えりさんの作品

再会 その1


  毎日行く同じスーパーで、彼の顔を見たえりは、胸がつぶれそうになった。
 向こうから自分が見えないようにこそこそと去っていった。
 もう見つからないだろうという場所まで早足で歩いてきたが、胸のどきどきは収まらない。
 だがえりは、その同じスーパーに、翌日もやってきた。彼の面影を探しに。
 なぜ、そうしたかはわからない。
 本気でそんなことを言うつもりはなかった。
 でも心の中で次の言葉を何回もつぶやいていた。
 「おねがいします、また奴隷にしてください」
 本当に彼とまた会ってしまったらどうしよう。
 そして、自分が昔のクラスメイトの、あの虫2号だと気づかれたら。
 また、あの獲物を狩るような目つきで射られるのだろうか。
 そうしたら、私は立っていられるだろうか。
 
 しかし、えりは二度とそのスーパーで彼の姿を見ることはなかった。
 彼の姿を見かけたとき、絶対近所に住んでいると思い込んだ。もう逃げられないという気がした。
 またあの地獄が始まると思った。
 なのに、彼の姿は幻のようにまたかき消えてしまったのだ。
 えりは、少しの失望とともに、安堵した。

 その数年後だった。
 えりは知った。
 あれから彼は逮捕されていたのだということを。
 それは、ネットに載っていた少年犯罪の加害者の顔写真としてだった。
 えりは、ホームレスを襲撃し、集団で一人をリンチし、いじめ殺すというような、
 いたましい少年犯罪のことをネットで調べるのが日課だった。
 それは、いまから考えれば、探していたのかもしれない。
 かつて自分を獲物にした、あの顔が事件の当事者としてあらわれるのを。
 いや、そこまでは思っていなかった。
 ただ、かつての自分と同じような地獄を、ネットの情報のひとつとしてなら、覗いてみることで、
 なにかを感じようとしていたのかもしれない。
 それがなんなのかは、うまくいえない。

メニューへ 妄想小説へ 次へ進む

動画 アダルト動画 ライブチャット