えりさんの作品

えり断章〜17〜 えりの気持ち@



  そんなことがあった翌日、大学で一時間目はたまたま藤本さんと同じ授業だったのですが、
彼女はちゃんと時間通りに教室に入ってきました。大教室だったので、彼女の身分を知っている学生もいます。
好奇の入り混じった視線を受けながら、彼女の髪にはちゃんとあのスカーフが巻いてありました。
そして私の顔を見て、ニッコリ笑いました。昔と変わらない笑顔で。

 私は嬉しくなりました。もちろん、私の髪にもスカーフを巻いてあります。
今朝も、土井くんの友だちだっていうランニング姿の陸上部の男子に、植え込みに連れ込まれて抱かれたばかりです。
彼はせっかちに私の中に出した後、何食わぬ顔でまたキャンバスの中をランニングしていきました。

私と藤本さんが真面目に授業を聞いていると、後ろの席に座っている男子のヒソヒソ話し合う声が聞こえてきました。
私の見知らぬ学生です。

「授業終わったら、あの二人プールの裏に連れ出して、一緒にやっちゃおうぜ」
「いいなそれ。俺たちで交互に出し入れ出し入れ……」
「お前とアナ兄弟になるんかい!」
「イヤか?」
「いや……この際しかたねえ」
「ハハッ」

 どうやらサークルメンバーと仲のいい水泳部の部員のようです。
 もちろん彼らの会話は藤本さんにも聞こえています。

<どうする?>
 私はノートの余白にそう書いて藤本さんに示します。
<スカーフはとらない>
 藤本さんはそう私の字の下に書きます。

 二人の目が合いました。

 私はうなづいて、机の下からそっと彼女の手を握りました。
(この後「えり 断章 番外編  藤本明子の憂鬱 えりの気持ち3」に続きます)」


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