えりさんの作品
えり 断章〜16〜 終章 (下)
「えりが自分で私に連絡してきたの? そんなわけないでしょ」
ここでひるんではだめだと思って、私は答えました
「たしかに私は、あなたにあんなこと知られたくなかった。
電話をかけさせられたのは本当。ごめんなさい」
「いいのよ、そんなこと、でも……」
「電話をかけたのは命令でしたことだけど、私は命令で動く奴隷なの。
私は、自分で好き好んで奴隷になったの。
命令なら、あなたを巻き込むことだってしてしまうかもしれないの」
私は彼女の目を見ました。
「藤本さん、わかって。私はあなたとは違う世界の人間なの。もう私に関わらないほうがいい」
藤本さんに上着を返すと、私は背を向けます。
「そんな姿で、どこ行くの」
私は振り向きもせずに言います。
「更衣室で、自分で着替えて帰るから大丈夫。藤本さんはもう帰って」
歩き出した私に、藤本さんの声が響きます。
「えり、なにがあっても、私は友達だよ!」
私はどれだけありがとうと言いたかったか。
でも私はあえて叫びました。
「藤本さん! 私はね、一人でずっと生きてきた。
あなたみたいに友だち友だちっていう人間は大嫌い!
あなたなんかに私のことがわかるわけない!
じゃあ、私の真似が出来るっていうの? だったらサークルに紹介してやろうか?
いますぐ電話すれば、みんな喜んで戻ってくるよ!」
しばらくして、藤本さんの駆け去る音がしました。
更衣室には、ネームプレートの箱が置いてありました。
姉ヶ崎さんが置きっぱなしにしたのでしょう。
その中の一つが、いま私の左乳首にまだ刺さっています。
『サークル肉奴隷 金田えり』という文字の書かれたネームプレートが、いくつもありました。
姉ヶ崎さんはこれから私の身体にいっぱいつけるつもりで用意したのでしょうか。
彼女の性格の細かさがうかがえます。
私はその一つを取り出し、右乳首にあてがいました。
鏡の私は自分がそんなことをするなんて信じられないという顔をします。
私は自分で自分を裏切るように、右乳首にプレートの針を刺します。
「うッ……」
鏡の中の私の顔が痛みに歪みます。
醜い私の顔と身体……。
でも両方の乳房にぶら下がった奴隷の証が、いまのえりのすべてなの……。
私は……性処理肉奴隷。
私は箱の中のプレートを見ながら、思いました。
今日はこれが精一杯。でも、この箱一杯の傷みを、私、受けてみせます。
私は片手で両乳首のプレートを交互につまんで刺激を与えながら、
片手で秘部をまさぐり、鏡の前で股を開きます。
ぬらぬらと光る私自身を見ながら、白痴のようにぼおっとした顔した私は携帯のカメラを向けます。
携帯のフレームに恥女の私が写っています。
醜い!
私は携帯の写真を消去し、両乳首から乱暴に針を引き抜くと、その場にうずくまって泣きました。
そして叫びました。
醜い、醜い、醜い、醜い、醜い、醜い、醜い、醜い、醜い、醜い………。
所詮死ねない私の、無意味な絶望でした。
あの人たちから呼び出されたら、また奴隷として精一杯がんばるつもりです。
神様、いまは休ませてください。
姉ヶ崎さんに言われたとおり、今日はサークルの男子のみんなの名前を
一人一人思い浮かべ、感謝の言葉を言いながら、眠らせていただきます。