どらごんさんの作品

ジャスティーナ  第一章オークションA



「おい、そこに座れ」
女は後手を縛られたまま、背中を突き飛ばされるようにして床の上に座らされた。
「おい、脚を開けよ。もっと大きく開いて」
ジャスティーナの股間の周りに人垣ができた。
生まれて初めて白人女の秘所を見たのであろうか、荒くなった鼻息がジャスティーナの秘裂に当った。
「日本人とはまた違った神秘的な美しさだねえ」
「俺、もう股間が大きくなって、ズボンを突き破りそうだよ」
(もう私は商品でしかないのね……)
 男たちがオークションされる「商品」としてのジャスティーナを思い思いに触ってくる。
ジャスティーナはあまりのおぞましさに顔を背けていた。
 色黒の脂ぎった中年男がにやけた笑いをしながら、ジャスティーナの秘裂に指を入り込ませようとした。
男から趣味の悪い香水の臭いがした。
(いやよ……)
ジャスティーナは腰を浮かせて、指の攻撃を避けようとしたが、大勢の手で押さえ込まれて、結局は屈服した。
敏感なところも触られて、秘裂が左右に開かれた。
淡い色をした粘膜が露出すると、男たちが身体を屈めてのぞき込んでくる。乳首をいじってくる男もいた。
「肌は少しざらざらしているが、お×んこはきれいなピンクをしているね……」
「おっぱいが柔らかくていいよ……」
男たちはジャスティーナの肉体に感心したような声を上げていた。
「形はちょっとこぶりかな……。でも、それがかわいいね」
「これはあまり使い込んでいない色だね」
「クリの大きさは普通か……」
 指で乱暴に花核の表皮がめくられた。
 男たちは白人女の性器を見て、思い思いの感想を言い合っている。
 ジャスティーナはおぞましさに耳をふさぎたい思いであった。
しかし、両手を縛られているので、いやでも会話が耳に入る。

「それでは、入札を開始します」
競売の初値は一千万円からスタートした。
 物として扱われていることに、ジャスティーナは屈辱を覚えた。
「二千五百万円」
 司会者が声を張り上げると、秘裂に指を入れてきた色黒の中年男ともう一人の男が手を上げた。
(あの男だけは、いや……)
 ジャスティーナは色黒の男に目をやった。
見れば見るほど醜悪である。
服装も派手なだけで趣味がよくなかった。
男と目が合った。ジャスティーナはすぐに視線をはずした。
二千七百、二千八百と値が上がっていく。
「それでは、三千万円でいかがでしょう」
 色黒の男以外に手を上げる者はもはやいなかった。
(いや、いやだよ……そんなことって)
 ジャスティーナは全身が鳥肌立つ思いをした。
落札と同時に、色黒の男は秘書か運転手らしき初老の男から皮製の黒カバンを受け取ると、
中から百万円の束を無雑作に三十個ほど積み重ねた。
「確かに受領いたしました」
司会者が丁寧に頭を下げた。
「おい、お前の買主が決まったぞ。今日からお前は奴隷なんだからな……」
ヤクザの本性を現した司会者が乱暴な口調で、黒い首輪を取り出して
ジャスティーナの首に巻きつけようとした。
ジャスティーナが髪を振り乱して暴れると、顔面をしたたかに拳骨で何度も殴られた。
口の中で血の味がした。肩を大きく上下させて荒い息を吐いた。
「おい、買主様に土下座して、ご挨拶をするんだ」
司会者がジャスティーナをドスの利いた声でしかりつけた。
「『土下座』って、日本語わかるか。まあ、いい。このままひざまづけ。何をぐずぐずしている」
ヤクザたちにこづかれて、ジャスティーナはそのまま男の足元に土下座させられた。
(こ、こわいわ……。でも負けてはいけない)
ジャスティーナが虚勢を張って、男を青い目でにらみつけた。
「てめえ、ここがどこかわかってんのか」
ジャスティーナはヤクザの一人に顔面を足で蹴られた。
目から星が飛んだ。
口をむりやりこじ開けられるようにして、挨拶の言葉を言わされた。
「ジ、ジャスティーナ……デス。ヨロ、ヨロシク……」
 ジャスティーナは額を床にこすりつけんばかりに、ヤクザから後頭部を押さえつけられ、
そのまま挨拶の言葉を言わされた。
極度の緊張で、母国語ではない日本語の呂律が回らなくなった。
「お前を買えてうれしいぞ」
色黒の男が土下座しているジャスティーナの頭を撫でてきた。
積年の想いを達したかのように興奮している様子であった。
「ところで、お前は俺のことを覚えているか。俺の名前は藤堂剛……」
 藤堂と名乗った色黒の男がジャスティーナの目を見据えて言った。
「ト、トードー……」
 ジャスティーナは、はっとした。名門大学を優秀な成績で卒業しているだけに、記憶力には自信があった。
(あ、あのときの地上げ屋の一味……)
 ジャスティーナの顔面は蒼白となった。脂汗が流れる。
(あ……そんな……)


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