見た目ナカムラ中身カトウさんの作品
生きてることは罪なこと・・・? おばさん1
昨日のことが恐ろしく、一睡もできずに朝を迎えた。
冷ややかな目
突き刺さる言葉
痛みの残るぼうりょく
”ガチャッ”
いきなりノックもなしにドアが開かれた。
「起きてたのか?早く朝食作りなさい!」
おばさんは、腕を掴み上げ、キッチンに引き連れた。
キッチンに連れられたあたしは戸惑いながら周りをキョロキョロした。
AM5:00
「いいか?毎日朝5時に起きて朝食の準備。
家はパパとあたしがご飯食、7時に炊けるようにジャーの準備して、味噌汁、卵料理、サラダ。
最低はこれを用意して。
子供たちはパン食。味噌汁の変わりにスープ。
ついでに弁当3人前作って。分かった?」
いきなり言われ、整頓する前におばさんは続ける。
「7時には皆が食べれるように起こすこと。
あたしたちが食べてる間に洗濯、掃除。食器洗いが終わったら学校へ行け。」
次々やらなきゃいけないことを休みなく言うおばさん。
「学校から帰ったら洗濯入れて・・・、これ全部アイロンかけること。
買い物に、夕飯の準備、8時にはできてるように。メニューは書いとくわ。あと・・・」
家事の全部を押し付けるおばさんは、さらに続ける。
「内職準備しておいてあげる。別に学校なんか行かなくてもいいわよ。早く借金返したいでしょ?」
軽く頬を叩くおばさんの顔は笑顔だ。
「1っこでもやり残してたら、お仕置きだから!
返事は!?」
「はい・・・」
「じゃあ今から準備しなさい。もう5時半よ」
まだきて1日目、使い勝手の分からないキッチンで料理を始める。
前から家事の手伝いはしていたから米を研いだりするのはお手の物。
おばさんは、あたしの後ろに座り仕事振りを見ている。
ものの1時間で朝食の準備をおわらせ、テーブルに並べようとするが、
どこにだれが座るのかが分からない・・・
「あ、あのう・・・」
テーブルでうたた寝してるおばさんに声をかける。
「・・・なに?」
「すいませんっ。誰がどこの席ですか?料理並べようと思って・・・」
おばさんは立ち上がり、あたしの腕を掴み円を書くようにテーブルで手をうちつけながら指しながら
「パパ、サヨリ、タクマ、あたしで、レイカ」
おばさんはそのままあたしの腕を掴み、味噌汁の入った鍋を開けた。
「なに、これ作ったの?」
「はい・・・お口に合うかわかりませんが・・・?」
あたしの声が聞こえているのかいないのか、おばさんは掴んだままのあたしの腕を鍋の中に入れた。
「あぁぁぁ・・・」
余熱とはいえ、まだ熱い味噌汁。
無意識のうちにおばさんの腕を振り払いしゃがみこんだ。
「お前、まだ立場が分かってないんだな。今から思い知らせてやる」
おばさんはしゃがみこむあたしに、鍋の中の味噌汁をすべてかけた。
「あぁ〜、あ、あ、」
のた打ち回るあたしを踏んで抑えると、次にスープの入った鍋を掴んだ。
「ぁぁ、ゴメンなさい、ぁぁ。もう、しないから・・・」
「はぁ?」
さらにスープをかけ、あたしの悲鳴が上がる。
「ふっ・・・いいわねこの声」
おばさんは倒れてるあたしの髪を掴み、床に叩きつけながら話し始めた。
「いいか?あたしたちに意見をいうな。断ることも許さない!!お前は言われるまま、
命令されるまま行動しろ」
「うっ・・・うっ・・・」
髪を離したおばさんは 、手についたスープを口につけると、あたしに唾を吐いた。
「まっずぅ!!」
そのまま去っていくおばさんの後姿を見つめながら、あたしはこの先、生きていくことに光を
失ってしまったのだ。