えりさんの作品
再会 その2
彼の犯した罪は、アルバイト先の少年を仲間と呼び出し、二時間近くも暴行を加え、
死に至らしめたものだった。
殺された少年は障害を持っていて、ほとんど抵抗できなかったという。
彼は二年間少年院に入った。殺された少年の親には「心から反省します」という手紙を書いたが、
一方で友人に「早く出て遊びたい」と手紙を出していたことがわかり、
マスコミに批判されていた。
その手紙には「結局強いものが勝つ。
やったもん勝ち」とおどけて書かれていた。
なにが彼をそうさせたのか、マスコミは現代の狂気と騒いだが、それは毎日のように
起きるひどい事件のひとつとして、埋もれてしまった。
えりは裁判の証言台に立つ自分を妄想した。
なぜ彼がそういう人間になったか、ですって?
それは、私の身体に刻み込まれた痣や傷の痕が説明してくれるでしょう。
いや、そうじゃない。
えりは頭の中で否定した。
私が、私たちが、抵抗することなく、奴隷であり続けたという過去。
奴隷の中には自ら氏を選んだものもいたが、その原因を、私たちの誰もが表沙汰にしなかった。
彼がそういう人間になった理由は、彼がもともとそういう人間だったから。
そして、人を虫けらみたいに扱って死に追いやっても、誰からもなんにも言われなかったということが、
彼に反省材料を与えなかった理由。
えりは、二時間もかけて嬲られ続けた少年の一部始終をネットの資料で読んだ。
読まなければいけないと思った。