霧裡爺さんの作品

恥罰学園 25



「こんなこと絶対に許せません。断固として犯人を見つけ出し、厳罰に処するべきです!」
世界史の教師、西城史子はヒステリックな金切り声を上げながら、自分の机を2度3度と叩いて立ち上がった。
「よくもこんな……こんな――」
叩いた手の下にある数枚の写真をつまみ上げ、
「汚らわしい! ふしだらにも程があります!」
吐き捨てるように言うと、ぐしゃぐしゃに丸めて床に叩きつけた。
吹奏楽部の2年生、鈴原奈菜の性器が大写しになっている写真である。
これでもか、という程のアップで撮られ、色も形も生え具合から湿りようまで何もかもが
明確に写し撮られていた。
早朝から学園を騒がせ続けている代物だ。
「西城先生。大事な証拠品を潰さんで下さいよ」
中年の男性教師は自分の手の中の写真から目も離さずに呟いた。
口元がだらしなく緩んでいる。
「何言ってるんです。回収できた分だけでも山ほどあるじゃないですか」
職員室に集められた全教員の机の上それぞれに、写真の束が置いてあった。
「でもですねー。ほら――」
若い男性教師が弁当を食べながら、もごもごと発言する。
昼休み中に臨時の職員会議が行われているのだ。
「これ、良く見ると何種類かありますね。こっちのはほら、両手の指でいっぱいに開いてますが、
これは指そのものが写っていない。濡れ……汚れ具合も微妙に違ってますね。
こいつなんかわざとでしょうねー。お尻の穴までも――」
「それがどうしたって言うんですか!」
西城が細い眼鏡の奥から睨み付けた。
「だから証拠ですよ」
なおも写真から目を離さず中年の男性教師が割りこむ。
「全部の写真が同一人物のものなのか。外部の人間か。内部か。本当にこれはうちの生徒なのか。
どうです女性の目から見て。年齢は推察できませんかな」
「それは難しいです」
外園理沙が応じた。
「私はここの生徒です――なんて掲示板には書いてあったが、どっかから拾ってきた写真を使っている
悪戯の可能性だってあるだろう。今やインタ−ネットを使えばこのくらいの――」
「その可能性は残念ながら低いでしょう」
今度は教頭の鎌木が応じる。
これを――と、1枚の写真を差し出す。
「ここの部分……お尻の穴のところを見て下さい。何かはまっているものがあるでしょう。
小さくて見づらいですがこれは――」
鎌木が写真に虫眼鏡を当てた。
「……分かりますか。これはうちの校章です」
頭を寄せて見ていた教師たちから溜息が漏れた。
「おそらくは昨夜、日曜でしたからな。侵入してやったんでしょう」
事実はそのとおりに行われていた。
深夜に部員たちに呼び出された奈菜は、大量の恥ずかしい写真を渡されて
自分でばらまくことを強要されたのだ。
学園中の掲示板に、男子用トイレの中に、各教室の黒板に、体育館にと。
特に男子用トイレは全ての小便器の中と、その小便器を使う男子の真正面に当たる
位置のタイルとの両方に貼らされた。
全ての男子に奈菜の性器の写真を見ながら、奈菜の性器に向かって用を足させるのである。
しかも念の入ったことに、男子全員の下駄箱の中に1枚ずつ入れさせられたため、
奈菜の性器の写真はもれなく全男子の手に渡ってしまったのだ。
しかも各場所に貼り出された写真には、裏面にまんべんなく強力な接着剤が塗られていたので簡単には
剥がせず、長時間にわたって全生徒の注目の的となった。
それらの回収作業に教師たちは朝から振り回され、一段落つくまで昼までかかったのだ。
「犯人を見つけると言っても……ここまでドアップで他にヒントになりそうなものは無さそうですしね
ー」
「まさか女生徒全員を裸にして見比べてみる訳にも」
「そんなことしたって無意味でしょ。そこが似ていたってなんの証拠にも――」
「皆さん――」
それまでじっと俯き、一言も発しなかった理事長の千鶴が立ち上がった。
  
 憤まんやるかたない。そんな表情で西城史子は足早に教室へ向かっていた。
軽く引きずる右足は子供の頃に受けた事故の後遺症である。
(バカ理事長め!)
さっきまでの職員会議での言葉が脳裏に浮かぶ。
「皆さん。この件は私が預かります。警察はもちろんですが教育委員会、マスコミ、
PTAんも報告いたしません。
犯人探しもしません。
皆さんは写真の回収を徹底して行って下さい。
尚、くれぐれも他言無用。
一切口外せぬよう願います。どんな例外も認めません。以上」
いや、しかし――と、唖然とした顔で食い下がろうとする男性教師を睨み付け、
「以上と言ったら以上です!」
千鶴は一方的に会議を終了させて理事長室へ戻って行った。
(何様のつもりだ、バカ理事長め。年下のくせに。親から引き継いでるだけで偉そうに!)
史子はとにかく千鶴が嫌いだった。
虫が好かない。馬が合わない。
史子から見える千鶴は、全てを生まれながらに持っている高慢な女の象徴だ。
(今に見ていろ。いつか必ず――)
廊下の隅にかたまって馬鹿笑いしている女生徒たちを睨んだ。
若くて楽しそうな存在に腹が立った。
「うるさいっ! 教室に入ってなさい!」
史子は怒鳴りつけて立ち去る。
その中心に性器の写真をばらまかれた問題の生徒、鈴原奈菜が同学年の吹奏楽部員に囲まれ、
笑いものになっているとは夢にも思わずに。


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