霧裡爺さんの作品
電車6
「キャーッ! キャーッ!」
わざとらしい大きな悲鳴が、より多くの野次馬たちを集めた。
発しているのは、由紀子をなぶりものにしていた少女たちである。
「なにー。なに、あれ。変態? 露出狂?」
一般の客たちも騒いでいる。突然電車の中に素っ裸の女が現れたのだから無理もない。
しかも身体を隠すこともなく、逃げるでもなく、それどころか、ここを見て――とばかりに大きく脚を広げているのだ。
見ちゃいけません――と、子供の目を母親がふさぐ。
学校帰りの女子高生たちが、金属音のような悲鳴を上げる。
話のネタにでもするのか、携帯を構えている子も多い。
「あの、動いてんのって……アレだよな」
大学生らしき男たちが、由紀子の股間からはみ出ている黒い棒状の物を指差す。
男性器型の電動バイブ。かなり大きなサイズのそれは、ぐねぐねと忙しく身をくねらせていた。
いっやらしいわ――と、中年過ぎの女たちが鼻にしわを寄せる。
「背中になにか書いてあるわね。……ええと、東……由紀子……参上、ですって。本名かしら」
「恥知らず! 顔が見てみたいものね」
「ほら。あんなに身体をくねらせて……。変態よ、変態!」
「駅員さんはなにをしてるのかしら。さっさと捕まえてしまえばいいのに」
駅のホームに続々と人が集まり、パニックのようになっていた。
電車を出すこともできず、駅員もなかなか近づけない。
「あの女もどうして逃げないんでしょうねー」
「興奮して腰が抜けちゃったんじゃない?」
やーだっ――と、女たちは顔を見合わせて笑う。
動きたくても動けないのだ。
由紀子が唯一身につけているブーツは、あの少女たちによって床に接着されている。
倉庫にあった工業用の強力な接着剤が使われていて、専用の溶剤なしには数人掛かりで押しても引いてもピクリともしない。
つまり由紀子は、1メートル以上左右に離された動かないブーツを履かされているのだ。
はたから見ると自分の意思で開脚しているようにしか見えないが、その実、拘束具を付けられているようなものである。
動くためにはブーツを脱ぐしかない。
だが、そのために必要な両手も巧妙に拘束されていた。
両手で頭上の吊り革を握らされ、
その上から透明で丈夫な釣り糸が何重にも巻きつけられていて、手を開くことすらできないのだ。
よほど近くからでないと糸は見えないので、こちらも脚と同じく、自分の意思でしているようにしか見えない。
その釣り糸は、口の中の下着を吐き出させないように唇の間に巻かれているのと、
バイブが抜け落ちてしまわないように腰にT字につながれるのにも使われている。
こうして由紀子は、変態露出狂女に見えるようにして放置されたのである。
「あれ見てよ。お尻突き出しちゃってさ。アソコ見えてるっての」
それは由紀子をこんな目に遭わせた少女たちの声だった。
少女たちはブーツの位置を吊り革の真下ではなく、
少し手前にすることで由紀子の裸身を前のめりにさせ、尻をホームの方に突き出させていた。
バイブになぶられて反応する秘肉を見世物にするためである。
「ベッチョベチョじゃん。ひどいね。垂れてきそう」
少女たちが笑い、つられて野次馬たちもドッ――と笑った。
由紀子は――。
混乱の真っ只中にあった。
多くの人が行き交う公共の駅で、素っ裸の晒し者である。
しかも可哀想な被害者としてでなく、淫らな見せたがりの変態女としてだ。
受ける視線は、冷たく、いやらしく、遠慮がない。
聴こえるのは、悲鳴と嘲笑、非難と侮蔑の言葉ばかりである。
必死に「違うの、これは――」と、弁明しようとも、助けを求めても、
「ウー、ウー」という喘ぎにも似た呻き声にしかならなかった。
なんとか逃れようと身体を揺すっても、悦び悶えてるように思われ、
「いいぞ、変態ねーちゃん。もっとケツ振れやー」と、声がかかる。笑いが上がる。
さらに辛いのは――。
(フウッ……ハッ、ハッ、ハッ……クウー――)
バイブの動きで実際に愉悦を覚えていることだった。しかも強烈に。
すでに、倉庫でリンチを受けていたときから、昇りつめてしまいそうになっていた身体だ。
2本の山芋を前後に入れられ、身体中を少女たちに踏みにじられたあのとき、
あと少し続けられていれば確実に果てていただろう。
その後由紀子は、コート1枚だけを全裸の上に羽織らされ、
少女たちに囲まれたままで駅まで歩かされた。
コートの中で両手は後ろに縛られ、腰にはロープをT字に掛けられた。
いわゆる股縄というやつで、性器にロープが縦に喰い込み、コブまで作られていた。
痒くて我慢できなかったら自分で腰振ってしごいてな――と言われ、そのとおりに腰を振りながら歩いた。
さらに胸も突き出して、コートの裏地に乳首をこすりながら歩いた。
少女たちに笑われ、小突かれながらも痒くて止められなかった。
駅に着き、電車に乗せられると、すぐにコートもブーツも脱がされて素っ裸にされ、股縄も解かれた。
ひっでえな――と、少女が指摘したコブの部分は、変色するほど愛液にまみれていた。
さらには、接着済みのブーツで開脚させられたままオナニーをさせられた。
マンコが痒いです。マンコ弄りをさせて下さい――と、言わされて。
イクことは許されなかった。その方が晒し者にするときにおもしろいと少女たちは思ったのだろう。
そして、今――。
(アアッ! も、もう――)
由紀子は歯を食い縛って、目をつぶる。
いつアクメに陥ってもおかしくないほど、秘肉が昂ぶっている。
「ねえ。あいつ、ひょっとしたら――」と、少女たちの声。
「まさかー。こんなとこでそこまではないでしょう。いくら淫乱でも」
「最近のオバサンってのは、社会の常識ってものがないんですかねー」
サディスティックに笑う少女たちの声が、由紀子の耳についた。
――と、不意に「ギュルッ」と下腹部が唸り出す。
(ま、まさか……)
しくしくと痛み出していた。いや、とうにそれは始まっていたのかもしれない。
置かれた状況の異常さに麻痺し、自覚できなかっただけなのだろう。
気づいてしまった今、痛みを伴う欲求が由紀子の中で膨らんでゆく。
強制的に与えられた強い便意。
由紀子はオナニーをさせられながら、少女たちからイチジク浣腸を注入されていたのだ。