マルティニークの子供さんの作品

心の壊れる音がきみにきこえるか 9


  (8の続き)
 
 「ねえ、優子。本当に忘れちゃったの?自分のした事を」
 百合が、責めるような目であたしを見る。
 「どうしちゃったのよ、そんな恐い目して。イジメのこと?そりゃ忘れちゃいないけど、
もう10年も前の事だよ、全部覚えてるわけないし。
それに遠藤、、、ぶー子だっけ? あいつの自殺、イジメと関係あんの?」
「あなたは知ってるでしょ、遠藤が自殺したのは、弟の前でいつもみたいにイジメるって脅されたからでしょ。
そう言ったのがあなたと斎賀でしょ」
 あたしはびっくりして、逆に百合をにらみつけた。
 「冗談でしょ、くわしく覚えちゃいないけどあたしがそう言ったからなんなの?あんたは関係ないとでも
いうつもり? 今更自分だけ良い子ちゃんだったっていうんじゃないでしょうね? 
イジメてたのはあたしもあんたもクラスの他のヤツラも、みんなでしょうよ!」
 あたしから目をそらし、うつむいてしまう百合に、少しトーンを落として続ける。
 「ねえ、ネットの件であせってるかしんないけど、あたしたちは別に犯罪を犯したわけじゃないんだから。
そりゃあ、褒められたことじゃないけどさ。
胸はってりゃいいんじゃないの。
ネットなんてウソばっかりだし、無視しときゃいいのよ、ねっ」
 じっと黙っていた百合が、ようやく顔をあげた。
 「あたし、子供ができたの。たぶん女の子よ。5ヶ月だって」
 「そりゃ、おめでとう。良かったじゃない」
 「それがね、産むのが恐いの、あたし。女の子が生まれて、小学校や中学に行ったとき、
遠藤や高瀬みたいに、酷いイジメをうけるんじゃないかって」
 いいながら涙声になっている。
 「自分の子供が、あんなことされたらって、、、想像するだけで、、恐くて、そんなことしてた自分が、、
恐くて、、、眠れなくて、、、」
 完全に泣き始めた百合に、あたしは戸惑ってしまい、ただ彼女をながめながら考えていた。
 
 何を言ってるんだろう、この女は。
昔は友達だったが、こうウザイこというなら絶交したほうがいいかも。
 だいたい、当時だって今だってイジメが悪いなんて、当たり前だろう、それをさんざん楽しんできて、
いざ自分のガキがイジメられるかもって、考えただけで全否定かよ。バカな女だな。
 じゃあ最初からやるなよ。 
こんなヤツだと知ってたら中学の時、こいつをイジメてやれば良かったよ、ホント。
 

 目の前の百合を、頭の中でぶん殴る!蹴りつける!素っ裸に剥いて四つん這いにさせ、
足の指を舐めさせる。ケツを叩きのめし、性器にケータイをねじ込む! 
 想像するだけでこんなに楽しい。もうこんなヤツと付き合ってられない。
 あたしは席を立ち、百合に捨てセリフを投げつけた。
 「あんたも遠藤と同じ側の人間だったのね。子供が生まれたらちゃんと言ってあげな、
お母さんは昔イジメで一人殺しましたって、ね。 もう2度と電話しないで」
  

 喫茶店を出てすぐにケータイを取り出し、男友達にかける。
「ねえ、気分悪いんだ、今から遊びにいかない?」
 昔のことをいつまでも引きずっていてもしょうがない。今が楽しくなけりゃ、生きてる意味がない。 
あたしはそうやって生きてきたし、これからもそう生きていく。 
 

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