。
後妻は30代後半だが、元モデルでとても美しいという評判であった。
出不精らしくあまり外出しないので、姿を見た人は少ないと言う。
噂を聞いた慶蔵はいてもたってもいられなくなった。
ぜひ中原の新しい妻を拝見したいと思った。
「佐藤。中原さんに連絡をとりなさい。今度のクリスマスのときにお宅にお邪魔するとね」
「かしこまりました」
敬吾はすぐに中原に連絡をとった。
中原としても日頃から何かとお世話になっている慶蔵からの申し入れなので、無下に断ることはできなかった。
中原はすでに年金を受給する身の上であるが、慶蔵から山野グループ傘下のいくつかの会社で
相談役という肩書をもらい、まとまった額の収入を得ていた。
中原は慶蔵と慶次の兄弟を幼い頃から見知っていた。
兄弟の父とも知り合いであり、かつては近所と言うこともあり、かなりの交流があった。
クリスマスの当日になった。
慶蔵は昼前に訪問する予定である。慶蔵は友人を連れて、5人ほどで訪問するという。
中原とその妻の時枝は慶蔵をもてなすために、掃除や午餐の準備を懸命にしている。
8人ほどが一度に座れる長テーブルに白いテーブルクロスをかけ、透き通るように透明なグラスを置いていく。
正午の少し前に、高級輸入車が中原家の前に止まった。後ろには、もう1台の大型な輸入車も続けて止まった。
「中原さん。お久しぶりです」
慶蔵は如才なく挨拶した。
高級シャンパンや高価な食材を大量におみやげとして持参していた。
午餐が始まった。
いつもは閑散としている中原家が一度ににぎやかになった。
昔話に花が咲いた。
ただ、中原家の妻はまだ台所にいて、姿を一度も見せていない。
中原の隣の席は空いている。
「中原さん。奥様はご気分が優れないのですか」
慶蔵が訊ねた。
「家内は人見知りが激しいので、お客様には顔を見せたがらないのですよ。
元モデルというのにおかしいでしょう」
中原は小さく笑った。
慶蔵は多少憤然とした表情をした。
「この私がわざわざ挨拶に参っているのに、ご挨拶されないというのは礼を欠いているように思うのですが」
慶蔵の怒りを察した中原は台所まで行ってに妻を呼びに行った。
15分ほどして、中原の妻である時枝が俯き加減でやってきた。
「い、いつも主人がお世話になっております」
消え入りそうな声である。
「いえ、こちらこそお世話になっております」
慶蔵は時枝の目を見ながら、にこやかに挨拶をした。
時枝は色白で細身であり、艶やかな黒髪を肩まで垂らしている。
目鼻立ちも大きく、元モデルというのは頷けた。
時枝はほとんど会話をしない。
中原と慶蔵との会話に加わることもなく、ただ黙って俯いたまま食事をしている。
慶蔵は中原と話しながらも、ちらちらとその妻の方を見ている。
妖艶な魅力というより、透明な美しさの持主といえた。
「圭子やリディアとはまた違った魅力の持ち主だな」
慶蔵の股間が反応してきていた。
「中原さん。これはウォッカの有名ブランドです。今日のためにわざわざお持ちしました」
慶蔵は中原にどんどん強い酒を勧めていく。
さらに、慶蔵の連れてきた三人のいかつい男たちが言葉巧みに飲ませていった。
元々酒の強くない中原はたちまち酔った状態になった。
中原の目が据わりだしていた。
慶蔵が時枝の方へ目をやる回数も増えだした。
時枝も慶蔵のねっとりとする視線を感じて、俯いたまま、顔を紅くしている。
午餐が始まって3時間近くが経過した。
「さて、中原さん。本日は、そろそろお暇したいと思いますが」
慶蔵は椅子から腰を上げかけた。
「ああ、そうですか。それはそれは。もう少し長居してはいかがです」
中原は勧めたが、「ご迷惑ですから」と慶蔵は固辞して立ち上がった。
玄関で靴を履きかける慶蔵に中原は恐る恐る声をかけた。
「山野会長。お食事の方はいかがでしたでしょうか。ご満足いただけましたか」
慶蔵は唸ったきり、押し黙った。
中原は慶蔵に何か失礼があったのかと動揺した。
「中原さん。ごちそうは堪能できました。お話しも面白かったです。ですが」
