えりさんの作品
えり断章〜17〜下 明子の気持ちC
画面に写っている哀れな私は、えりに向かって必死に話し続けている。
「どうして、答えてくれないの? 脅迫されているんでしょう? でも、本当に大丈夫なのよ!」
そんな過去の自分を、画鋲の敷きつめられた椅子に座りながら目の当たりにするしかない私であった。
島が、さらに私の乳首にクリップを挟む。
「勇気を見せてちょうだい! こんな状態から抜け出すのに必要なのは、えり自身の力、それだけなんだよ!」
画面の中でそう叫んでいる自分は、遠い世界の人間のようだ。
「お前ら奴隷の力ってなんだ、そんなにすごい力持ってるのか?」
藤巻はクリップに通した紐を天井に通し、紐の片方の先を私の三つ編みの髪に結び合わせた。
どちらもギリギリ一杯にピンと張っている。
私は上下から自分を嬲りつくすかのような痛みに身悶えしながら、顔と乳房を紐によって上向きにさせられ、
上から藤巻のニヤつく無遠慮な笑顔に見下ろされている。
たらーッと、藤巻の口から出された唾液が私の顔の、目と目の間にかかる。
温かい液体が私の鼻の横を滑り落ちていく。
「なにオレの顔見てんだ、お前が見るのはそっちだろ!」
藤巻は右乳首のクリップの先に結ばれた紐をグイッと引っ張りながら、私の視線をモニターへと促す。
「えり、初めて会ったときのこと、覚えてる?オリエンテーションでさ 、私がえりの隣りにたまたま座っていて……」
一生懸命思い出話をする自分の声を聞きながら、私は無言で屈辱と激痛に耐える。
藤巻の唾液は私の首筋を伝っていく。
「春にも、授業に遅れたえりがくるまで、あたしが課題の質問を続けてさ、15分も時間を稼いだことあったじゃない」
私は、あのときえりが一生懸命私を助けようとして、苦痛に耐えていたことを知らなかった。
そして、えらそうに演技がかった態度で思い出話を語っていたのだ。
ビデオの中のえりは乳首とクリトリスが千切れそうな痛みに耐えながら、目だけで私を見つめていた。
いまならわかる。彼女の苦しみも、絶望も。
あのとき、えりの目はこう言っていたのだ。
「もう、手遅れなの。せめてあなただけはここに来てほしくなかった」
私は、はじめから仕掛けられていた罠に自分からはまってしまった、
部員たちからすれば愚かなメス犬、否、愚かな虫けらだったのだ。
自虐的になった私は、画面の中の自分に心の中でこう呼びかけずにはいられない。
<ようこそ、地獄へ>
いまこの身体を襲う激痛と絶望に耐えるためには、自分を責めることに縋るしかない
。