黒い森さんの作品

復讐 二章3



 「これで良かったの?」
由梨子が帰った後、良江は理恵子に約束の金を渡していた。
「ええ、ありがとう。あんなに慌ててる由梨子の顔を見たの初めてよ。いい気味だわ。」
「でも、本当にいいの?こんな事に協力してくれて。実の姉さんでしょ?」
「いいのよ。姉さんの不注意が原因の火事で私はこんな身体になったのよ。あいつも少しは苦しみを味わうといいわ。」
「でも、大丈夫かしら。すんなり返しちゃったけど。」
「きっと約束の日にまた来るわよ。でも、そんなに姉さんの事が憎いの?」
「あの女に、女として死ぬほどの屈辱を与えてやりたいのよ・・。」
 ついに、由梨子に積年の怨みを晴らせる時が来た。
話している内に良江の心には由梨子に対する嗜虐心がメラメラと燃え上がるのだった。
 理恵子を残して、一人家に帰って来た由梨子は途方に暮れていた。
理恵子を何とか救わなければならない。このまま放っておけば、理恵子は売春婦にまでその身を落としてしまうのだ。
「ああっ‥!」
由梨子は枕に顔を埋めて泣いた。
 次の日からも由梨子には忙しい社長業が待っていた。
何時ものようにテキパキと業務を片付けていったが、理恵子と良江の事が常に心にずっしりとのしかかっていた。
(やっぱりこのままではいけないわ‥。理恵子にまともな生活を送って欲しい。)
由梨子は十年前の忌まわしい火事の事を思い出した。
夜中に突然起こった火事に一人逃げ遅れた理恵子は焼け落ちた材木の下敷きになった。
命は助かったがその代わりに右腕を失った。
その後の調査で火事の原因が由梨子の消し忘れたアロマキャンドルだという事になったのだった。
あれ以来、理恵子はすっかりおかしくなってしまった。
そして由梨子を恨むようになっていった。
何もかも順調な由梨子の人生の中で、妹の事だけが由梨子の心に重くのしかかっていた。
由梨子は自責の念をどうしても消すことができなかった。
(理恵子に私の気持ちを分かって貰うまで、償わなければならないのね・・・)
由梨子は悲壮な決意を固めていった。


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