ゾロさんの作品

班長には逆らえない


<3>

 福村さんと居酒屋で一杯やっています。
 二人とも元気がありません。佑子さんの件で憂鬱なのです。
「屈辱ですよね?年下の佑子さんに命令されるのって・・・」
「耐えられない!くやしいよ。でも、美佳、もう佑子ちゃんから佑子さんになってんのね。
対応できてんじゃん。」
「だって、上司なんですもん、ちゃん付けは、さすがにできなくなっちゃいました。」
「美佳は、そうやって、年下の上司に媚売って、可愛がってもらいなさいよ。ふんだ。」
「やだ、福村さん、そんな言い方しないでください。」
「ごめん、ごめん。なんか、いらいらしちゃってね。」
 はぁ〜
 私たち、大きなため息ついて、グレープフルーツサワーのグラス見つめちゃったりして、
盛り上がりません。
「小夜子さん、可哀そうでしたよね?」
「ほんと、見てるこっちもくやしくて震えちゃったわよ。」
「もっと、やさしくできないんですかねえ?」
「あの子、サディストなんじゃないの?」
「え〜?SMのSですか?」
「10歳も年上の小夜子さんにあんな仕打ちできるのって、普通じゃないわよ。」
「・・・ああ・・・佑子さんに叱られたらどうしよう・・・」
「はぁ〜・・・」
 また盛り下がっちゃいました・・・。
「そろそろ、帰ろっか?美佳?」
「はい、盛り上がりませんもんね。」
 私たち、帰ろうと、残りのお酒を飲んでました。

「あら?郁子?美佳?こんなとこで飲んでるの?」
 げ!噂の佑子さんです。
 一緒にいるのは、太田紀子さん(22)。
 紀子さん、佑子さんと同時に南部2班の班長に昇格されました。
「ここ、空いてるわよね?」
 二人は、私たちのテーブルの空いてる席に付きました。
 私たちは、唖然としています。
 佑子さんは、店員を呼んで、飲み物を注文します。
「あれ、もう空じゃない?あなた達もたのみなさい?」
 こんなところに来てまで、命令されるの?
 帰ろうと思ってたのに・・・
 結局、おかわり頼んでしまいましたけど・・・。
「乾杯しましょ?」
 佑子さん、楽しそうです。そりゃあ、楽しいでしょうよ。班長になったばっかりだもん。
「かんぱ〜い!」
 つまんない・・・でも、逆らえない・・・年下の佑子さんに、仕事でいじめられたくないもん。
「彼女、太田紀子さん。知ってるわよね?」
「はい」
「自己紹介しなさい?郁子から。」
 く、くやしい。郁子さん、顔真っ赤です。お酒のせいじゃないです。
「あ、あの、福村郁子です。北部3班の所属です。よろしくお願いします。」
「よろしくね?郁子。」
 福村さん、年下の紀子さんから呼び捨てにされて、少し震えてるみたいです。
「郁子?あなたの上司は、誰かしら?」
「え?あ、坂井班長です。」
「佑子、わざわざ言わせなくても知ってるわよ。あなたの部下だってこと。」
 福村さん、限界です。目に涙いっぱい溜めて我慢しています。
「福村さん、大丈夫ですか?」
 私は、おしぼりを福村さんの額から目元に当てて、涙を隠しました。
「すみません、福村さん、気分が悪くなったみたいです。トイレ行ってきます。」
 私は、年下の上司に断わって、福村さんをトイレに連れて行きました。
 トイレに入ると、福村さん、私に抱きついて、わんわん声を上げて泣き出してしまいました。
「美佳〜〜〜、くやしいよ〜〜〜!」
 私も泣きたくなりました。

