ゾロさんの作品


すばらしい女性になるために(3)


 <ああ、どうしよう。>
 「聞こえねぇのか!さっさと来る!」
 「はい!」
 <ああ、怖いよ〜>
 もともと目の前に立たされていたので、3歩も進むと沙紀の手の届く位置に立つ事になる。
 久美は、得体の知れない恐怖で気をつけの姿勢は崩すことができない。
 「はっ!あの」
 沙紀が、いきなり久美の陰毛を撫で付けてたのだった。
無理やり脱がされて乱れた陰毛を指で整えるように。
 「動かない!」
 「はい!すいません!」
 思わず腰を引いてしまった久美は、叱責されて気をつけの姿勢に戻った。
おびえのせいか心持ち腰を突き出す姿勢になった。
 「手入れしてんのね。」
 沙紀はものめずらしそうに顔を近づけて毛をひっぱたりビキニラインに指を這わせて遊
んでいる。
体は立派でもまだまだ子供の沙紀にとっては、大人の体は興味深い。
 <くすぐったい。おもちゃにしないでよ〜。でも、言えない。(泣)>
 「後ろ向いてみて。」
 <え?お尻見せろって言うの?ああ、この子たちの命令には従わなきゃいけないのね。>
 久美は、思い切って体を反転させて沙紀に背中を向けた。
 ぱち〜ん!
 「いたっ、あ〜ん」
 むき出しのしりをビンタされた。
 「返事しろよ!なに勝手に後ろ向いてんだよ。」
 「すみません!」
 <もう、なんでもいい!もう逆らわない!でも、くやしい>
 沙紀は、目の前の久美の尻を美しいを思う反面妬ましく思った。
自分の男の子のような小さな尻が恥ずかしく思えてきた。
 久美の美しい体がうらやましく、愛しく、また憎憎しく思え、胸が苦しくなる。
動悸が激しくなる。
あこがれと憎悪が、水と油を無理やり混ぜたような白濁した感情が沙紀を支配する。
美しいお姉様に愛して欲しいという感情と美しいこの年上の女を滅茶苦茶にして
しまいたいという感情が激しくぶつかり合う。
 「こっち向いて!」
 「あ、はい」
 久美は、沙紀のそんな感情に気づくはずもなく、鬼の命令にしぶしぶ従う。
 沙紀に向き直った久美は、沙紀が久美の股間に見入ってるのを見て、思った。
 <この子、女の体見てそんなに面白いの?レスビアン?>
 「脚、開いて!」
 「はい!」
 「もっと!」
 「はい!」
 肩幅ほど脚を開かせて、手を入れてきた。
 <あ、何すんの?くすぐったい!>
 「じっとしてろ!」
 「はい!」
 「いたい!」
 沙紀は、久美の下腹部を乱暴にかき回して、久美が濡れていないことを確認した。
 激しい動悸がまだおさまらない沙紀は、少し震えた声で、久美を元の位置に戻る様
に指示した。
同時に顔が真っ赤になるくらい恥ずかしく、落胆し、自分に憎悪感を感じ、そのまま、
その憎悪感を久美に向けてしまった。
片思いを打ち明けて、軽く一蹴されてしまったような絶望感、と後から追いかけてくる憎悪。
許せないと思った。
 久美にとっては、まったく迷惑な話ではあるが・・・



