マルティニークの子供さんの作品

心の壊れる音がきみにきこえるか 8


 オーダーの電話を取っている最中に、事務服のポケットの中でケータイが振動した。
 「ハイ、型番CEI−HE3を20個ですね。在庫を確認して折り返しご連絡いたします。
恐れ入りますが、担当の方のお名前を、、」
 電話を終えて着信を見ると百合からだった。
中学高校と同じでよく一緒に遊んだ友達だ。大学は違ったが、連絡は取り合っている。
 すぐにでも電話したかったが、ここはオフィスで課長も在席中だ。
とりあえず仕事に区切りをつけ、トイレに行くふりをして席を立った。トイレに入ってリダイヤルする。
 「もしもしぃ、久しぶりぃ、なんだよ〜、こっちは仕事中だよ〜」
 百合とは半年ぶりの電話だ。去年彼女が結婚してからは1度も会っていない。
 「悪いね、でも緊急なんだから。あたしたちの名前がネットに晒されてるんだよ」
 「え〜〜!」と、思わず大声を上げてしまい、自分でびっくりする。耳を澄ますが他の個室に人がいる
気配はなく、ほっとした。
 「どういうことよ。あたしたちって、あたしとあんたと誰よ」
 「真辺と斎賀、あと中2のときの何人か。気がついてすぐ削除要請したけど、、」
 「で、消えたの?」
 「うん、でも1時間以上は晒されてたみたい」
 「いったい、どんなとこに!」
 百合は、ある総合掲示板の名前を挙げた。
 「2ちゃんと比べれば、見たヤツは少ないと思うけど、、」
 「で、書き込んだヤツのことは?」
 「聞けないよ、削除要請だって、他人を装って出したんだから」
 あんまり席を空けているわけにはいかないので、仕事が終わったら落ち合う事を約束した。


 あたしは中学、高校といわゆるイジメっ子だった。
自分でもやりすぎたかな?と思うこともないではないが、みんなも楽しんでいたし、
イジメられるほうもお約束で半分くらいは面白がっていたんじゃないかと思ってる。
そのころの中学のクラスメイトが百合や、真辺、斎賀たちだ。もう10年ちかく前の話で、
高校のときは男どもがやりすぎてカラオケボックスでマワシた女がカウンセリングかなんかにかかり、
数人が補導されたことはあった。でも、中学の頃は、別に問題なんか無かったはずだ。
  

 待ち合わせた喫茶店に百合は先に来ていた。
ロングのストレートヘアは相変わらずだが、顔色も悪くかなり疲れているようだ。
 「久しぶり」
 「うん、大変なことになるかもよ」 と、百合。
 「そんなに深刻なの?もう10年も前のことなんだよ、今更なんなのかしらねえ」
 「それがさ、少年犯罪のスレッドでさ、あたしたちの3コ下の中坊が逮捕されたじゃない」
 「うん、でもあれはあたしたちが卒業してからの事件じゃん。関係ないし」
 「でも同じ中学でしょ」
 「冗談やめてよ、あれは殺人だよ、殺人事件。あたしらと何の関係があるの?」
 「あの中学校は、事件前から荒れてた、こんなヒドイ学校ですって流れで、
あたしたちがイジメで女の子を自殺させたって」
 あたまが混乱し、すぐには言葉が出てこなかった。
 「え〜と、確かにあったね、自殺。中2の2学期だっけ?あれが、あたしたちのせいだっての?」
 やっとのことで思い出して、そういうと今度は百合が黙ってしまった。
 
                              9に続く。  

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