「ですが……。会長、何かお気に障ることでも」
「おみやげがないですね」
慶蔵はズバリと言った。
「お、おみやげですか」
中原は絶句する。何を差し上げればいいのか。お土産の用意はしていなかった。
一体何を差し上げればいいのか。
「それでは寿司でも取りましょう」と中原は言った。
「いや、そんなものではなくてですね、今日の記念に、何か貴方が大事にしているのをいただきたいのですが」
「私の大事にしているものですか……」
中原は酔いで濁った頭をひねりながら、何を差し上げればいいのか思案している。
慶蔵は靴を脱ぐと、ずかずかと上がりこんだ。
そのまま食卓へと向かう。
そして、後片付けをしている時枝の白くて細い腕を握ると、引っ張り出した。
「きゃっ」時枝が軽い悲鳴を上げた。
「中原さん。この女を今日の記念にいただきたいのですが」
中原はあまりのことに思考停止状態に陥った。
「そ、そんな殺生な。山野会長、これは何かのご冗談ですか」
「冗談ではないですよ」
慶蔵はきっぱりと言った。
「まあまあ、おじいさん。ここできちんとお土産を上げた方があんたの将来にとってもいいのでは思うけどな」
「そうそう。あまり、山野会長を怒らせない方がいいと思いますよ」
「女一人差し出せば、貴方の将来はもう安泰ですから、こんな楽なことはないだろうよ」
慶蔵が連れてきていた3人連れがヤクザ者の本性を顕し始めた。
3人連れは中原を囲んでいる。
その頃、慶蔵は時枝を口説いていた。
「奥様。私は奥様の魅力に参ってしまいました。ぜひ私の屋敷までいらしてください。
何でもお好きな暮らしをさせますから。貴女はまだまだお若い。
その美貌をここで朽ち果てさせるのは勿体ないですよ」
「い、いや、でも……」
時枝はかぶりを弱々しく振っている。
「このままここにいても貴女にとっていいことはなにもないでしょう」
慶蔵はそう言って、半ば強引に時枝の手を引いて、玄関へと連れて行った。
時枝は踏みとどまろうと軽く抵抗したが、慶蔵配下のヤクザの一人が時枝を脅しつけて、
背中を後ろから押していった。
「と、時枝」
中原が時枝の後姿に叫んだ。
時枝は悲しそうな目を向けて中原の方を見たが、そのまま慶蔵に引っ張られていく。
慶蔵は自分の高級革靴に足先だけ突っかけると、時枝の手を引いた。
時枝はサンダルだけを突っかけて、そのまま敬吾の待つ車へと引かれていく。
待ち構えていた敬吾が後部ドアを開けると、慶蔵はそのまま時枝を押し込んだ。
慶蔵は自分も乗り込むと敬吾に車を発信するように命じた。
慶蔵は時枝を山野邸に連れ込むと、自室に連れて行った。
時枝はすっかり観念していた。
慶蔵に手を引かれるまま、寝室へと連れられていく。
そして、ほとんど抵抗することもなく慶蔵の思い通りになったのである。
市長室に訪ねてきた中原の話しに慶次は耳を疑う思いで聴いていた。
兄が昔からの知り合いである中原の妻を無理やり略奪してしまったというのである。
特に、慶次は小学生の頃、家を訪ねてきた中原とキャッチボールをしたり、
時々プロ野球の試合に連れて行ってもらったりした仲であった。
会うのは本当に何十年ぶりであるが、かつては非常にかわいがってもらったものである。
それは兄の慶蔵も同じであるはずであった。
暮れの大変忙しい時期ではあったが、慶次は全ての予定をキャンセルして、
自らの運転する車で中原とともに、慶蔵邸にすぐに向かうことにした。
慶蔵は慶次が中原とともに突然来訪したということに戸惑いを隠せなかったが、
自分を鼓舞するかのように傲然とした態度をとった。
リビングで慶蔵は、慶次と中原に向かい合っている。
「慶次。どうしたんだい、突然」
慶蔵は良心の呵責など全く感じていないかのように葉巻をくゆらせている。
だが、慶蔵の組んでいる足が微かに震えているのを慶次は見逃さなかった。
「兄さん。単刀直入に言いますよ。中原さんの奥さんを返してあげてください」
慶次は、慶蔵の目を見た。
「あれは……。中原さんからお土産としてもらったんだよ。そうでしたね、中原さん」
