えりさんの作品

えり 断章 番外編  藤本明子の憂鬱 2



  「お前ら、友だちだろう! もっと仲良くしろよ!」
 「お互いに庇いあう、美しい友情だなあ、キャハハハハ」
 笑いながら鞭を振るう男子たち。
 「まったく感動するわね」と腕を組む姉ヶ崎という女子。
 私とえりはお互いの股間に顔を埋めて、お互いの呼吸を合わせながらひっくり返り、
順番に背中を打たれます。
 自分が打たれていないときは、反り返るえりの反応がさっきまでの自分を悟らせます。
そしてすぐに、自分が打たれる番になるのです。
 「なにかさせられているときは、いじめられるしかない自分に、のめりこむの」
 えりにそう教えられたのが蘇ります。
 でも、私の舌遣いは、えりみたいに、こんなにうまくはない……。
 男に奪われるよりは素直になれないこともないけれど、まだ私は、舐めることにも、
舐められることにも、没頭できません。
 むしろ、からみつく鞭の洗礼に私はどこか安心していました。
友情でなんでも乗り越えられると思っていた自分を、罰してくれているようで。
 えりに言われた言葉がよみがえります。
「あなたみたいに、友だち友だちっていう人間は大嫌いなの!」

 あの日、サークルの部屋に入ろうとしたとたん、強烈な匂いが襲ってきました。
 男子の更衣室をうっかり覗いてしまったときのような、ムッ、とするオスの匂い。
吐き気を覚えましたがが、教室の床に倒れているえりを見つけて、それどころではなくなりました。
 この教室で何があったかは、えりの状態を見れば想像がつきました。
素っ裸で汚らしい液体と血にまみれている女の子は、ズタボロでした。
乳首には、安全ピンで留められた名札が刺さっていました。
 あまりに痛々しくて抜こうとすると、えりは断ったのです。
「これはいいの、私は奴隷なの。本当のことなの。」
 えりは、私の手をとろうとはしませんでした。
自分は好きで奴隷になったのだから、放っておいて。
サークルの人たちがあなたを狙っているから、気を付けて。
「あなたみたいに、友だち友だちっていう人間は大嫌いなの!」

 えり、許して……私は自分の股間に没頭しながら鞭打たれている彼女に、心から詫びました。
 ふと、自分の股間がぬるぬるになっているのに気づきました。
先にえりがそうなりました。
すると、自分のそれも、ただ唾液ではなく、私の内側から出るものと混じり合っていることを悟りました。
 「罰を受けていると思うと、いじめを受け入れらやすくなるわ」
 えりにそう言われたのを思い出しました。
このことなのね、えり……。

でも、私が素直なのはここまでです。
えりがこうも言っていたのを思い出したからです。

「いじめを受け入れるようになれるってことは、洗脳よ」
えりは、サークルに入会させられたその日に、私に電話をしてきてそう言いました。
「藤本さんには、そうなってほしくない」
 
 洗脳? 私は洗脳なんてされません。私が受ける罰は、えりに対しての自分の驕りに対してです。
 この目の前の男たちには、少しも申し訳なさなんてないのですから。
ましてや、えらそうに腕を組んで見下ろしている女子なんかには。
 私は、えりと一緒だったら耐えられる。
 でもえりは、たった一人で、生まれたままの姿で、こいつらに立ち向かっていったんだ。
 それに比べたら……。

「それから、サークルの中では私の名前は『虫2号』だから。これが奴隷につけられる名前なの」
 奴隷は人間以下だということを、名前を呼ばれるたびに認識させられる。
たしかに、これは洗脳です。
「えりという名前を言わなければならないときも、先に虫2号と必ずつけるのよ。
間違えると罰を受けるから、気をつけてね」
 そんなアドバイスももらいました。

 からみあっていた私たち二人の身体はやがて引き剥がされました。
 えりの背中に無数に走る鞭跡は、私の痛みでした。
「ほら、親しき仲にも礼儀はねえのかよお」
 私は感謝の言葉を、えりに対して言わされました。
「ありがとう、とても気持ちよかったです」
 私は「虫2号」という相手の名前を、口に出す勇気はまだありませんでした。
 二人の中の、なにかが崩れるような気がしたから。
 でも、いずれ言わなければならないとは思っていました。

 えりは、ぬらぬらと濡らした顔で、私を見つめて言葉を返しました。
「ありがとう、私もとても気持ちよかったです。虫3号」
 私はあっと思いました。
 えりの瞳から、つーっと涙が落ちました。

 私はこの日から、藤本明子ではなくなりました。
 私の名前は、性処理肉奴隷・虫3号アコでございます。
 みなさま、これからなにとぞ、よろしくおねがいたします。

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