えりさんの作品

再会 その3


 
 何十発も殴られ、何度も何度も頭を打ち付けられているうちに、ぐったりしてきて、救急車で運ばれたが、
 もう脳はぐちゃぐちゃになっていた。
 あごの骨もガタガタになっていた。
 母親に手を握られ、被害者の少年は息絶えた。
 その詳細な記録を読んで、えり自身の過去がよみがえった。
 思い切り殴られ、蹴られ、動けないでひくひくいっているえり。
 「あ〜〜〜あ、倒れちゃったなあ、えり。これはお仕置きだな」
  裸のえりの胸が足でふみにじられる。
 「あり・・・・・・・・・がとう・・・・ごさいまっ・・・・」
 「きこえねえよ、なんか言ったか?」
 さらに、えりのからだが、ぐりぐり踏まれる。
 「ありがとうございますううう!」
 一気に言うとまた倒れる。
 「う・・・・・うううう」
 痣だらけの顔で、何度も顔を上下させるえり。
 えりの頭を左手で股間に押し付けながら、えりから脅し取ったお札を右手で握り
 「今度はなに買おうか?」と仲間と笑いあっている彼のさわやかな笑顔。

 殺された少年は以前から何度もお金を騙し取られていたのだという。
 少年の身に起きた惨劇を読んだえりは、涙した。
 そして自分が殺したのだと思った。
 かつて彼が私たちにしたことはなかったことになった。
 そして、今度のことだって、ネットに顔写真が出て、わかる人にはわかるけれど、
 少年事件ということで名前も伏せられ、彼は「やったもん勝ち」とおどけて世の中を平気で歩くようになる。
 罰を受けねばならない。

 「いやあああああああああ。もうこんなのいやだあ。殺して! 死にたい、死にたいよおおおおお」
 あまりに残虐ないじめのときはこう叫んでいた虫3号も、一人の真理という少女として
 奴隷の自分について誰にも何もいわずに自殺した。
 えりはその意志を継いで、誰を告発することもなかった。
 
 3号が自殺した日、学校を休んだので、ちょうどえりが代わりに殴られていた。
 性的な嬲りだけでなく、その頃は女子奴隷も殴打の対象になっていた。
 あとで彼はいじめっ子仲間と言っていた。
 「よかったなー、一日ずれてて」
 「俺たちがボコボコにした後に自殺されたら、疑われるかもしれないからな」
 うん、よかったね。私と3号は、絶対あなたたちに逆らわない。
 あなたたちのおもちゃにはなっても、あなたたちに迷惑はかけない。

  だってもしこのことが世の中にばれたら私たち、ただの被害者になってしまう。そうえりは思っていた。
 私は被害者ではなく、奴隷。私たちは番号で呼ばれる存在。虫けら以下の、奴隷なのだから。

 いまもその思いは変わらない。
 だったら、えりとしての罰の受け方はなにか。
 やっと最近になってうなされることも少なくなったこの平穏な日常を、
 すべて失う結果になったとしても、私は、今度こそ戻らなければならない。
 あの、奴隷の日常に。
 少年院から出てきた彼に、かつて同じ時代を過ごした自分が会いに行くことで、もう一回向き合いたい。
 そして、今度は卒業はない。

 「もういっかい元気にしてくれよ!」
 お尻をぎゅっとつねられ、涙目で唇と舌を使い続けたあの日がよみがえる。
 えりは人を元気にさせる力があった。そのたびに、奴隷の自分たちの魂が死んでいたのだとしても。

 「少年院から出てきたら、もっとハイパーな存在になる」と獄中から友人に手紙を送っていたという彼。
 かつて間接的に人を死に追いやり、そして今度は本当に手をかけて殺してしまった彼は、
 この友達への手紙どおりの、人間すらも超えた無慈悲な存在になっているのだろうか。
 あるいは、遺族に送った手紙どおりに、真人間に更正しているのだろうか。
 かつてえりが、彼らに命令されて、教えられたとおりに言わされた言葉があった。
 あたかも自主的にしゃべったかのように。
 「わたしたち奴隷がいる限り、もうオナニーなんてさせないよ」
 それを思い出したえりは、ネットにUPされた彼の顔写真に向かってつぶやいた。
 「わたしたち奴隷がいる限り、もう更正なんてさせないよ」
 パソコンのディスプレイには、生まれたままの姿で乳頭をつまみ、
 そう宣言する21歳の女の姿が映っていた。
 その姿は14歳のときに放課後の教室で見せた自分の姿そのものだった。

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