 ひとしきり泣いた、福村さん、少し落着いたけど、このまま飲み続けることはできそうもありません。
 席に戻って、佑子さんに言いました。
「あの、福村さん、具合悪いので、連れて帰ります。すみません。」
「え?帰っちゃうの?二人とも?」
「え、ええ・・・」
「郁子?一人で帰れるでしょ?」
「あ、はい・・・」
「美佳は、残りなさいよ。」
「え、でも・・・」
「大丈夫よ、美佳。」
 え?そんなぁ・・・福村さん一人で帰るの?
「大丈夫だってさ。美佳は座りなさい。」
「は、はい」
「郁子、気をつけて帰りなさい?」
 福村さん、佑子さんの声にこくりと頷いて、帰って行きました。
 帰る、いい口実ができたと思ったのに・・・

「次は、美佳の自己紹介よ?」
 佑子さん、お酒も少し回って、楽しそうです。
「はい、北部3班の正木美佳です。よろしくお願いします。」
「よろしくね?美佳。」
 紀子さんにまじまじと顔を見られて、思わず視線を逸らせてしまいました。
「美佳は、歳いくつ?」
「24です。」
「私より上なんだ〜。2つ上だね、美佳。」
「はい・・・」
「私なんか、5つ違いだよ。」
 佑子さんが楽しそうに言います。
 目の前の自分の部下は5つも年上なのよ、って自慢してるみたいです。
「班長、歳のことは言わないで下さい・・・」
「いいじゃない、別に・・・歳は歳、部下は部下よ。それに、班長ってやめてくれな
い?」
「あ、すみません。なんとお呼びすれば・・・」
「佑子さんでいいわ。坂井さんじゃ、ちょっと硬いからね。」
「はい、佑子さん。」
「紀子も、紀子さんでいいわよね?」
「うん、いいわよ。でも、美佳、辛いね。年下に呼び捨てにされて、年下をさん付けしなきゃいけないって。
でも、部下だから仕様がないか。ははは。」
 紀子さん、意地悪です。わざと屈辱的なこと言って、年上の私をいじめています。

「美佳、揚げ出し豆腐。」
「はい、すみませ〜〜〜ん!揚げ出し豆腐くださ〜〜〜い!」
「美佳、ビール」
「はい、すみませ〜〜〜ん!ビールお願いします〜〜〜!」
「美佳、空いた皿、そっちに並べて!」
「はい」
 年下の二人の上司は、私を召使のように扱います。

「あ〜ん、落としちゃった〜。美佳、食べて。」
 佑子さん、揚げ出し豆腐を口に運ぶとき、滑らせて、テーブルに落としてしまいました。
 それを、私に食べろと言っています。ひどすぎます。
「え?落としたもの食べられません。」
「もったいないじゃない!食べなさいよ!」
「でも・・・」
「食べ物、粗末にしちゃだめじゃん!食べて!」
「はい・・・」
 しようがなく、箸でつまんで食べました。少し涙がこみ上げてきました。
「おいしい?」
「あ、はい・・・」
「きゃはははは・・・」



「紀子、飲みなおさない?」
「いいよ。美佳も行くでしょ?」
「え?私は、そろそろ失礼します。」
「いいじゃん、美佳〜。明日休みだしさ〜!」
「・・・・・」
 少し酔った佑子さん、しつこいです。え?佑子さん、未成年です。お酒飲んでいいの?
 一刻も早く、この二人から開放されたいのに、かんべんしてって感じです。
「私の部屋行こ!泊まってっていいからさ〜!」
「え、でも、今日は、しつれ・・・」
「上司の命令が聞けねえのかよ!」
 佑子さん、完全におやじです。道行く人が、こっち見て笑ってます。

 紀子さんが、タクシーを止めて、佑子さんを押し込みました。
 やっと開放されると思った矢先、
「ほら、美佳も乗って?」
「え?私は・・・」
「乗りなさい!」
「はい・・・」
 佑子さんと紀子さんに挟まれて、タクシーに乗りました。なんだか、犯人が連行されているみたいです。

メニューへ 妄想小説へ 次へ進む

動画 アダルト動画 ライブチャット