霧裡爺さんの作品

めぐの淫夢 4



 身体に群がって陵辱を続けていた男たちが、1人また1人と陽炎のように霞んで消えてゆく。
「祐子さん」
もう1度、はっきり彼女の名を呼んだ。
男たちや他の野次馬たちといっしょに消えて欲しくなかった。
しかし彼女は一言も答えずに、背中を向けてスタスタと歩き出してゆく。
「ま、待って……待って下さい!」
服も下着も見当たらない。全裸のままで追いかけた。
真昼の歩道ですれ違う人たちが、驚きの目を向けてくる。
裸身に視線が刺さり、笑いを浴びた。
それでも走り続けた。何度も転びながら素足で走った。泣きながら走った。
早足で歩く彼女がやっと止まったのは、大きな公園の中央まで着いてからだった。
「久しぶりね、めぐ」
そう言って振り向いた彼女は、高校の頃のままだった。
「ゆ、祐子さん……」
「……ハッ。何そのかっこうは?」
「これは……その――」
説明のしようが無い。急に恥ずかしくなって、しゃがみこんだ。
少し離れたところにあるベンチで煙草を吸っている若いサラリーマン風の男が、
目を丸くして見つめている。
犬の散歩の途中らしきお爺さんも、金縛りにでもあったように硬直している。
「ずいぶんと、ヤリまくられてたじゃないの」
いきなり足で小突かれて、裸身を丸めたままで地面に転がった。
「アッ」
「あーあっ。身体中ぶっかけられて……臭いぞ」
「……ごめんなさい」
「そこで洗ってきな」
すぐそばにある噴水を、祐子はあごで指した。
「は、はい……」
噴水の縁に並んで腰掛けて、足を水に入れて遊んでる2人の幼児が、
不思議そうな表情でこちらをじっと見ている。
それを無視して中に入った。
膝が出るくらいの深さしかない。
――中に入っちゃ、いけないんだよー。
おそらく親にそう言われているのだろう。幼児の1人が声を上げた。
それを聞いて祐子がくすくすと笑っている。
「いけないお姉ちゃんだよねー。あ、ぼくたち。いいもの持ってるね。ちょっと貸してくれない」
祐子が小さなプラスチック製のおもちゃのバケツで、噴水の中で座り込んでいるめぐに頭から水をかけた。
「ちゃんと下も洗いなよ。そこが1番汚れてるんだろ」
言われたとおりに股間に手を当てて、水の中でこすって洗った。
そのときになって、自分の身体に自由が戻っているのに気がついた。
「じゃあ、行くか」
水をかけるのに飽きたように、祐子は立ち上がった。
「えっ……?」
「そんなかっこうじゃ困るだろ。ウチに来な」
そう言って、またスタスタと歩き出した。
「ま、待って――」
慌てて立ち上がり、ずぶ濡れの裸身を両手で覆いながら追いかける。
裸で歩かされる羞恥よりも、置いて行かれる心細さの方が強かった。
「お願い。祐子さん。待って!」
必死に追いかけているのに、歩いているだけの彼女の背中は小さくなるばかりである。
ついにめぐは走り出した。
手で身体を覆う余裕も無い。
それは街行く人々への格好の見世物となり、注目を一身に集めることになった。
なにしろ全身ずぶ濡れの全裸の女が、乳房も陰毛も尻も丸出しで走っているのだ。
しかも異常にスピードが遅い。
(ああっ! どうして……?)
まるで深い海の底にでもいるように、緩慢な動きしかできない。
通りすがる人たちに遊び半分に胸を触られ、尻をペチペチと叩かれ、陰毛までも弄られながら、
それでも懸命に走った。
祐子の背中を追って、地下鉄の駅への階段を下りる。
――おい。見ろよ、あれ。裸だぞ。
悲鳴を上げる少女。
野次を飛ばし、口笛を吹く男。
携帯を構える者。
笑う者。怒る者。泣き出す子供までいた。
(いやっ! 見ないで。お願い)
視線に晒された乳首が、甘い疼きを感じて尖っている。
洗ったばかりの内腿は、すでにヌルヌルとした感触を感じていた。
身体の芯が恥辱に反応して火照り出す。
火照った素っ裸の肉体のまま、スローモーションの走りで改札を突き抜けた。
すでに電車に乗っている祐子が、笑って見ている。
閉まりかかってる扉の間をすり抜け、なんとか電車に飛び乗った。
「何モタモタしてんだよ」
「ご、ごめんなさい……」
その場でへたり込んだ。もしも乗り遅れていたらと思うと――。
「あんなにゆっくり歩いて。そんなに裸を見せたかったのか」
「ち、違い――」
精一杯、走っているつもりだった。
「そう言えばおまえさ、学校でも素っ裸で歩かされたことあったよな。覚えてるか?」
電車の中は満員というほどでもないが、座席はほとんど埋まっており、
チラホラと吊り革につかまってる人もいる。
