えりさんの作品
えりの「いや〜ん、あんあん」3
N県N市の中学生が五千万円脅し取られた事件というのがありましたよね。
この中学生の母親は、亡くなった夫の生命保険を切り崩して加害少年たちに金を払い続けた事実もありました。
加害少年らは彼をグッチ金融、奴隷と呼んでいました。
いじめが横行する場所では異常が正常になってしまうのです。
私もかつていじめっ子に捧げていたものは肉体だけではありませんでした。
いっぺんに大きな額ではありませんでしたが、上納金という名のお金を毎週納めていました。
そして、いじめの儀式に遅れると、一分で千円の罰金を取られました。
お金は私だけじゃなく、男子のいじめられっこからも取っていました。
そのお金で、彼らは遊びまわっていました。
あとから考えれば馬鹿みたいな話ですけど、当時私は、きっと場所代を払っていたのだと思います。
学校に通わせていただいているという場所代。
いや、この世に生かさせていただいている場所代。
肉体への拷問や性的玩具、便器としての使用は奴隷としての役目。
それより先に、生かさせていただいていることに感謝の気持ちを表すには、
お金を受け取っていただくしかありません。
一人の男子が、お金の払いが悪いのでボコボコにされて、鼓膜を破られました。
それ、私の弟です(苦笑)。
五千万円脅し取られた少年の話に戻ると、彼が救われたのは入院がきっかけでした。
粘着テープを全身に巻かれて動けなくなった体にすさまじい暴行を受け、ろっ骨を折られた少年が入院したとき、
一緒に入院していた、父親が暴力団組長という二十二歳の男性は、
はれ上がった少年の顔に「袋だたきにされたな」
とぴんときました。
「どうしたんや」と聞くと、「けんかした。四人までやっつけたけど…」と虚勢を張る。
そんな少年の視線に「本当は話したいんだ」と感じた男性は、入院仲間と「何とかしてやろう」と話しあいました。
自分のすさんでいた青春を打ち明け「今は後悔している」と語る男性たちに、
少年は夜遅くまで話し込むようになりました。
でも、被害のことには触れようとしない。
ある日、少年が病室から姿を消しました。
病院中を捜し回った男性たちは、屋上で同級生二人に脅されている少年を見つけました。
大声で怒る男性たちに、三年前に父親を亡くした少年は初めて、口先だけでなく体を張る
大人を見たのです。少年が「もうカモにならない」「警察にみんな話す」と決意したのは、この出来事の後でした。
弟にも、そんな人がいたらなあって思います。
私は弟に、口先じゃなにも言えず、でも体を張ってなにをしたのでしょう。
私は、弟をひどい目に合わせた人たちの前に這いつくばりました。
私は、弟をひどい目に合わせた人たちのサイン一つで生まれたままの姿になりました。
私は、弟をひどい目に合わせた人たちの前で素っ裸で奴隷宣言をしました。
私は、弟をひどい目に合わせた人たちの前でオナニーしました。
私は、弟をひどい目に合わせた人たちの前で裸のまま正座して、乳首に洗濯バサミを挟まれ竿に付けた紐で
ひっぱられました。
私は、弟をひどい目に合わせた人たちのおしっこを浴びました。
私は、弟をひどい目に合わせた人たちがトイレに入った後、お尻を口で清めさせていただきました。
私は、弟をひどい目に合わせた人たちに、ここでは書ききれないぐらいのことを、媚びた笑い顔で
虫けらと呼ばれながらすべてやりました。
五千万円を払い続けた母親の気持ちが私にはわかります。
そんなことしても、なんの解決にもならないってこと、きっとそのお母さんもわかっていたと思います。
なんのためにそんなことしていたのか、自分でもわからなかった。
たぶんきっと蜘蛛の糸みたいなものに捕まって、ぜったい逃げられないと思っていたに違いありません。
でも、いま振り返ればその理由ははっきりしています。
どんなに、蜘蛛の糸にからめとられているように不自由に感じられる場所でも、
そこで息をさせていただいていることへの、わずかながらのお礼だったのだと。
だって、がんじがらめになった私のアソコは、蜜に濡れているのだから。
そして、いまだって私は、弟の耳を不自由にしたあのいじめっ子たちを憎むどころか、心の中で土下座して、
感謝の顔で見上げているのだから。
「お前らは生きていたってどうせ使い捨てだ。いまのうちに使っていただいて感謝しろ」
「はい。ありがとうございます。今日も虫2号の役目、体を張ってつとめさせていただきます。
その前に、まず上納金をお納めくだされば幸いです」