えりさんの作品

えり 断章 番外編  藤本明子の憂鬱 3



「おら、おら、おら、おらア!」
「イケ、イケ、イケ、この野郎!」
 二人の水泳部員に後ろから交互に突かれながら、
私たち二匹の虫はパンツを降ろしたお尻を突き出して、フェンスに手をかけていました。
 「一度こういうの、やってみたかったっての!」
 「まったく!」
 隣の虫は私よりも大ぶりな乳房を乱暴に捕まれて喘いでいます。
 「名前がねえと、気持ち入らねえな」
 「お前ら、なんて名前なんだ」
 そういう質問を受けたら、私たちはこう答えることになっています。
「私たちは性処理肉奴隷です。私は虫2号えりと申します」
「私は性処理肉奴隷、虫3号アコです」
 後ろから犯されながら、顔だけ振り向いて私たちは一人ずつ懸命に答えます。
 「アコ、アコ、アコ、ほら、いくぜ、アコ!」
 太った水泳部員は3号の名前を連呼しながら、私を犯している小柄な部員よりも先に果てました。
 
 藤本さんのサークルでの名前を付けたのも姉ヶ崎さんでした。
「犬や猫でも二文字の方が呼ぶのカンタンでしょ。虫けらなんだからアコでいいわね」
 そのとき、島くんが横から口出しました。
「えりが虫2号なら、アコは何号だ?」
 姉ヶ崎さんが私の目を見て言いました。
「中学のときに自殺したコ、3号と呼ばれていたんでしょ。ちょうどいいじゃない」
 私は血の気が引きました。
 「そんな……」
 「フフ、3号と聞くたびに、かつて死んだ仲間のことを思い出すのもいいかもしれないわね、2号」
 そのとき、藤本さんはその場にいませんでした。
 死んだクラスメイトと同じ番号だなんて、私は3号に言うことが出来ません。
ただでさえ、普通の女の子の日常から堕とされてしまった彼女に。

 後ろから出された私たちは、パンツをはく時間も許されず、
しゃがんで二人の水泳部員の股間を交互にしゃぶります。
「いいぜ、えり!」
「ほら、アコ、歯を立てるな!」
 まだ慣れていない3号はぎごちないけど、懸命です。

 彼らを土下座の姿勢で見送った後、私たちは冬のプールサイドにしばらく腰掛けていました。
 「私はもうせいしょりにくどれいなんだよね」
 3号は苦笑してそう言います。
 私は何も答えることが出来ませんでした。
「でもなんで3号なのかな」
 うつむいた私に、3号は気がついたように言います。
「もともと中学のときにえりが番号で2号と呼ばれていたって、昔電話で言っていたっけ?」
 「うん……」
「じゃあ、3号もいたの?」
「……うん」
「どんなコだった?」
「真面目だったよ」
「真面目な奴隷?」
「うん。勉強も良く出来たし、絵がうまかった」
「私より優秀かな。そんなコがどうして……」
「逆らいそうもなかったからかな」
「……」
「あと、私が従順だったから、彼女もそうできると思ったんじゃない?」
「……ってことは、彼女は奴隷になりきれなかった?」
 私はまた答えられませんでした。
「うん、いいの、これ以上聞いたらつらくなりそうだから」

 私もそうだったし、いびられ続けて、さからうのを諦めたコたちはみんな結局マゾの本性を持っていました。
理性のタガが外れれば、自分から足も開くし、抱かれながら男子の背中に爪を立ててしまうのです。
 でも、我に返ったとき、そんな自分を受け入れられるかどうか、それだけが違うのです。
プライドが高ければ、死を選ぶコもいるでしょう。昔の虫3号真理のように。
 虫3号アコが、本名藤本明子に戻ったとき、耐えられるかどうか。

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