えりさんの作品

えり 断章〜17〜 上 明子の気持ち


   頭に巻いていた、二枚のスカーフが床に落ちた。
 放課後、生まれたままの姿となった二匹の私たち虫を前にして、儀式の時間が始まった。
 「肉奴隷反省会を始める」
 そう男子の島が宣言する。
 「性処理肉奴隷、虫2号えりでございます。
いつも皆様にお世話になりながらご奉仕をさせていただいておりますが、
いたらないところが多々あると思います。容赦なくご指摘いただき、全身で反省したく思います」
  私の隣でえりが床に頭をこすり付けて「ごあいさつ」した。さすがに手慣れた「ごあいさつ」だ。
  そして私の番が来た。
「性処理肉奴隷、虫3号、アコでございます。サークルの肉マスコットにしていただいてから、
まだ、まだ一ヶ月ですが、日々、ふさわしい存在になるよう、精一杯、がんばっております。
でも、まだ、足りないところばかり、目につくと思います。
はい、容赦なく罰をいただき、勉強させてください」
この一か月、何度もつっかえたり、どもったりして、そのたびに叱られながら、
やっとこれだけのごあいさつを言えるようになった。
 えりからも最近ほめられる。
「うまくなったねえ。それに、ひたむきな気持ちが伝わってくる」
私は複雑な気持ちだった。
私は、スカーフという「目印」ゆえに加えられる日常的なセクハラや、
この反省会での暴力の洗礼を、心ではまだ抵抗を覚えながらも、
細胞のひとつひとつでは吸収しているのだろう。
そのことと、挨拶の言葉をすらすら言えるようになることが比例していると、ちゃんと自覚しながらも、
まだまだ認めたくなかった。

いつものように、殺菌剤が混入した精液の瓶を私たちは飲み干した。
昼間のセクハラや強引なセックスなんて、
問題じゃないほどのいびりが始まることを、二人とも承知していた。
今日この反省会があるとわかっていて、私は学校に来ることにしたのだ。
一ヶ月前、私を迎えた最初の反省会があったときは、それはもう地獄だった。
思い出すと、いまでも胸が押しつぶされそうになる。
 島が私の近くに寄ってきて、長い髪を撫でる。
「一ヶ月でここまで従順になるなんて。マゾの素質があったんだな」
 藤巻が笑う。
「おれたちが、開花させてやったってわけだ」
 河本は私の顔をあげさせる。
「感謝しろよ、おら」
私はすぐハッとなって、返事の代わりに目の前に立っていた河本の陰茎を自分からしゃぶり始めた。
 仕込まれた通りにふるまうしかない私の脳裏に、姉ヶ崎奈美江の言葉が蘇る。
「わたしはね、友情とか信頼とかっていう言葉は嫌いなの。
特に、貧乏人がいう時にはね。どうしてかわかる?」

 それは、まだ私の人生に自由意志の余地があると思いこんでいた頃の話だ。
 といっても、いまからわずか一か月半ほど前でしかないのだけれど。

私は姉ヶ崎奈美枝に騙されてサークル室へ招き入れられた。
 「入って頂戴」
 姉ヶ崎奈美枝の尊大な態度に、腹を立てていたのが、いまとなっては懐かしい気すらする。
その前日、私の携帯電話に奈美枝からの伝言がふき込まれてあった。
「金田えりさんのことであなたに相談がある、彼女の事が心配なら明日、旧サークル棟へ来てくれ」
 一晩考えた挙句、私は悪いうわさのあるサークルの巣窟へとやってきた。
考えても考えても、はじめに思った「えりの事が、どうしても放っておけない」
という気持ちが変わることはない。
それなら、いっそのこと、そんな自分に正直になろうと思ったのだ。
「悪いわね、呼び出したりして。そっちのソファに座って。今、コーヒーでも入れるわね」
 尊大な振る舞いが身についている奈美枝に、
私は怒りを燃やしていたが、しかし今から考えれば、私はもともと引っ込み思案な性格だ。
彼女に対して、無理して挑戦的な態度をとろうとして身を固くしているのが、
いまから考えれば見透かされていたのかもしれない。


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