 脱衣所の中から話し声が聞こえて、しばらくすると、1年生たちが風呂を終えて出てきた。
 「高田先輩、お待たせしました!」
 「あ、ああ、出てきたか。」
 現実に引き戻されて、沙紀は少し狼狽しながら、ベンチに座ったまま動けなかった。
 「久美、風呂入いんな!」
 1年生の声に助けられた思いの久美は脱衣所の中に入ろうとした。
 「黙って入いんのかよ!」
 1年生に頭を叩かれて、
 「あ、すいません」<あ〜ん、頭叩かないでよ〜>
 「ありがとうございます。23歳の後輩は最後にお風呂に入らせていただきます。」
 耳打ちされたとおりにお礼を言って、脱衣所に入ることが許された。
 「高田先輩、失礼します。」
 1年生たちは、濡れた髪でお辞儀して自室へ向かった。
 沙紀は、思っていた。どうしてこの1年生たちは、ああも簡単に年上の美しい女性を
小ばかにし、服従させることが出来るのだろうかと。
 久美に対して、妙な気分になったことを恥じながら、吹っ切らないと自分もこの1年生
たちに服従されてしまうのではないかと、説明のできないいやな感情に苛まれてしまった。
 「1年待て!今から風呂掃除しろ!」
 自室で帰ろうと階段を上ろうとしていた1年たちは、きょとんとした顔をしている。
 「でも、先輩、今、久美が入ってます。」
 「いいから掃除しろ!先輩の言うことが聞けねぇのか!」
 「はい〜!」
 沙紀は、真っ赤な顔をして戻ってくる1年達を睨んでいる。
 沙紀は、気持ちのバランスを失っている。
 <久美に対して、1年達より残忍に振舞わなければ、ここで久美への憧れを打ち消して
しまわないと・・・>
 浴室にどやどやと1年生達が入って来て、シャンプーの途中の久美は、
何が何やらわからず体を小さくした。
 「いや〜!何〜!」
 「そうじするの!先輩の命令だから悪く思わないでね。」
 「だって、まだ入ってます。」
 「わかってるって。先輩の命令なの!」
 「あ〜ん、目が見えない。」
 「しょうがないわねぇ。ちょっとホースで水かけてやって。」
 「え?水はいや。きゃっ!つめた〜い」
 「ほら、早くすすげよ!ほらほら。」
 「あ〜ん、やめてよ〜」
 「やめてくださいだろ!ほら、早くしろよ。よし、きれいになった。」
 「あ、まだ体洗ってません。」
 「いいよ、もう。」
 「汗かいたし」
 「わかったよ、ほら洗ってやるよ。デッキブラシだけどね。(笑)」
 「いたい!いた〜い。いや〜!いいです。いっ、ごめんなさい。もういいですぅ。」
 「なら、最初から言うこと聞けよ!」
 「すみません。え〜ん、え〜ん。」
 「また泣いちゃったよ。(笑)久美!おまえじゃま。服着てこい!」
 「はい!、ひっく、う〜、ひっ」
 脱衣所には、沙紀が待っていた。久美をバスタオルでくるんで拭いてやる。
 「よしよし、おまえまた泣かされてんのか。(笑)」
 すっかり従順になって、涙に暮れる年上の美しい久美が可愛く思える感情を
抑えることができない。
バスタオル越しに尻の間や下腹部の感触を楽しんだ。
 久美は、それどころではなく、やさしくされることで安堵する気持ちで精一杯であった。
 バスタオルを体から取り去り、濡れた髪を拭いてやる。
 目を閉じて顔を上向き加減で身をまかす久美の少し開いた唇を見て、
沙紀は心臓が張り裂けんばかりである。
 後輩の手前、久美の唇に吸い付きたい感情を抑えながら久美にささやく。
 「震えてんじゃん、寒いの?」
 子犬みたいに震えている久美を見て、めまいがしそうなほど可愛く思えた。
 「はい、寒いです。」
 沙紀は、バスタオルで体を包んで久美を引き寄せた。身長の関係で、久美が沙紀の胸に
顔をうずめる形になる。
 「あ、先輩!する〜い!」
 「な、なんだよ!」
 「先輩だけ、いい子になってる。」
 「うるさい!とっとと掃除しろ!」
 「はい!」
 いきなり現実に引き戻されて、恥ずかしいところを見られてしまった気もして、感情と
はうらはらに久美を引き離して、
 「いつまで甘えてんだよ。さっさと服着ろ!それとも裸見られてうれしいのか?」
 「あ、はい!すみません。ありがとうございました。」
 <ああ、沙紀さんやさしくてうっとりしてたのに。
何か本当に先輩みたいな気がしてたのに、ひどい>
 沙紀の方が、断腸の思いで久美から離れたことに久美は気づいていない。



 食堂で恒例のミーティングが行われている。今日の練習の反省や、フォーメーションの
確認が主な議題だった。
 センターの美香子のブロード攻撃を生かすためのセッターとのコンビネーションを詰め
た後、エース的な存在のレフトの沙紀の積極的なバックアタックの議題に移った。
 「沙紀には、後ろにいても常に攻撃に参加してもらいたいと思ってる。」
 美香子がホワイトボードに矢印を書き入れながら沙紀の顔を見た。
 「沙紀!わかってる?」
 「・・・・・」
 「沙紀!」
 「はい!え?はい」
 「沙紀、どうしたの?」
 「いえ、すみません。」
 <ああ、久美のこと考えてた。どうしよう>
 「あんたらしくないわねえ。たるんでるわよ。」
 「はい!すみません!」
 「しっかりしてよ、久美の面倒も頼もうとおもってるのに。」
 <え、久美の?>
 不意打ちを受けた沙紀は、しどろもどろになって、
 「はい、久美は私が何とかします!」
 「(笑)沙紀、何言ってんの?」
 「はい、すみません。」
 「監督!(笑)沙紀、壊れてます。(笑)」
 美香子は監督と目配せしながら、すべてお見通しみたい。
 「あ、あの、そういう意味じゃないです。」
 あわてて、沙紀が言うのを制止して、美香子が言う。
 「あ、いいのよ。ふふ、どういう意味か知らないけど、久美のサポートは任せるから。」
 沙紀は、顔から火を噴いたように真っ赤になって、言葉がでなかった。
 「よし、今日のミーティングはおしまい。」
 監督の一声で沙紀は救われた思いだった。
 「1年と久美は食事の準備するように!」
 「はい!」
 「解散!」


つづく

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