keikoさんの作品
母娘 残菊物語 57
収録の1週間前に打ち合わせをした。
場所はホテルのロビーであった。
ロビーにあわられた達郎の顔を見た志乃の驚いた表情は痛快であった。
50歳ほどの腹の突き出た男性がプロダクション社長だった。
川上志乃が立ち上がって、達郎に挨拶をした。
顔を上げた志乃の表情がみるみるうちにこわばった。
プロダクション社長が名刺を渡してきた。
「KS芸能プロダクション代表取締役 中宮総一郎」と記してあった。
達郎は中宮の名刺を受け取るとすぐに志乃に視線を戻した。
いい女だ。
女優であったころは、美しい女性だったが、目の前の志乃は美しさに妖艶な色香が加わっている。
「志乃さん、久しぶりだね。どう?元気だった?」
「ええ・・・」
志乃の表情はまだこわばっている。
志乃を出演させる番組の説明を始めたが、志乃はうつむいたままで
その反応が達郎にはわからないのが不満であった。
「それにしても志乃さんのような一世を風靡した方がこのような番組に出演したいとはよほどの事情があるのでしょうな。
なんといっても私の番組は、若い女性の身体を露出させることで視聴率を稼ぐ色物番組ですからな。
そこに川上志乃が出演するとなると、これはけっこうな話題を呼びますぞ。
しかも、聞くところによると、志乃さんはかなりきわどいことまでしてくれるそうですな」
「そうですとも。志乃には何でもさせてけっこうです。
志乃は若さはありませんが、このようにかなり色っぽいキャラがあります。
それに加えて、どMという設定にして売りにする予定です。
M女優として番組でも好きなように使ってくださいよ」
中宮は、よほど汗かきなのか、喫茶店の空調の効いた中でも顔やら首の汗を拭きながら、
身を乗り出して話し始めた。
「ほほう、それでこのことは志乃さんも承知ですかな。
今は引退した身とはいえ、元人気上優の川上志乃さんだ。
復帰ならば、正統路線での復帰もできそうなものを、
どうしてMを売り物にするような色物芸人のような形で復帰するのですかな?」
達郎はタバコを取り出してライターで火をつけた。
深く吸い込み、ふっと紫煙を吐く。
「実はね、本人のたっての頼みなんですよ。
ゆくゆくは志乃は、AV女優としてデビューすることになっています。
そこで商品価値を高めるために、元女優としての経歴を最大限に利用したいというのです。
顔を全国的に売って名を高め、AV女優そしてSM嬢として風俗でも稼ぐ予定をしているのです。
なんとか今井さんのお力添えをいただきたいと思いまして。」
「今井さん、よろしくお願いします」
志乃はようやく口を開いた。
「それでいいのですか?あなたのこれまでの名声が地に落ちることになりますよ」
達郎はふっと紫煙を吐いた。
「いいのです・・・」
志乃は悲しげな表情で達郎を見つめた。
「では、志乃さんの体を見せてもらいましょう。
わたしの番組では水着を着て、世の男性の股間を刺激するような卑猥な内容ですからな」
「部屋を取ってありますから」
中宮が先に立って歩き始める。
すでにチェックインを済ませ、部屋の鍵を持っているのだろう。
エレベーターの方向に歩き出す。志乃がその後ろに従った。
達郎は、志乃のスカート越しに臀部を見つめた。
肉の張った双臀は左右に揺れている。
肉感的な臀部がスカートの中に隠されているのだろう。
その肉体をこれからじっくりと観察できるのだ。
そればかりではない。
中宮は、ホテルの部屋で志乃の体を味わって見ないかと提案していた。
達郎はすぐに承諾した。
これが罠であることも考えたが、志乃を陵辱できる喜びのほうが大きい。
それに、達郎はプロデューサーとはいえ、エロを売り物にした
深夜番組にしか声がかからない窓際プロデューサーである。
失うものはなかった。
達郎が部屋に入ると、志乃だけを入らせて中宮は外からドアを閉めた。
志乃に黒鞄を手渡している。ホテルの密室に志乃と二人だけになった。
達郎は部屋のダブルベッドを確認すると、カウンターバーのウイスキーで水割りを素早く作った。
その間、志乃は鞄を抱えたままで部屋のドアの前に立ち尽くしている。
グラスの一つを志乃に勧める。志乃は無言で首を横に振った。
「こういうときは酔った方がいいのですよ」
無理には勧めなかった。
ダブルのウイスキーを喉に流し込む。
かっとのどが熱くなる。
つくづく役徳だと思う。
番組に起用する女性のほとんどを抱いている。
このような番組への出演を希望する若い女性は、抱かれることに抵抗はないようだ。
声をかければすぐにホテルについてくる。
しかし目の前の女性は上玉だ。
これまでの女性とは美しさが違う。
一世を風靡した女優である。
オーラのようなものが滲んでいるように思えた。
それは、特別な感情を抱いているから、そう感じるのかとも思った。
志乃に対する特別な感情。
あの当時猛烈に抱いた愛情と憎しみ。
今ではこの女の美しさを徹底して穢してやりたいと心底思う。
「ではさっそく身体を見せてもらおう」
志乃がベッドに腰掛ける達郎の前に立った。