丸岡 凛。さんの作品
【イジメ、カッコイイ】《えりさんへの手紙:2通目》(1)
【※作品の中で、いじめ、暴力、差別等を肯定する表現がありますが、あくまでフィクションと捉えてお読みください。
えりさん同意の上、送られてきたメール文面を引用しています。尚、個人情報に関わる部分は加工修正した上で投稿しています。】
人間関係は苦手だが酒席に座るのは好きだ。
“人間たち”の醜い本性が見えるからだ。
えりさんのメールが届いた日もわたしは酒宴の中にいた。
…酩酊し気が大きくなる人、はしゃぐ人、気が利く性格を演じる人、体に触れてくる人、自分の武勇伝を語りたがる人、
異性にしなだれかかる人…わたしは彼ら彼女らの醜態を、能面のような無表情で観察し、たまに愛想笑いもしつつ、独りお酒を呑んでいる。
呑まなきゃやってられない?…オマエらが言うな、と心の中で呟いた。今まで何度も死のうとしたができなかった。
わたしの1日40本の喫煙も、γ-GTP数値を4桁近くに上げる飲酒癖も、社会に適合できないわたしの、消極的な自殺願望の表れかもしれない
…もしくは単なるわたしの自堕落な性質のせいだろう。
…もっと堕落したい。誰かに身も心も弄ばれ、絶望の淵に堕とされたい。
あのいじめられた日々のように頭を空っぽにし“飼い主”にひたすら従属したい。
わたしが人の集まる場に現れるのは、新しい“飼い主”に見染めてもらう為…わたしが体型を保とうとするのは、まだ見ぬ“飼い主”に失望されない為である…
その日もわたしは、無人島にいるような孤独感の中でお酒をあおった。
そんな生産性のない妄想に浸る中、えりさんからメールが届いた。
くだらない話題と薄っぺらな笑い声の中で何度も文面を眺めては顔をほころばせていた。翌日わたしはえりさんに返信をした。
【題名】『えりさんへ』
【本文】『昨日は新年会でぐだぐだになってしまい返信が遅れてしまいました。すみません。』
『えりさんの作品やコメントをいつも拝見しながら、“えりさんならわたしの気持ちを理解してくれるかも”と勝手に思っていました。
二面性…その通りだと思います。
もしかしたら素直に支配欲や悪意を剥き出しにできる“いじめっ子側”の方がよっぽど人間的かもしれませんね。』
『わたしは肉豚の肥育を手伝った経験があります。
豚さんの世界の生存競争はとても激しく、群れの中で成長が遅い者や奇形で生まれてきた者を容赦なく苛めぬきます。
死ぬまでです。踏まれ、つ突かれ、餌を食べる時もはじかれます。人間の世界も同じかもしれません。』
『…ただ、人間の場合は餌が食べれないわけでも血が出続けるわけでもないので
“いじめられっ子側”が置かれた立場に気付くのが遅れ“死の選択権”も自分に委ねられる分、逆に残酷だとも言えます。』
【※メール続く】