黒い森さんの作品

復讐 一章 1



「店長、2号店の準備ももうすぐ完了ですね。」
茂野良江は社長の香川の机の上にそっとお茶を置いて言った。
「ああ、良江さん。君も本当によくがんばってくれたね。感謝しているよ。」
香川はパソコンの画面から暫し目を離した。
香川の始めたブティック・フローレンは経営が軌道に乗り、順調に利益を上げつつあった。
その2号店がもうすぐ出店間近である。良江は香川から労いの言葉をかけられて素直に嬉しかった。
「ありがとうございます。」
良江は今日までの苦難の道のりを思い出した。
 良江は幼少の頃に父親を亡くし母子家庭で育った。
家はずっと貧乏だった。
高校生の時、母親も病気で亡くなり、良江は天涯孤独になった。
高校の授業料も払えなくなり中退して働いた。
だが高校中退の良江にはろくな仕事はなく、アルバイトのような仕事を転々としてわずかな生活費を稼ぐのが精一杯だった。
 すっかり人生に絶望していた良江だったが、香川の店でアルバイトとして採用されて以来、
人生が変わった。まず何より香川という男に良江は惹かれていた。
優れた才能があると共に責任感があり、尊敬出来る存在だった。
良江は香川に認められたくて、懸命に仕事に取り組んだ。
 香川はそんな良江の頑張りを認めてすぐに正社員に採用した。
良江はますます仕事に打ち込むようになった。
そのうちにこのブティックの仕事自体にもやりがいを感じるようになっていた。
 この店で働き始めて5年、良江は香川を補佐する主任の地位についていた。
「2号店の店長はぜひ君にお願いするよ。」
「ほ、本当ですか・・!」
香川から信頼の厚いまなざしで見つめられ、良江は無上の喜びを感じていた。
「一生懸命頑張ります!必ず成功させます!」
 香川とは恋人同士にはまだまだほど遠い距離にある。だが自分を認め信頼して仕事を任せてくれた。
良江は将来もしかしたら二人の関係がもっと親密になるかもしれないと希望を抱いていた。


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