丸岡 凛。さんの作品
【イジメ、カッコイイ】《えりさんへの手紙:5通目》(2)
【※作品の中で、いじめ、暴力、差別等を肯定する表現がありますが、あくまでフィクションと捉えてお読みください。
えりさん同意の上、送られてきたメール文面を引用しています。尚、個人情報に関わる部分は加工修正した上で投稿しています。】
【尚ぉ〜、おねが〜いっ英語の教科書忘れたから貸してぇ〜ん♪】
『…ある日、優さんがわたしの教室を訪ねてきました。
明るい調子で小刻みに手を振って…わたしはクラスメイトの刺すような視線を感じ、心臓が止まりそうになりました。
ぽつんと席に座るわたしの肩を【おねがい、おねが〜い♪】と揺すりいつまでもはしゃいでいます。
わたしは教室内のイヤな空気を察し、早く優さんに帰って欲しくて素っ気なくそそくさと教科書を渡そうとしました…』
【…ばちぃんッッ!!】
『…その時、絢音さんが勢いよく投げた消しゴムが、もろに優さんの額に命中しました。
あまりにも不意のことで、硬直したまま立ち竦んでいる優さんに近づき、絢音さんは甲高い声で矢継ぎ早にまくし立てました。』
【ねー、アンタ誰ぇ? 勝手にウチらの教室入ってくんなよッ!】
【“ブス”がはしゃいでるとウザイんだよねえ】
【コイツの教科書借りたいんなら“飼い主”に許可とってよね】
【みんなに謝れよ。『ブスなのにはしゃいじゃってごめんなさい』ってw】
『…優さんはわたしより引っ込み思案な人です。でも芯は強い人なのでしょう。
突然浴びせられたショッキングな罵詈雑言に対し涙を浮かべることもなく、言われるがまま深々と頭を下げ何度も謝り続けていました。
…屈辱的だったと思います。』
【はぁい、大きな声でもう一度っw】
【…ブスなのにはしゃいじゃってごめんなさい】
【ハイ、もう一度っ♪】
【…ブスなのにはしゃいでごめんなさいっ】
【ハイ、もう一度っ♪】
【…ブスなのにはしゃいでごめんなさいッ!】
【ハイっ、もう・イ・チ・ド・ッ!】
【ブスなのにはしゃいでごめんなさいッッ!!】
『…絢音さんの気が済むまで何度も何度も続きました。
わたしはその光景をぼんやり眺めながら【…優さんに申し訳ないなあ】という気持ちと
【優さん顔真っ赤…泣き出すのかなあ?もっと見ていたいかも…】という気持ちが同居していました。』
『結局優さんは涙を見せず“飼い主”の許可のもと教科書が貸し出されました。絢音さんは赤い油性マジックで“犬専用”と表紙に大書きしました…』
【※メール続く】