中原は慶蔵に気圧されて黙っている。
「兄さん。中原さんは兄さんの会社に世話になっているんだよ。兄さんに逆らえるはずがないじゃないか」
慶次は思わず声を荒げた。
「とにかくっ。あの女は俺がもらったんだからな。返す必要はないだろう」
慶蔵も目を吊り上げるようにして反論する。
慶次は兄の肩に手を置いた。このままでは交渉決裂と踏んだのだ。
「兄さん。とりあえず落ち着いてくれ。まあ、せっかく中原さんも来ているんだし、
とりあえず時枝さんの顔だけでも見せてやったらどうかな。兄さんの気持ちはわかったから」
慶蔵は落ち着いたふりを見せようと葉巻を口に含み、煙を吐き出す。
「分かった。待ってなさい」
しばらくして、慶蔵に伴われて、性具となりはてた時枝がやってきた。
化粧が派手になっていたが、中原を見て、すがるような、泣き出しそうな目付きになっている。
慶蔵は自邸に連れてきてからの時枝がすっかり従順になっていたので、
もはや中原のところに戻る気持ちはないだろうという安心感を持っているようだった。
慶次は時枝の表情を見て、その気持ちを瞬時に感じ取った。
「それじゃ、兄さん。悪いけど、時枝さんはもらっていきますよ」
慶次は立ち上がり、時枝の手を取ると、中原に渡した。
そのまま強引に玄関まで歩いていく。
慶蔵は立ち上がって慶次の袖を掴もうとするが、慶次は振り払った。
「慶次、待て。騙したな。人を呼ぶぞ。どうなっても知らないからな」
図られたと知った慶蔵が少々取り乱したかのように、慶次を留めようとするが、
いくら似たような容貌とはいえ運動神経では弟にかなわない。
「どうぞ、兄さん。ただ、今のような兄さんのみっともない姿を使用人たちに見せられますか」
慶次は涼しい顔で切り返した。
慶蔵はたとえ時枝をこのように奪われたとしても、体面上、時枝を中原に戻してあげたのだと
使用人たちに言うであろう。
慶蔵は言葉に詰まった。
「慶次。お前にはもう政治献金をしないが、いいのか」
「どうぞご自由にして下さい。今までいただいた分は手付かずですので、お返ししましょうか?
いつでも言ってくださいよ」
慶次はクリーンで金の掛からない政治をテーマにしているため、
事務所のスタッフのほとんどはボランティアである。
選挙運動でもほとんど金を使わないことで有名であった。
慶次の今までの人脈や慶次のクリーンな行政という理想に共鳴するボランティアたちに
よって慶次の政治活動は担われているのである。
慶次と中原は時枝を連れて、車に乗り込んだ。
敬吾は車に乗り込もうとする慶次とすれ違い、慶蔵の弟ということで会釈をした。
慶蔵は何もすることができず、慶次たちを見送っている。
慶次は玄関から顔を出している兄に会釈すると、車を発進させた。
後部座席の中原夫婦が再会を喜び合っている。
だが、運転席の慶次は兄との溝が大きく広がってしまったことを感じ、哀しく思った。
慶次が驚いたことに毎月末日に振り込まれる兄からの政治献金の振込みは相変わらずなされていた。
金額も減らされていなかった。
中原夫妻の事件があたかも全くなかったかのようである。
兄との決定的な離別を心の中では避けたかった慶次はほっとした。
願わくば、今度の事件を契機に慶蔵は今までの性奴隷を飼うという趣味を改めてくれればいいとも思った。
慶次は兄に対して年賀状を兼ねて長い手紙を認めた。
内容は、兄に対して先日の無礼を詫びるとともに、反省を求める手紙である。
もちろん警視庁の出井から聞いている捜査等については漏らすわけにはいかなかったが、
山野家の将来のためにも不道徳な行いを慎んで欲しいと書いた。
慶次は兄のことを心底心配している。
慶次が待てど暮らせど、兄からはいっさい返書はなかった。
だが、慶次に対する政治献金については、これが兄弟の唯一の絆であるかのように継続していたのであった。
慶次も返金することはせずそのままにしている。


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