どらごんさんの作品

性奴系図外伝(藤田浩二篇)(改定判)


第6章  淫魔たちの宴(前編)



山野建設幹部研修の宴会の当日になった。
その日は午後から山野建設の部長以上の幹部が集合している。
今後の事業戦略や部下の育成方法などに関する研修が始まっていた。
そして、夜の7時から宴会場で宴会を行うことになっていた。
悟は朝から研修の準備で大忙しであった。
総務部員を指揮して、研修資料のコピーやスケジュール表の準備などを進めている。
夜の宴会は、総務部主催とはいえ、部長の悟のみで準備することにしていた。
部下から手伝いを申し出る者がいたが、悟はにこやかに笑ってその申し出を断っていた。
午後の研修では、「会社規則の説明」という題で、悟も1時間ほど講義を行った。
講師として受講生の部長や役員を見ると、いつもよりはなんとなく落ち着きがないように思えた。
やはり、夜の宴会のことが気になるのであろうか。
すでに、宴会に圭子夫人がコンパニオンとして参加するということは噂になっているようだった。
社内の噂では、浩二が部下との酒の席で圭子の性奴ぶりを吹聴していることもあり、
圭子がさまざまな調教を山野邸で受けさせられているということになっていた。
噂に尾ひれがつき、総務部長の悟までが直接、圭子に鞭を振るって虐待を加えたという話しになっていた。
悟は、冗談交じりに真偽を尋ねてくる先輩社員に対しては笑いながらもその噂を否定してきていた。
悟の前に座っている部長や役員たちも悟の講義にどこか上の空である。
悟自身も夜のことを考えると、規則の説明をする口調に歯切れよさがなくなり、時折口ごもったりもした。

昨日の夜に、数週間振りに山野邸を訪問した。
今度は瑠美に呼ばれたのである。
明美も含めて三人で宴会に向けた打ち合わせを行った。
瑠美はいたずらっぽい瞳で悟を見ながら、悟の印象がだいぶ変わって来たと言った。
「なんていうのかな、お兄ちゃんは少しえらくなったような気がする」
「僕は前から少しも変わっていないよ。瑠美ちゃんの思い違いじゃないのかな」
悟には瑠美の言う意味が理解できなかった。
意味を再度尋ねると、瑠美は上目使いで悟を見て微笑を浮かべるのみであった。

研修が午後6時半で終わった。
これから宴会場への移動である。
「皆さん、お疲れ。今日はもう帰っていいですよ」
悟は部下の総務部員を解散させた。
「よお、川上さん。いよいよ、お楽しみだよなぁ」
海外部長に昇格したばかりの始が悟に話しかけてきた。
「えっ、何のことです」
始より数歳年下の悟はとぼけた。
だが、始はこれから何が起ころうとしているかもう知っているよと言わんばかりである。
「川上さん、一人じゃ大変ですから、私は手伝いで残りますね」
総務部員の中井鶴代が悟に有無を言わせないという語調で言い切った。
年上の鶴代に対しては、上司といえどもあまり強い態度には出られず、悟はしぶしぶ了承した。
「中井さん、参加するのはいいですが、何が起こっても驚かないでね」
悟の言葉に鶴代はきっぱりと頷いた。

宴会場で黙々と準備作業をしている悟に連絡が入った。
明美からである。たった今、到着したとのことだった。
とりあえず、明美と圭子には宴会場の隣の和室に控え室として入ってもらうことにした。
娘の静江も付いてきている。
圭子も静江も清楚な和服を着用していた。

「圭子さん、お久しぶりです」
悟は控え室に入ってきた圭子に挨拶をした。声がわずかに上ずった。
圭子は、軽くお辞儀を返した。静江は圭子の後ろで少し震えている。
「本日はわざわざすみませんね」



「いいえ」
圭子の声もかすかに震えていた。
だが、久しぶりに悟に会えるのはやはりうれしい。
「圭子、準備はいいのかい」
圭子の首輪のリード紐を握っている明美が圭子の背中を平手で強く叩いた。
圭子がこれから起こる被虐の舞台を想像して、身体が熱くなってくる。
「圭子さん、とりあえずこれが本日のプログラムです」と悟が紙を手渡した。
すでに明美から聞いていたとはいえ、圭子は本日の恥辱の淫芸の書かれたプログラムを確認した。
それにしても、悟に宴会を仕切らせるとは、浩二もなんと意地が悪いことであろうか。
圭子は悟に対し、同情する気になっていた。
ところが、突然、明美が笑い出したのだ。
「それにしても、川上様は瑠美お嬢様も感心していましたが、サディストとしての成長ぶりがすごいですね。
このプログラムのほとんどは川上様が決められたんですから」
圭子は、「うそ」という目で悟を見た。
悟がその視線をすぐに外す。
「今日は、圭子さんの今まで教わってきた芸を見せてあげて、皆さんをたっぷりと楽しませてください」
悟の声が冷酷に響いた。
圭子は悟をなじるような目付きで見た。
「あら、奥様はもう奴隷なんだから、きちんと芸を見せるのは当たり前ではないんですか。
それに、部長に対してそんな反抗的な眼をするなんて。ご自分の立場をわきまえてくださいね」
悟の横にいつの間にか鶴代が来ていた。
かつて自分に平伏していた鶴代が非難めいた言葉を吐いたことに、圭子は動揺した。
悟は視線をはずしつつも無言であった。
会場の方では、すでに社長の浩二の挨拶と乾杯が終わり、すでに宴会が始まっていた。
徐々に騒がしくなってきている物音を襖の外に聞こえてくる。
悟は抑揚のない声で、静江に会場に行くように告げた。
躊躇する静江の背中を押すようにして、鶴代が会場へ通じる襖を開けた。
「おおーっ」
会場がいっせいに盛り上がった。
「早くお座敷に行きなさい」
鶴代がすぐにまた襖を閉めたので、静江が宴会でどのように扱われているのかは分からないが、
あちこちで「静江ちゃん、静江ちゃん」という呼び声がしていた。
酔漢の中にもまれる娘を想像して、圭子の胸は痛んだ。
悟の眼には瑠美や明美のような嗜虐の炎がちらちらとではあるが、ゆらめいているのが圭子に感じられた。

