えりさんの作品

えり断章20 えりの気持ち



「今日は釣りだって、楽しみだなあ」
「釣りの獲物としちゃ、アコは初物かあ」
男子たちが嬉しそうに準備をします。ここは音楽用の防音室です。

裸になってご挨拶を済ませた私たち二人は並んで正座させられます。
髪の毛は下ろされ、両手は後ろに縛られて身体中のやわらかいところにクリップが挟まれます。
島くんと河本くんが離れた場所に座ってつり竿を振り下ろします。
クリップの外側の丸くなっている部分はマグネットになっていて、うまくはまるとカギ針に引っかかるのです。
竿が振り下ろされるたびに、カギ針が身体に刺さらないか、かすらないか不安です。眼にでも刺さったら失明するかもしれません。
でも、そんなことを二人は気にせずに、ビュンビュン振ってきます。
「ほら、アコ、眼を閉じるんじゃねえ」
河本くんの怒号が飛びます。
苦痛を与える改造を受け入れた3号に、今度は恐怖を与える実験が始まったのです。

二十分前、私はこの部屋に向かって歩きながら3号に言いました。
「奴隷には人権もないけど、死ぬ権利もないの。死ぬときは、あの人たちに殺されるときよ」
「殺される?」。3号は恐怖の顔になりました。
「もちろんそこまでされないわ、たぶんね。奴隷は生かさず殺さずだから。
でもそのぐらいの覚悟がないと、今日のいびりは耐えられない。殺されてもいいという覚悟で、正面から向かい合うのよ」

そんな私の言葉を思い出したのか、3号は「私、死ぬ覚悟…」と私にだけ聞こえる声で言うと、しっかり眼を開けました。
「いッ!」
私の耳たぶを針がかすりました。思わず顔をゆがめてしまいます。
3号の髪に針がかすり、次の一振りでわき腹のクリップに針がヒットしました。
「うッ!」
「かかったあ」
河本くんが嬉しそうに引っ張ります。
次の瞬間、私の右乳房のクリップに島くんの針がヒットします。
私たちが正座している前後には、床にテープが貼ってあり、どんなに痛くてもその前にも後ろにも身体を動かしてはなりません。
痛みで身をよじり、髪を振り乱す私たちにかかった竿をグイグイ引っ張っていく釣り人たち。
洗濯バサミと違って、クリップは強力なばかりか、引っ張られると少しずつズレてきて、それがまた私たちを苦しめます。
痛みを声に出さないようにしても、思わず声が漏れてしまいます。
冬なのに、頭から汗がこぼれ、ピーンと引っ張られた糸の先で、釣られた虫たちの地獄が繰り広げられます。
正座したままの私達の歪んだ表情は、正面の鏡に映され自分たちで見させられています。
でも自分たちがどう見られているかなんて、そんなことにかまっていられない瞬間が来ます。
ついにクリップがはじけ飛ぶとき、思わず絶叫してしまう私です。
隣では3号が思わずひざを前に出してしまいました。
「ペナルティな」
釣り人が交代し、3号は私より一回多く釣られることになりました。
こんな地獄が、釣り人の三交代で続けられました。私達の絶叫は、防音室の外には届きません。

やっとクリップが外された頃には、アコはもう汗で全身ぐっしょりになっていました。私もです。
白い肌のところどころにクリップがはじけ飛んだ後の赤い点が残っています。
でも、また終わりではないことを、私は知っています。


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