えりさんの作品

えり断章〜17〜下 明子の気持ちF



半立ちにさせられた私は、上から下がる紐をグイッと引っ張る島に乳首と髪の毛を吊り上げられながら、
後ろからの挿入に応えなければならない。
私は痛みに耐えながら島に尻を向け、その凶器を受け入れていった。
「はは、悔しいだろ、許せないだろ、俺たちのことが!」
  目の前にある鏡から目をそむけようとする私の顔の後ろで笑う島が、私の苦痛に歪む顔と同時に写っている。
 「それとも、弱い自分が許せねえってか! お前の、その屈服の味がたまらねえんだよ!」
  ぐいっと押し込みピストン運動を繰り返す島。私はぎごちない腰の動きを叱責される。 
藤巻は、島に貫かれたままの私の前に回り、乳房を揉みしだきながら吸い付いてくる。
 私はたしかに、許せないと思っている。弱い自分に対しても許せない。
だが、そんな自分に対して調子に乗っていじめをエスカレートさせるサークルの男たちは、もっと許せない。
私の怒りは、私自身を含めたすべてを燃やし尽くしてしまいたいという衝動に変わっていた。

 「あり…がとうござい…ます」
 礼を言えと命令されたので、私は敗北者として、その通りにした。だが、望んでしているように見えたとしても、
私はただ言いなりになっているだけなのだ。
 天井からの紐に結ばれた三つ編みを引っ張りながら島は問う。「なにがありがたいんだ、え?」
 「こ……こんな姿にしていただいた、島さんと、藤巻さんたちに感謝しています」
 「そういうお前はなんだ?」
 「ど、奴隷です」
 「お前の名前を聞いてるんだよ」
  島は私を再び画鋲の上に座らせ、ひざの上に手を置いて下に押し付ける。
 「うっ……あっ、痛ッ」
 「ほうら、お前の名前だよ、まだ抵抗あるのかよ」

  藤巻が、自分に奉仕していたえりを立たせ、私のひざの上に腰掛けるよう命令する。
  だがえりは、がくがく震えて動こうとしない。
  「なんだ? どうした虫2号!」
  「そ……それだは、お許しを!」
  えりはたとえ命令でも躊躇なく私への責めに加担することには抵抗があるようだ。
  そんなえりを拳骨で殴り飛ばす藤巻。
  切れた口の端を拭って立ち上がるえり。
  心なしかそんなやりとりが、予定調和にさえ思えてきた。
罰を受けるとわかっているのに、さからってみせてるようにも見えた。
 えりに情をかけられているのに、そのせいでえりが殴られているのに、私はそんなことを考える人間になってしまったのか。
  そんな思いを拭い去るように、私はこう言わざるを得ない。
  「座って、いいのよ、えり……」
  今度は私がえりをかばうと、藤巻は「しょうがねえなあ。オレが座ってやるよ」と自分が腰掛ける。
 「うううっ、あ……」
  何度も腰を押し付けて座り直す藤巻に、私は脂汗を垂らしながら声を漏らす。
  島がそんな私の顔をいやらしく撫で、片方の手で乳房をたくし上げる。
  「お前の名前は?」
  こうして私は屈服する。
  「は……はい、虫3号、アコでございます。性処理肉奴隷でございます」
  「じゃあ立て」
  私は立ち、自分からお尻を突き出す。
  自分から奴隷の名前を言った私は、今度は自分から腰を動かす。

   「自分で名乗らせるまで、一ヶ月かかったな」
   「手こずらせやがって」
   「まあでも早いほうか。あれだけさからっていたんだから」
   「一ヶ月前まで処女だったことを考えれば、腰を動かすのもうまくなったじゃねえか」
  後ろから貫かれる私の前で、えりは藤巻から、さっき逆らった罰でもう三、四発思いっきり殴られたあと、
私と同じように乳首にクリップされ、クリップに結び付けられた紐がやはり三つ編みの先に結び付けられた紐と会わせて天井を通される。
えりは片足立ちになりながら、私と同じように後ろから貫かれはじめる。
放心状態になりながらも、腰を上げて藤巻を受け入れるえりはロボットのようだ。
  お互いに向き合った私たち。
  唇が切れ、血が出ているえりと目が合い、私は涙で視界がぼやけてくる。
  「ごめんね、えり」と私は目で言った。
  「ううん」と、えりは私の意を汲んで首を振ると、藤巻の動きに合わせて身体全体を揺らし、汗を散らす。
   私も、島のピストン運動に私自身を合わせて腰を振る。
   それは敗北者だけが知ることの出来る、地獄の連帯だった。

 一ヶ月前、私は彼らが言う「女」としての機能をまだ一つも使っていなかった。
 今の私は、憎悪の中で自ら動き、腰を振る一匹のメスに生まれ変わろうとしている。
 確かに、そのことだけは事実だ。

 「あり…がとうござい…ます」
  私はまた感謝の言葉を言わされた。


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