sinさんの作品

えり 断章〜17〜 上



「入って頂戴」
 姉ヶ崎奈美枝が、藤本明子をサークル室へ招き入れた。
 昨日、明子の携帯電話に奈美枝からの伝言がふき込まれてあった。
「金田えりさんのことであなたに相談がある、彼女の事が心配なら明日、旧サークル棟へ来てくれ」
 一晩考えた挙句、明子はこうして、悪いうわさのあるサークルの巣窟へとやってきた。
 えりの事が、どうしてもほおっておけないと思ったのだ。
「悪いわね、呼び出したりして。そっちのソファに座って。今、コーヒーでも入れるわね」
 尊大な振る舞いが身についている奈美枝に、もともと控えめな明子は気後れする。
が、今日はえりのことを徹底的に聞いてやろう、と心に決めて来ている。
「飲み物はいいです。それより、金田さんのこと、、、」
「そう、あなたに来てもらったのはその事。
当サークルのマスコット、金田えりのね。」
 「えりは、、、金田さんは私の大切な友達なんです。
失礼ですけど、2時間後には別の約束がありますから、
もし私がそれまでに帰らないと、、、ちょっと問題になるかもしれませんよ」
 明子にとって、精一杯の強がりだった。
 えりが、ボロボロの全裸で警告してくれた。
(サークルに近づかないで、警察でもなんでもいいから、いざという時は自分の身を守って)
 大げさな、とは思うが性奴隷みたいなえりを目の当たりにしている。
万が一を考え、いとこに時間になっても明子から連絡がない場合は、
旧サークル棟に人が倒れているといって警察を呼んでくれといってある。
 明子は挑戦的に(本人としては)奈美枝をにらむ。
ところが、彼女はかすかに軽蔑の色を混ぜた笑みを返す。
 「わたしはね、友情とか信頼とかっていう言葉は嫌いなの。
特に、貧乏人がいう時にはね。どうしてかわかる?」
「?」 ことごとく、話の主導権は奈美枝に奪われていく。
「口でいうだけで、そこには何も無いからよ」 
 あまりの事に明子は声を出せない。
「裏切られても、一銭の損もない。金が無い人ほど言葉を飾るのよね。」
 冷静なら、挑発だと明子にも分かったろう。
しかし、雰囲気にも話の流れにも完全に、呑まれていた。
「違うというなら、あなたの友だちとの友情を、私に示してくれる?
  それができるのなら、前言撤回して金田さんをサークルから脱退させてもいいわ」
 明子は、うなづいていた。


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