ナナさんの作品
心の傷
次の日、学校へ向かう沙織の気持ちは重かった。
2人に謝らなきゃ…。
あたしやっぱり調子に乗りすぎてた、ゴメンって。
謝ったくらいで許してくれるのか、沙織は不安だった。
下着姿にされるということだけでも、沙織にとっては苦痛だった。
修学旅行とかの特別な場でない限り、親友の間でも『そういう話』はタブーだからだ。
だから2人が昨日のような事をしたというのは大きな怒りを意味していた。
あの後……有希と彩花は先生に言ったら許さないと告げてトイレから出て行った。
下着姿のまま置き去りにされた沙織は、しばらく何も出来ずにしゃがみこんでいたが、
やがて涙をぬぐって制服を着て、部活にも行かず帰っていた。
だから今日の朝の登校はひとりぼっちだ。
一人で歩く通学路は、やけに広くて静かだった。沙織は悲しくなる。
+ + +
その日の教室はやけに人気が少なかった。
最初に有希とすれ違ったとき、沙織は声をかけようとしたが、先に向こうから腕を引っ掴まれる。
その有希と沙織の視線が一瞬だけ絡み合う。沙織はすぐに目を逸らしてしまう。
「ちょっといい?」
声が、よそよそしかった。
「うん」
他にどうしようもないので頷いてついていくと、行き先は理科室だった。
そこには教室に見当たらなかったクラスメイトが数人いた。
その中には彩花の顔もあった。
それを見て沙織は、これから何が起ころうとしているのかわかった気がした。
男子が6人、女子は有希も入れて4人。
男子のリーダー格の岩川に両手首を掴まれ、沙織は悲鳴をあげる。
「ぃやっ、何すんの!?離してっ」
「ほら遠藤、縛れ!」
そして、岩川の親友の遠藤がタフロープで沙織の手首を水道の蛇口にくくりつける。
「痛いっ…!!やめてっ、ほどいてよ!!」
沙織はさらに悲鳴をあげるが、周りのみんなはそれに反した。
「沙織うるさい。静かにしてよ」
「そうだよ。先生来ちゃうよ」
「それ以前にあんまりうるさくしてるとガムテープで口ふざぐから〜」
「それも当然といえば当然だよなぁ?はは」
あんまり扱いがひどいので沙織も思わず閉口してしまう。
それを見て、有希がやけに明るく言い出す。
「じゃ、やっちゃおうか!?」
「おー!!何から始める〜?」
「んとね、まず足縛んなきゃ。話はそれから」
そう彩花が提案すると、先程と同じように沙織の足首が縛られていく。
蛇口には縛りつけずに、片足ずつに繋がったタフロープの両端を男子が手に巻きつけた。
「んじゃ、さっそく解剖始めよー!!」
その有希の一言で、沙織のセーラー服の前側は開かれ、スカートは捲り上げられた。
「やだぁぁあっ!!!」
男子の前で下着が露出されてしまったことで、沙織はまた声を上げてしまう。
「……うるさいよ」
彩花は、それだけいうと沙織の制服のリボンを沙織の口の中に詰め込んだ。
「ん……ん、んんっ…!」
体中の自由は奪われ、声も出せず、沙織にはもう何も出来なかった。