重城さんの作品

Mさん(想像の話)2


Jが放課後の教室に入ると、ヤンキーたちとMさんがいました。
ヤンキーたちは教室の机を動かして、実演台のようなものを作っている
ところでした。
「今だMさん、僕と逃げよう」
JはMさんの手を引っ張って、教室から出ました。
「ちょっと待ってよ」「逃げるな」「ふざけるなよ」
怖い怖いヤンキーたちがいっぱい追いかけてきました。
JはMさんの手を取って校庭に出ました。
でもヤンキーたちはもうMさんの肩に手がかかるくらいに追いついて来ました。
「もうだめ」「もう走れないよ」
「Mさん、あきらめるな、あきらめるな」
JとMさんはあきらめずに走りつづけました。
ふわっ。JとMさんの体が空中に浮き上がりました。
そのままJとMさんは走り続けました。
下を見上げると、ヤンキーたちはあっという間に小さくなり、学校の校庭も
小さくなり、町も小さくなっていきました。
とうとう日本列島、地球、太陽も小さくなっていきました。
「どこまで行くの、私たち」
「僕たちは、星になるんだよ。もういじめのない世界に来ているんだよ」
Mさんはしばらく黙りました。
Jはやさしく言いました。
「家族と会えなくなるのがさみしいのかい」
Mさんはこくりとうなずきました。
「それなら、また学校に戻るかい」
Mさんは首を強く振りました。
「それならこうしよう」Jは力強く言いました。
Jはそう言うと光の塊になって、Mさんに思い切りぶつかりました。
「痛いじゃない」
Mさんは思わず声を上げました。

目が覚めると、教室でした。休み時間のようでした。
「授業中になに居眠りしてるのよ」
顔を上げると、ヤンキーたちでした。
「居眠りしてたっていいじゃない。
どうせつまらないんだし」
Mさんは思わずそう叫んでいました。
ヤンキーたちはびっくりしたような顔をして、そのまますごすごと席に戻りました。
「僕の魂を君にあげるよ。そうすれば君は力強く生きていける。
もういじめられることはないよ。きっとね」
Mさんの心の中にJの声が聞こえたような気がしました。
「そんなことしたら、あなたはどうなるの」
「だいじょうぶ、君の中でずっと一緒だよ」

「おーい、隣のクラスのJが急に倒れたって」
「えー、うそー」「うそー、死んでるよ、J君」
Mさんが急いで隣のクラスに飛び込むと、Jは椅子に座ったまま、机を抱え込むように
して動かなくなっていました。
でも、MさんにはJの死顔が微笑んでいるように見えたのでした。


                       おしまい

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