当然のことながら全裸で駆け込んできためぐに、全員の視線が集中している。
静まり返って聞き耳も立てている。
その中で祐子は扉の横の座席に座って、声も落とさずに話し続け、
あったよな――と、さらに大きな声で返事を促した。
「は、はい……」
消え入りそうな声で答えた。
あの出来事を忘れられるはずがない。
どれほど思いだしたことか。
「あのとき濡らしてただろ」
事も無げに放たれた言葉に顔が染まった。
車両中の人間に聞かれている。
目をつぶって小さく頷くと、やっぱりな――と笑われた。
「今も、じゃないのか? 見せな。検査してやるよ」
「えっ……あの……」
「立って足開け」
できるはずがない。
大勢の乗客が見ている。注目しているのだ。
「早く」
もし、そんなことをしてしまったら――。
心の奥底で何かが小さく疼く。
「早く」
想像すると身体が熱い。呼吸が苦しい。
「早く!」
「ゆ、許して……」
言いながら立ち上がっていた。
「こっちだ。正面に来い」
そろそろと歩いた。
祐子の隣に座っている中年男性は、眠っているふりをしながらも、薄目でこちらを見ているのが
はっきり分かった。
その前で言われるがままに両手で吊り革を握って、ゆっくり足を開き始める。
「あ……あ……」
「もっとだ。全然見えないだろ」
遂に両膝は肩幅よりも大きく離れ、衆人環視の車内の中で人の字形の全裸を晒してしまっていた。
「あはははっ。やっぱりな。おまえ、べちょべちょじゃないか」
まるで車両中の人に知らせるような大声で笑われた。
(い、言わないで、何も。見ないで……)
そのまま動くなよ――と、祐子の右手が伸びる。
「ヒウッ!」
最も敏感な肉粒を下から探り当てられていた。
「はっ。思ったとおり。何だよ、これ。ピンピンに立たせやがって」
同性らしい繊細で的確なタッチに、身体の奥底まで性感を揺さぶられる。
快楽に屈した膝が崩れ落ちそうになり、両手で吊り革を強く握った。
祐子による性器の状態検査は「うわっ」だの「ひでえ」だの罵られながら続いた。
全身に、特に背後に感じる乗客たちの視線がチクチクと痛い。
祐子の隣の男は、なおもへたくそな寝たフリを続けながら頭の位置をずらして、
羞恥の部分を覗き込もうとしている。
「見られて嬉しいんだろ」
スリスリと下から上へ、祐子の指の腹でクリトリスがこすり上げられた。
「フッウッ……あ――」
止めようもなく恥ずかしい蜜汁が吐き出されてゆく。
「どうなんだ!」
そこを根元から摘まれて、焦らすようにゆっくり回された。
「アッ、ウッ――」
甘い刺激に腰が震える。
目をきつく閉じて頷くのが精一杯だった。
「よし。じゃあ、もっと悦ばしてやる」
「ンッ!」
限界まで尖りきっているクリトリスがピンと軽く爪で弾かれ、めぐは膝から崩れて両手を着いた。
鋭い痛みの後に、まるで打たれた鐘のようにジーンと痺れが襲い、
それすらも淫らな悦楽へと転化されてしまうのだ。
「なにやってんだ。立てよ。みんなに見てもらうんだ」
なんとか立ち上がった。静まり返っている車内に、静かな地下鉄の走行音と
自分の荒い息遣いだけが響いた。
「行くぞ。歩け」
後頭部を軽く祐子にはたかれた。
「えっ……」
「見られると嬉しいんだろー。車内中を歩かせてやる。学校でもやったんだからできるだろ」
「そ、そんな……」
ほら、行け――と、腰を蹴り出されて、よろめくように歩く。
(本当に……本当にこの中を歩くの……)
確かに祐子の言うとおり、学校の廊下を全裸で歩かされたこともあった。
しかし、あのときは数人に囲まれていたので、完全な晒し者にとまでは言えず、
しかも校内という閉ざされた場所でのことである。
さっき歩道で全裸を晒してオナニーさせられたときのように、身体の自由を乗っ取られている訳でもない。
祐子に置いていかれまいとして、全裸で走ったときとも違う。
今度は完全に自分の意思で、自由になっている身体で、何かのためにしかたがないんだという
言い訳の余地もなく、白昼の不特定多数の人がいる公共の交通機関の中で全裸を晒して歩かねばならないのだ。

そう思うと――。
さらに言えば、ただの全裸でもない。
何度も自分の指で果てさせたうえに、何度も犯された身体である。
今も欲情しきっている淫らな状態の裸体を晒すのだ。
不意にヒクリとアナルが疼いた。
彼の目の前で、ボールペンを使ってそこを弄ったときに浴びせられた悲しげな視線を思い出す。
それとは対称的に楽しそうな目で祐子が命じてくる。
「歩け!」
「アウッ――」
バチンッ――と、音を立てて強烈に尻が叩かれた。
