S・Pさんの作品

再会 その6(仮)

この小説はえりさんの再開をS.Pさんがリレー小説として引きついた作品です。



 夜が来て、俺は馬場の家に行った。
昔と変わらぬ豪邸であった。
玄関のチャイムを鳴らすと、馬場が出迎えてくれた。
リビングに通され、ソファーに腰掛ける。
馬場がワインとグラス二つを持って後から入ってきた。
「それでぇ、話しってぇのは、どんな話しだぃ?」
尋ねる馬場。俺はその日にあった事を話しだした。
「虫2号のエリって、覚えているか?」
「あぁ、覚えているよぅ。あの、ピィピィ鳴いていた奴だろぅ?そいつがどうしたぁ?」
「実は、今日、偶然近所のスーパーで一瞬見掛けたんだ。
じっと俺を見つめていた。あいつがその後、どうなったか知らないか?」
「さぁな?卒業してからそれっきりだからなぁ。一々覚えちゃいねぇよ。」
「俺は、あの当時の事とか、今は凄く反省しているんだ。」
「それは、単なる思い込みじゃぁねぇのか?昔、散々な目にあった奴なんかを、
一々見つめるかぁ?普通、思い出して逃げるだろぅ?ユウの思い過ごしだよ。
それとも、またあの頃に戻りたくなったのかぁ?」
馬場の目元がにやりと光る。
「馬鹿言うなよ。俺は罪を償って更生したんだ。あの頃に戻るつもりは無い。」
俺は馬場の見透かす様な物言いに、一瞬イラっと来たが、それを紛らわせるように
注がれていたワインを飲み干した。
「そうかい。なら、真面目に生きなよ。それがお前の選んだ道だぁ。無理に思い出す事もねえよ。」
その後、酒が回りボーっとする意識の中、小野が帰国した事や、
俺達二人が殺めた少年の母親が失踪した事などを、馬場が話している。
何故、当事者でない馬場がその様な事を知っていたのか?薄れ行く意識の中でその答えを知るには、
まだ幾らかの時間を擁した。そして俺は、気だるいまどろみの中、眠りに就いた。
 翌朝、二日酔いなのか、ガンガンする頭を堪えながら起き上がると、そこは馬場の家の客間であった。
多少ふら付きながらリビングへ行くと、馬場が食事を用意して待っていた。
「おはよう。お目覚めは如何かな?」
「気持ち悪い・・・」
昨夜の酒が安かったのか、呑み過ぎたのか、胸焼けが激しい。
すると馬場は錠剤の入ったビンと水を持ってきた。
それを飲んだ俺は、旧友に別れを告げ、馬場の家を後にした。
別れ際、玄関の扉に腕を持たれ掛けさせた馬場が声をかけた。
「また何かあったら来いよ。これを期に・・・」
最後の方は聞き取りにくかったが、
「あぁ。」
とだけ答えて馬場の家を後にした。
 家に帰り、ボーっと煙草を吹かしながら、昨夜の会話を考えていた。
俺達がなぶり殺しにした筒井少年の遺族が失踪したらしい。
院を出てから一度も訪ねていなかった。
否。
訪ねられなかった。
墓には幾度となく赴いたが、家族に会おうとは思わなかった。
会ってくれないと思っていた。
だが、逃げてはいけない。
殺されても仕方ない。
俺は覚悟を決め、筒井宅を訪ねた。
確認の意味も含めて。


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