続、水銀の世界


第三章 ヤーサマ襲来す


せっかくの獲物を逃がしたその夜。
見るからに人相の悪い、ヤーサマ風の男が店にやって来ました。
ヤーサマ風の男は店の中をウロウロし、ときどき店の壁を拳でドン!と叩いたり、商品が並べてある棚に蹴り
をくれたりしています。
店の中に不穏な空気が流れ、4,5人いた客もそそくさと店を出て行ってしまいました。
客がいなくなると、ヤーサマ風の男はレジに近づいて来ました。
「おう、姉ちゃん」
男が私に声をかけてきました。
「姉ちゃん、今日昼間何かあっただろうが」
男は妙に間延びのした声で言いました。
「な、何のことでしょうか?」
「とぼけるねい!」
男がいきなり大声を出したので、私は思わず背筋を伸ばしてしまいました。
「おう、コラ。小娘、てめえうちの組長のお嬢さんにインネンつけてくれたそうやないかい、え?」
ヤーサマ風の男、いえ、本物のヤーサマは、私の胸ぐらをつかんで引き上げ、下から上目使いに私を睨み
つけました。
「おう、どう落とし前つけるんじゃい、ああ? 返事せんかあああああああ!!」
薄馬鹿ハナコはいつのまにか店の外に出ていて、私と目が合うと
「お、お先に失礼しまあす」と弱々しく言って、薄馬鹿に似合わぬ脱兎のごとき勢いで逃げ去ってしまいました。
私は胸ぐらをつかまれたまま吊し上げられ、息が詰まって足をばたばたさせました。
昼間逃がした小娘がヤーサマの娘だったとは!
酸素が欠乏しはじめた私の脳裏に「破産」「一家心中」といった
マイナーな言葉が駆け巡りました。

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