えりさんの作品
再会 その7 えりの気持ち編
ネットで情報が飛び交っていた。
木村君になぶり殺された筒井君のお母さんが、ショックで失踪してしまったという噂だった。
被害を受けた側は、地獄だ。やられた本人だけではない。まわりも地獄だ。
家庭も崩壊してしまうことだって珍しくない。
私の弟だって、いまだに立ち直ってない。
筒井君のお母さんは、加害者が同じこの国で普通に生活しているのが
耐えられないという手記を書いていた。
だから、自分のほうが失踪してしまったのかもしれない。
その気持ちはすごくよくわかる。
死刑にできないのなら、せめて一生自分たちと無関係な世界に消えて欲しい。
なんどそう思ったか知れない。
なのに、いま私は、彼と同じ空間にまた戻りたいと思っている。
彼が何人の生命を犠牲にし、いくつの家庭を破壊しようと、私は・・・・。
私は・・・・
私は・・・・・
私は・・・・・・
戻ってきて、木村君!
戻ってきて!
戻ってきて!
そして、奇跡は起こった。
雨の中、私は彼の顔を黙って見つめていた。
彼も私を見ている。
もう、決して逃げません。
私の目はそう言っていた。。