黒い森さんの作品

復讐 三章3



「社長、どうなさったんですか?」
ふと、気がつくと部下の女性が書類を持って机の向こうに立っていた。
「いえ・・ごめんなさい。何でもないわ。」
由梨子は慌ててその決裁書類に目を通した。
部下が社長室から出て行くと由梨子はまた一つため息をついた。
先週末の夜の忌まわしい出来事が由梨子を苦しめていた。
輝かしい人生を歩んできた由梨子にとってあのような屈辱を受けたのは勿論初めての事だった。
良江は一週間後にまた来るようにと由梨子に命令した。
もう二度とあんな恥ずかしい思いはしたくない。
だが、このまま妹を見捨ててしまう事も由梨子には出来なかった。
それに良江は妹のことをマスコミにもばらすわよと脅しをかけてきた。
今や若き美人社長として有名になった由梨子にとって、それは大ダメージになる事は間違いなかった。
「若き美人社長 栄光の影に犠牲になった妹」
「冷酷美人社長 見捨てられた片腕の妹は風俗店で働く」
などと勝手な記事を書かれスキャンダルになる事は間違いなかった。
(ああっ・・)
由梨子は最初から良江の存在など気にもしていなかった。
好きでもないが憎んでいる訳でもなかった。
ただ副店長というポジションが次第に不要になった時に、良江のことを考えてあげるべきだったのかもしれなかった。
良江があんなにも自分を恨んでいる事を由梨子はようやく思い知った。自分はそんなに酷い事をしたのだろうか。由梨子の心は深く沈むばかりだった。
「社長、会議始まりますよ。」
「ええ、ごめんなさい。すぐ行くわ。」
部下に呼ばれて由梨子は気丈にも笑顔を作って見せた。


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