霧裡爺さんの作品

電車1



 11月のある日。東由紀子は、打ちっぱなしのコンクリートの冷たい床に、全裸で正座をさせられていた。
「もう1度! 最初っからやりなおしっ!」
 由紀子の周りを囲んでいる10数人の少女たちから、口々に厳しい声が飛んだ。
いずれも10代中頃の派手な身なりの子たちで、由紀子の年齢の半分にも満たない子もいる。
「ちゃんとやれよ、てめえっ!」
「アウッ!」
 由紀子の裸の尻が、少女の1人につま先で蹴られた。
「ご、ごめんなさい……すぐに――」
 すでに由紀子の中には大人としての気概も、抗う気力も失せてしまっていた。
それまで暴力らしい暴力を受けずに過ごしてきた心は、
容赦ない集団の暴力によって簡単に折られたのだ。あるのは恐怖だけである。
 無理矢理に書かされた紙切れを、由紀子は震える手でつかみなおす。
「は、反省文……東由紀子……29歳……」
 哀れな涙声。対照的に少女たちのせせら笑う声が、冷たい壁に反響した。
 体育館ほどもある大きな廃倉庫に、誰からも見捨てられたその空間に、独特のサディスティックな空気が充満していた。
「あ、あの……先ほどは電車の中で、楽しく盛り上がっていたお2人様に対し……
え、偉そうな顔をして文句を付けてしまい……たいへん申し訳ありませんでした。
……だ、旦那にもかまってもらえず……欲求不満でイライラして……つい、八つ当たりをしてしまいました。
悪いのは全部わたしです。こ、このとおり心から深く反省いたします」
 そこまで読んだ由紀子は、持っていた紙切れを横に置き、
勝ち誇ったように見下ろしている2人の少女に向かって土下座を始めた。
 両手を突き、頭ではなく顔面全体を床に押し付け、反対に腰を浮かせて尻を晒す恥辱の土下座。
しかも由紀子はその白い尻を、媚びへつらうように左右に振らねばならないのだ。
「もっと頭、下げろよっ」
 電車の中で注意された少女が、由紀子の後頭部を踏みにじった。
「おら。ケツ止まってんぞ!」
 後ろから由紀子の尻が蹴られた。
「なんか文句あんのー。オバサーン」
「フヒィッ!」
 尻の狭間から入り込んだ少女の靴のつま先が、由紀子の性器を踏みにじった。
「アッ、あり……ま、シェン」
 顔面を床に押し潰されながらも必死に答え、
性器を踏まれながらも尻を振る惨めな由紀子の姿に、少女たちは大笑いした。
「けっ! 汚えモン踏ませんじゃねえよ。靴が汚れたじゃねえか」
 つま先が由紀子の尻で拭かれ、背中に唾が飛んだ。
「ふん。情けねーの。続きを読みなっ」
 やっと由紀子の後頭部を踏みにじっていた足が離れた。
 正座の姿勢に戻った由紀子の顔に、
床のほこりや小さなコンクリートのかけらが付いていた。表情には疲労の色が現れている。
「……あ、あの……ほ、本来なら頭を丸めて謝罪するところですが……代わりに――」
 由紀子は目を閉じた。眉がよじれ、鼻から悲しげな溜息が漏れる。
「代わりに……ま、マンコ……わたしのマンコを……つるんつるんに丸めさせて下さい。お願いします……」
 由紀子の濃い陰毛に少女たちの視線が刺さり、鼻で笑う音が鳴った。
「そ、そのうえで……お2人様と皆様のお気が済むまで……わたしを、いじめて下さい。
わたしが与えてしまったストレスを解消する道具として……わたしの身体をお好きなように使って遊んで下さい。
み、身の程知らずのバカなわたしが……心を入れ替えて十分に反省できるまで……
どうぞご遠慮なく……て、徹底的にいじめて、いじめて……い、いじめぬいて下さいませ……うっ、うっ――」
 少女たちに書かされた屈辱的な反省文を読み終え、由紀子はたまらずにむせび泣いた。

――静かにしなさいっ!
 わがもの顔で電車で騒いでいた2人の少女に、由紀子がそう注意してから、まだ2時間ほどしかたっていない。
 いつもなら無視していたはずだった。
こんな連中と関わってもろくなことにならないのは、わかりきっていた。
由紀子の胸に、幾度も後悔の思いが湧いていた。
 旦那の左遷の話を昨日聞かされ、相当にイライラしていたのだ。
もともと、それほどに愛情も感じなかった男だが、生活のことを考え、
一流企業に勤めているのを決め手として結婚をしたようなものだった。
それが左遷。しかも行き先は東北の旦那の実家から、そう遠くない場所であった。
君もきっと気に入るよ――と、無能な男は笑って喜んでいた。
 虫の好かない姑と、無能なバカ男と、住みたくもない東北の田舎暮らし。
こんなものは、わたしの人生じゃない。由紀子は叫びだしたかった。
専業主婦だし、子供もいない。こっちにのこる言い訳が思いつかずに、本気で離婚を考えていた。
 そんなときだった。電車で身をよじってバカ笑いを続ける少女に足を踏まれたのは。
謝りもせずに、むしろ邪魔そうに舌打ちした少女を見て、由紀子の我慢は限界を超えてしまったのだ。
――あ、あなたたち、常識はないのっ!
 気がつくと由紀子は怒鳴っていた。
 少女たちの眼の中に不穏なものを感じ、すぐに電車を降りた。
が、いつのまにか後をつけていた少女たちに刃物を突きつけられ、拉致されたのだ。
驚いたことに、少女たちは車まで用意していた。

「ほらよっ。オバサン。自分でやんな」
 全裸で正座している由紀子の膝に、脱毛用のテープが転がってきた。
「嫌なら言いなよ。チリチリに燃やしてやっから」
 少女たちが楽しげに笑った。


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