山女さんの作品


黄金の月日(最終回)


10
「軽蔑したでしょ」
 寝袋の中でメグミは言った。
「少し…」
 私は正直に言った。
「ありがとう」
 メグミは言って泣き始めた。
「あなたは、ケイコはここにいちゃだめ。明日逃げて」
 私は自嘲の笑いをもらした。
「どこに逃げたって、私はおもらしケイコだし、万引きだって、誰も私の言うこと
信じてくれないし、ここで犬してる方が楽かも知れない」
 メグミは大きく深呼吸して、
「あの万引きは、3年の罠なの」
「え?」
「学校であなたの鞄に化粧品入れて、万引きしてるって店員に言ったのよ」
 頭に雷が落ちたように驚いて、私は何も言えなかった。
「店員も、頭から疑ってるから、店内ビデオも見なかったんでしょ。
それを見ればあなたが万引きしてないってわかると思う。
それに、レジポスでわかるんでしょ、その日なにが売れて、なにが万引きされたのか」
 はめられた!
 私は怒りに震え、3年を一人づつ殴り殺してやろうかと思った。
 私が、私が、どれほどの地獄をのたうったと思っているのか!
「明日の朝、逃げて。でも、今晩だけは、こうやっていて」
 メグミは私に体を預けてきた。柔らかい胸が私の胸に押しつけられ、
キュンとなった。
昼間の愛撫を思い出して、私はメグミを抱きしめた。
「ううん、逃げない。私は私の意志でここに残る」
「どうして?」
「あなたがいるから。あなたと同じ地獄を、私も見てみたいの」
「変態ね」
 私たちは唇を重ねた。
 それからの夏休み、そして高校生活は、私にとって黄金の月日となった。

 作者より:読者からのお手紙を元に作ってみました。いかがでしたか?

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