(悟はとうとう瑠美に洗脳されたんだ…………)と、圭子は思った。
ただ、どの程度の洗脳であろうか。
また再び悟が昔のような純朴な心を取り戻すようなことはあるであろうか。
もしかすると、悟は慶蔵や瑠美に半ば脅かされるようにして、サディストの世界に引き込まれたのかもしれない。
圭子は悟の心の片隅にでも自分に対する気持ちが残っていてくれることを願っていた。
たとえ残っていたとしても、性奴隷となった以上、どうすることもできないのはわかっていたが。

廊下に通じる襖が開いた。
なんと慶蔵の秘書であるはずの知香が入ってきた。
どうして知香が山野建設の宴会に顔を見せたのであろうか。
圭子は戸惑った。
知香は悟のところまですたすたと歩くと、悟の手を取ったのである。
「私達、婚約したんですよ。まあ、牝奴隷さんには関係ないでしょうけど」
知香は、指輪を見せびらかすようにして、圭子の前に突き出す。
そして、圭子の目の前で、知香と悟は軽く唇を重ね合った。
圭子のかすかな希望が完全に打ち砕かれたような気がした。
悟との淡い恋は所詮かなえられないものであることは頭では理解していたが、
心の奥底では悟がこの厳しい奴隷生活の支えになっていた部分もあった。
それが木っ端微塵に打ち砕かれたのだ。
圭子は自分の体がガラスの塔のようにさらさらと崩れ落ちていくような感じがした。
思わず圭子の頬を涙が伝った。
その様子を知香が勝ち誇ったような冷笑で見ていた。
「圭子、お前、なんか落ち込んでいるみたいだね。どうしてだい」
明美が圭子のこわばった顔を見て笑い、圭子の後頭部を平手ではたいた。
栗毛色の髪が揺れた。
知香がそれを見て「ばかだねえ」と大笑いする。
「あとで、圭子さんの楽しい芸を見させていただきますね。頑張ってね、牝犬さん」
知香はあざけるような笑いをして、控え室を出て行った。

「つらい・・・」
圭子は芸をできる心理状態ではなくなっていた。
しかし、圭子が性奴隷として淫芸を披露する刻限が迫っていた。
悟は圭子と視線を合わせず無表情である。
時計をちらちら見ていた悟が鶴代に目で合図をした。
「ほら、出ていきなさいよ、早く」
襖を開けて、鶴代がやや躊躇する圭子を両手で座敷へと押し出した。
それとともに、嵐のような歓声に圭子が包まれた。
宴会の参加者は二十人ばかり。膳がコの字の形に並んでいた。
社長の浩二が正面に座っている。
「いよーっ、待っていましたよ」
「相変わらずきれいですねー。今夜は楽しませてくださーい」
酔っ払った幹部が何人か大声を出した。
「ほら、圭子。さっさと挨拶をしなさい」
圭子と一緒に座敷に出てきた明美が圭子を怒鳴り上げる。
「はい」
圭子は足が萎えるのを感じながらも、ふらふらと座敷の中央辺りに歩いていき、ゆっくりと膝をついた。
圭子は顔見知りの幹部達の前で額を畳にこすり付けて土下座して挨拶をする。
手が微かに震えている。
すでに自分はかつての社長夫人ではない。
これから性奴隷としての口上を述べるのである。
「藤川け・・すみません、山野建設の皆様。
今晩は、山野慶蔵様の性奴隷でありますこの圭子の惨めな姿をどうか楽しんでください」
「山野建設」と言うべきところを「藤川」と言い間違ってしまい、圭子は明美に腰を蹴飛ばされた。
幹部達は、かつては優雅で高貴な夫人が明美から無様に折檻を受けているのを見て、笑い声を上げた。
圭子は恥辱のあまり身体が震えたが、同時に被虐の甘美さをも味わいつつあった。

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