ゾロさんの作品

班長には逆らえない


<2>

 それから、1ヶ月後、各部、班別、個人別の成績グラフが張り出されました。
 佑子ちゃんの中部がトップで、1班もトップ、佑子ちゃんも全体の半分くらいの順位の
成績をあげていました。
 朝礼で、社長から褒められて、喜んでいる佑子ちゃんを見て、私は、少し嫉妬しました。
 だって、私より成績上なんだもん。
 私の所属する、北部は、最下位、3班も最下位、福村さんと私の成績がなかったらひどい状況でした。

 その日、福村さんと例によって居酒屋に行って、佑子ちゃんの話題になしました。
「福村さん、佑子ちゃんの成績すごいですよね?」
「うん、新人にしては、すごいよね。どうしたんだろうね?」
「信じられないですよね?」
「美佳ちゃん、本当は、薄々わかってるでしょう?」
「あ、はい、そうですよね?普通にやって、あんな成績残せるわけないですよね?」
「私の口から言わせようとしたの?美香ちゃん?」
「あ、すみません。そうじゃないですけど、この前、SEの男の子に対する態度で何となく、
そうじゃないかなって思いました。」
「どういうこと?具体的に言ってみなさい?美佳?」
「先輩、意地悪なんだから。そのものずばり、色仕掛けですよ。
零細企業のおやじ達にあの色気で迫ったら、いちころですよ。」
「ははは、でも、零細企業のおやじって、大切なお客様に対して失礼よ。」
「そうですね。気をつけます。」
「ははは・・・」

 福村さんと、のんきに酒の肴にしているうちは、よかったんですが、佑子ちゃんの成績は、
その後も伸び続けました。
 掴んだ顧客は、がっちり離さず、次々に新規顧客を開拓して行きました。
 佑子ちゃんすごい!って言ってる場合じゃありません。
 福村さんと私は、あせりました。
 どんなに頑張っても、佑子ちゃんには、かないません。
 とうとう、佑子ちゃんが個人トップの成績をあげました。
 最近の佑子ちゃん、颯爽としていて、貫禄がついて来たみたいに見えます。
 事務所では、相変らずお行儀は悪いのですが、先輩達も文句言えません。
 おまけに雑用を先輩にやらせるようになりました。
 言葉遣いは、丁寧なんですが、断れない先輩は、くやしそうにコピーしたり、集金のお使いに出されています。
 その後も、佑子ちゃんの成績は、伸び続けました。
 色仕掛けの営業だと、陰口を叩かれたりしましたが、成績を残した者が勝ちです。



 佑子ちゃんが入社して、半年が経過した日の朝礼で人事異動が発表されました。
 なんと、佑子ちゃんが、私達を飛び越えて昇進してしまったのです。
 成績が成績なので、文句は言えませんが、くやしいです。
 佑子ちゃんが私の上司になったのです。
 微差ながら、万年最下位の北部3班の班長に抜擢されたのです。
 社長から、建て直しを期待されてのことだそうです。
 元班長の小夜子さんは、責任を取らされて、平に降格です。可哀そうです。
 他人のこと心配する余裕はありません。
 福村さんと、私は、顔を見合わせて暗くなってしまいました。
 あの、お行儀の悪い女の子の部下になってしまったんですもの。

 佑子ちゃん、あ、いえ、佑子さんが元いた中部1班の人達は、さぞかし安心したことだろうと思います。
 ああ、それにしても最悪です。
 この会社に入って初めての憂鬱です。

