えりさんの作品

えり断章〜17〜下 明子の気持ちB



「今、助けてあげる!」
 とりすがる私に、えりは激しく首を振った。
その動きが乳首とクリトリスに付けられたクリップの紐に伝わり、
かごの錘が揺れてえりをさらに追い込んでいた。
私は、一刻も早くなんとかしなければと焦っていた。
 「え……えりがどんな酷い目にあってきたか、この前聞いたわ。
こうして、今も、このサークルの連中に、同じようなことをされているのね。脅されているんだと思う」
 私は目の前のえりに対してだけではなく、
扉の向こうにいる姉ヶ崎奈美江に対しても同時に意思表示していた。
だから多少演技がかったところがあった。
 だが実は、部室にいたのは姉ヶ崎奈美江だけではなかった。
複数の男子たちが隠れていて、いまかいまかと待ち構えていたのだ。
 何も知らないのは、この場所で私一人。
それが一ヶ月前の自分の姿だった。

「ずいぶんえらそうに演説しているじゃねえか。え? アコ」
 一ヶ月前の自分が写っているモニターの前でうつむいていた全裸の私は、
お尻の下の画鋲の痛みに耐えながらあごをしゃくりあげられ、
昔の、友情ぶっていた自分を反省させられる。
画面の中の私は必死に叫んでいた。
「もう大丈夫よ。もう大丈夫なのよ」
 まるで自分に言い聞かせるように繰り返すかつての私がいた。
「あ……姉ヶ崎さんと約束したわ。私がえりを信じてるって事、
えりも私を信じてるって事、二人の信頼関係を彼女に見せれば、もう解放してくれるって。
ねえ、お願い。一言、言って。私を信頼してるって」
 熱心に、しかも芝居がかってえりに語りかけていた私だったが、
いまから考えれば、私は最初から空回りしていた。
 えりにはわかっていたのだ。
サークルのメンバーがえりや私と対等な約束なんかするわけなどないということを。
えりは島から「一切声を出すな」と言いつけられていたのだ。
そのことを知らない私はえりに「信頼している」と言わせさえすれば、
彼女を今後一切奴隷の立場から解放してあげるという姉ヶ崎奈美江の約束にまだ縋っていた。
  そんな私と、えりの過去の映像を見ながら島が勝ち誇ったように言う。
「えりが勝てばアコは負け、アコが勝てばえりはお仕置き。
奴隷に勝ちはない。持ち主を楽しませることだけが存在理由だったんだよ。最初から」
  私も、最初から奴隷にさせられる運命だったというのだ。
私は画鋲の痛みと共に悔しさを噛み殺す。


メニューへ 妄想小説へ 次へ進む

動画 アダルト動画 ライブチャット