元バレー部の祐子の容赦のない一撃を受けて身体が前に出る。
そして、その勢いを借りるように足を運ぶ。
(わ、わたし……私――)
「バカッ。手で隠してたら意味ないだろ」
胸と股間を覆っていた手を、後ろで組まされた。
空いた部分に視線が集中するのをはっきり感じた。
「あっ……あっ……」
呻きとも喘ぎともつかない声を漏らしながら歩いた。
ゆっくりと次の車両へ。
突然現れた全裸の女に、空気が凍りついた。
あまりにも信じられない光景に接したせいか、野次どころか物音一つ発せられない。
かえってその方が辛かった。
物言わぬ視線だけが群れを成して四方八方からやってくるのだ。
舐めまわすように、刺し貫くように。
「せっかくだからさ。自己紹介でもしながら歩きなよ。こんなふうに――」
祐子のその言葉は耳からではなく、なぜか直接頭の中に響いてきて、
もうそれを不思議とも思わなくなっていた。
「わ、私の名前は……めぐ。××めぐと言います。あ、あの――」
言いながらそろそろと歩く。足の裏の感触は何かフワフワしていた。
「突然裸でごめんなさい……私、ろ、露出狂なんです――」
歩きながら股間から湿った音が聞こえた気がした。
「だから見て……見て欲しいんです! オッパイも……お、オマンコも。アァッ」
震える足を開いた。そこに空気と視線が入り込む。
「み、見て! 恥ずかしいところをっ……こんなにして――」
次の車両では、もっと大きく足を開いたまま歩いた。
「オマンコッ! 見て……ぬ、濡らしてます――」
(どうして……どうして、こんなことを)
次の車両では、自分の指で秘唇をいっぱいに開いたままで歩いた。
「な、中まで……クリトリスも立ててしまってます。見て――」
恥ずかしい汁がポタポタと垂れた。
その様子を見て祐子が大笑いする。
笑われながら尻をペチペチと叩かれた。
そして次の車両では。
「め、めぐは見られて、このとおり興奮しています……ま、マン汁もこぼして……
もう、我慢できません。触って……どこでも自由に。
素っ裸でオマンコ濡らして歩いている変態なんです……どうぞ弄って、いじめて!」
頭の中に響く祐子の言葉を、自分の口で感情を込めて言い放つ。
歩き続けた。
歩きながら、まずは乗客に右の乳房がそっと揉まれた。
次に祐子の手形がつけられている尻が撫でられた。
「フウッ」
左の乳房がギュッと握られた。
抵抗しないのを見て取ったせいか、身体に伸びてくる手の本数が一気に増えてゆく。
「も、もっと……です。もっと……ひどくしてくれてもいいんです。私……ま、マゾ、マゾ女ですから
。めちゃくちゃに、アァッ!」
開いたままの足の内側、内腿をさすっていた手が上に。
スッ――と、女の溝がなぞり上げられた。
「ヒアッ!」
乳首が摘まれた。
お尻が揉まれた。
脇腹がさすられた。
クリトリスが撫でられた。
「ウアッ、ああっ」
さらに信じられないほどの無数の手が伸びてくる。
全身が余すとこなく、下は足首から上は頭頂部に至るまで執拗に愛撫される。
指の1本1本までも甘く握られ、さすられ、指の間までも攻められた。
うなじ、わきの下、おへそ、背中、ふくらはぎ、唇、鼻、耳。
自分でも分からないところの性感を未知の方法で掘り起こされ、熱せられてゆく。
全身が淫らな性感の塊に変えられた気分になった。
「フッ、フッ、フォッ――」
それでも奇跡のように歩き続けた。
全身が火のように熱い。
「ヒウッ!」
それまで身体の表面だけにとどまっていた愛撫が、遂に体内にまで入り込んできた。
2本の指が濡れそぼる羞恥の部分を貫いている。
その衝撃で足が止まった。ピンで刺されたばかりの標本の蝶のように、細かく震えるのみである。
その指に覚えがあった。
(ゆ、祐子さん……)
過去に自分のそこを初めて裂いた同性の指。間違いない。
立ち止まってしまったがために、それまで以上の激しさで愛撫が加えられてゆく。
アナルまでも指で犯され、乳房の頂点と秘裂の上端にある3つの突起を
同時にめちゃくちゃに弄られた。
「フッ、ファァァッ。あうあ!」
すがるように入れられた指を粘膜が締め付ける。
(祐子さん、祐子さん――)
喘ぐ唇に、求める祐子の唇が重ねられた。
舌が侵入してくる。
互いの舌先が触れた瞬間、
「――――ッ!」
稲妻にも似た鋭い快楽が閃く。世界が白光した。
快楽の大波に呑み込まれ、ビクンビクンと発作のような愉悦の余韻に震える裸体は、
やがてゆっくりと床に沈んでいった。


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