 朝礼の後、席替えがあって、班長の席に佑子さんがつきました。
 社長が来て、北部3班のみんなに言いました。
「みなさん、新しい班長のもと、頑張って、成績をあげてくださいね。
坂井さんは、みなさんの中では、一番若いけど、実績はみなさんもご存知の通り、ずば抜けています。
坂井さんの営業ノウハウを吸収して、成績をあげてください。」
「はい」
 みんな、憂鬱だけど、元気に返事はしました。
「じゃ、坂井さん、部下にご挨拶して?」
「はい」
 佑子ちゃん、いえ、佑子さんは、北部3班のみんなを見回して、満足そうに言いました。
「新しく、北部3班の班長に任命されました。坂井です。
私は、みさなんのたるんだ空気を一掃するために来ました。
びしびしやります。一人ずつ、個人的に教育していきます。
覚悟はよろしいですか?」
「・・・・・」
 一同、引いてしまいました。だって、引いちゃいますよ。みんなげんなりです。
「わかったの!!!」
「はい!」
 みんな、佑子さんの勢いに押されて、思わず返事しちゃいました。屈辱。
「じゃ、よろしくお願いしますね?」
 社長は、満足そうに2階に上がっていきました。
 私たちは、社長を見送って、椅子に座ろうとしました。
「待ちなさい!まだ、話は終わってないわよ!」
 みんな、びくっとして、また立ち上がります。
「万年最下位の班は、これだもんね。お前達たるんでるよ。私が、鍛えてあげる。」
「・・・・・」
 みんな、唇を噛んで俯いています。頭にきます。
 佑子さんはだけ、椅子に座って、みんなの顔を見回しています。
 ちょっと前まで、へらへらしてたくせに・・・
 色仕掛けで成績あげたくせに・・・
「まだ、わたしは、お前達の名前覚えていないの。自己紹介して!」
 佑子さんは、あごで、小夜子さんに促しました。
「木村小夜子です。よろしくお願いします。」
「あなたが元班長?だめじゃん、平に戻っちゃって。」
「はい、すみません。一所懸命頑張ったんですけど、うまくゆかなくて・・・」
「小夜子?一所懸命って、無駄に頑張ったってだめなのよ?わかる?」
「はい、すみません。」
「小夜子?スカート長くない?平になったら、スカート短くしなさい?」
「あ、はい、今日帰って短くしてきます。」
「ばか、今やるのよ。ベルトのとこ3回巻けば10センチくらい短くなるわよ。
ほら、やってみ。」
「は、はい・・・」
 小夜子さん、かわいそう・・・っていうか、佑子さん、ひどい!
 小夜子さん、泣きそうじゃん。10歳も年上の人によく、そんなことできるよ。
「ほら、できたじゃん。小夜子、きれいな足してんじゃん。もう2巻きしてみ?」
 他の班や、部の人達は、どきどきしながら、見ないフリしながら、気にしてます。
 小夜子さん、さらし者だよ。
 小夜子さんも文句言えばいいのに、また短くしちゃった。
「ははは、パンツ見えそうね。いいよ。後で、顧客まわりにそのまま連れてってあげるよ。喜ばれるよ。」
「・・・・・」
 小夜子さん、泣いてる。
「次、お前!」
 福村さん、頑張って・・・
「あ、はい、福村郁子です。よろしくお願いします。」
「ああ、あなたは、今の調子で頑張ってね。」
「はい、ありがとうございます。」
「そのうち、個人的に教育して、もっと成績伸びるようにしてあげる。」
「はい、ありがとうございます。」
 福村さん、顔が真っ赤。くやしいよね。
「じゃ、次!」
 私だ。佑子さん見ないで・・・
「ま、正木美佳です。よろしくお願いします。」
「ん、美佳もまあまあの成績ね。今の成績は維持して頑張りなさい。」
「は、はい。ありがとうございます。」
 うわあ、きつい、屈辱〜。
「もちろん、個人的に教育はするけどね。」
「はい、よろしくお願いします。」
 くやしくて、涙がでそうだよ。5つも年下の小娘に教育されるの?
「じゃ、びしびしやるからね。頑張りなさいよ!」
「はい」
 反射的に返事をする私たちが情けない。上司だからしょうがないか・・・

 午後になって、北部3班のお客様に引継ぎとか、新任のご挨拶やらで、
佑子さん、小夜子さんを伴って、外回りに出かけました。
 車名入りのピンクの軽自動車を運転するのは、小夜子さんです。
 佑子さんは、助手席でふんぞり返っています。

 夕方になって、二人は、戻ってきました。
 え?小夜子さんのスカート、出る時よりまた短くなってます。
「まったく、お前は愚図なんだから。」
 って、小夜子さん、スカートの上からお尻を叩かれてます。
 小夜子さん、顔を真っ赤にして、俯いています。
 あれ?小夜子さん、泣いてたみたい。目が腫れてる。
 どんなことされたんだろう?小夜子さん、可哀そう・・・
「小夜子!これ、早く手配しときなさいよ!これも、版下確認して!」
「はい」
「小夜子!もう、子供迎えに行く時間でしょ?てきぱきやりなさいよ!」
「はい・・・すみません・・・」
「もう、ほんとに愚図なんだから。」
 泣きそうな顔をして、ぺこぺこ頭を下げて動き回る29歳の小夜子さんに、
19歳の上司が命令する光景を他の社員は、どきどきして、見てみぬフリをしながら見守っています。
 自分は、こんな仕打ちはいやだと思って見ているんだと思います。
 私だっていやです。
 でも、小夜子さん、可哀そう・・・
 小夜子さん、比較的給料のいいこの職場は、離れられないと思います。
 借金返済もあるし、ぎりぎりで頑張ってるので、この屈辱に耐えてるのです。
 できれば、代わってあげたいですけど、これは、いやです。できません。
 ごめんなさい、小夜子さん・・・

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