霧裡爺さんの作品

電車8



 まだ独身で、由紀子が会社勤めをしていたときのことだった。
 ある朝、寝坊をしてしまい、駅への近道をするためにさびれた公園に足を踏み入れた。
 そこは痴漢や浮浪者などが多く、いろいろと危ないウワサのあるとこで、
女がひとりで入るのはためらわれる場所だったが、朝ということもあったし、なにより急いでいたのだ。
 小走りに急ぐ由紀子は、ゴミが散乱している植え込みの中から、2本の白い棒状の物が突き出ているのを見つけた。
 近づいて見ると、それは人間の脚だった。膝から下の部分が公園の道に出ている。
 もしかしたら死体か、と恐る恐る近づき、さらに驚かされた。
 女の下半身が丸出しになっていたのである。
 生きているというのは、すぐにわかった。
下腹部が小刻みに上下しており、それとともに荒い鼻息がはっきり聴こえたのだ。
 まるで自分の恥部を晒すような姿。
いわゆる”M字開脚”に近い格好で、女は植え込みの地面に腰を下ろし、膝から下だけを道に出していた。
 しかも、膝を閉じてしまわないためか、膝の内側に1本ずつ、小さな立て札が地面に刺さっていた。
1本には「犬のフンを――」、もう一方には「ゴミを捨てないで――」と、ヘタなイラストと共に描かれていた。
 女の上半身は、ダンボールや新聞紙などの雑多なゴミが被せられていて、まったく見えない。
 一目で悪質で性的なイタズラだとわかった。
 目を凝らして見るまでもなく、女の性器はべっとりと濡れていたのだ。
それだけではない。
左右の陰唇がクリップに挟まれて糸で引っ張られて、大きく開かれている。
糸は膝の内側にある立て札に繋がれていた。勃起しているクリトリスから膣までも丸見えである。
 さらにその下、アナルの下の地面に、親指大の小さな便が転がっていた。
 汚らわしい変態女――そう、思った。
 見られていることを意識してか、女は息を荒げ、尻をもじつかせ、興奮の度合いを高めているようだった。
 その下半身を見るかぎりで言えば、若くて色が白い、魅力的な肢体だった。
 朝っぱらからなにを――と、無性に腹が立った。
かなり強い調子で女の足を蹴って、由紀子は通り過ぎた。


 忘れていた記憶だった。
 今の自分と何が違うというのか。
 もしかしたら、あの女も誰かの手で――。
 あのとき、公園を抜ける直前に由紀子は振り返った。数人のはしゃいでる声が聴こえたのだ。
 そこに小中学生風の男の子たちが、女を見つけて騒いでいるのが見えた。
 男の子たちは、女の股間を覗き込んで笑い、砂や小石のようなものを投げつけ、
木の枝で突つき、好き放題にいじめて遊んでいた。
 ざまあ見ろ、いい気味だと、あのときは思っていた。
 もっと、いじめてやればいいんだ――と、さえ思った。
 そして今度は、わたしが――。
 由紀子の背後の野次馬たちが口笛を鳴らす。
「消えろ! このヘンターイ!」
 女子高生が投げた空の小さなペットボトルが、由紀子の尻に当たった。
 げらげらと笑いが上がり、拍手まで起こった。
 わたしの番なんだ、と由紀子は思った。


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