霧裡爺さんの作品

電車7



(お願い! 助けてっ!)
 由紀子は、そう泣き叫んだつもりだった。
が、口に入れられている下着に阻まれ、意味不明な呻き声にしかならない。
 今や、由紀子のいる車両は、さながら舞台のようになっていた。
360度を観客に囲まれている特殊ステージである。
 特等席は車両と隣接しているホームだろう。
後姿しか見えないが、なんと言っても近いし、開いたままの乗降口からは頭から足元まで見える。
また、乗降口と乗降口の間からは窓ガラス越しではあるが、
尻を突き出されて立たされている由紀子のアナルから性器まで、真正面の位置で観察することができた。
陰毛が全て奪われていることもあって、秘肉のたたずまいが残酷なほどによく見えていた。
 車両を挟んで反対側にあるホームにも大勢の人がいるが、やはり距離が開きすぎている。
由紀子の前面を見ることができるが、下半身は座席に隠れているし、
うな垂れているので顔を見ることもできない。
かろうじて乳房だけを遠くに見ることができた。
 由紀子のいる車両と前後の車両とを繋いでいる連結部のドアも開け放たれ、
そこにも数人の見物人が陣取り、好奇の視線を投げかけていた。
 ただ、不穏な空気を感じてか、関わり合いになりたくないのか、由紀子のいる車両には誰も乗っていない。
ステージ上に立つのは、素っ裸で便意と官能と痒みの三重苦に踊る、哀れな29歳の女ひとりのみであった。
(……ああ……あああ――)
 呻く由紀子の脳裏が「どうして?」という文字で埋め尽くされていた。
 残り一生分のその言葉を使い切ってしまったかもしれない。あの少女たちと出会ってから。
 受け入れ難い過酷な現実に感覚が歪められ、晒されてからどれほどの時間が経ったのかわからない。
30秒なのか、それとも30分なのか。ずいぶん長く間、こうしている気がしていた。
(クウッ!)
 痛みを伴う発作が起こり、自分の腸が鳴動しているのがわかる。
 それだけは――と、全身を硬直させるように力を込め、最後の砦のアナルを締める。と――。
(フウッ!)
 連動してしまう秘肉が、ぎりりっとバイブを握り締めた。
よりはっきりとバイブの動きが感じられ、甘美な昂ぶりが高められてゆく。
 さらに、締められてわずかに角度を変えたバイブ本体と共に、
途中から生えている細い枝のような部分が震動しながらズレ動き、予想外の刺激をクリトリスに与えた。
(ンアッ! だめっ!)
 腰の奥に走る愉悦に、力が抜けそうになる。
由紀子は、握らされている吊り革にしがみつくようにし、首を振って耐えようとした。
 気がつくと首だけでなく両肩を、いや、乳房を揺さぶるようにしていた。
とろろ汁を擦り込まれた乳首が痒くて、ジンジンと疼いているのだ。
膣の奥も、性器周辺も、アナルも、内股までも痒みを訴え続けている。
 いっそ、あさましく腰を振りたくってしまいたくなる。そうなれば――。
 由紀子は、そっと目を開けた。
 大股開きの足の間に、自分のコートが敷かれている。
さらにその上、アナルの真下にバッグが大きく口を開けた状態で置かれていた。
どちらも夫に無理に買わせたブランド品である。
「大人なんだから漏らすなんてありえないと思うけど、万が一ってことがあるしね」
「やるんなら、ちゃんと狙ってやんなよ。駅員さんだってオバサンのウンチなんか触りたくないだろうからさ」
 そう言って、少女たちが置いていったものだ。
 このままでは、いずれ少女たちの思いどおりになってしまう。
かと言って逃げる方法もない。できるのは耐えることだけだった。
 衆人環視の中、痒みと羞恥に震える由紀子の肉体に、排泄の波と官能の波が交互に襲い掛かる。
どちらの波も大きく小さく揺れながら、徐々に強さを増してゆくのだ。
 時間が経つにつれ、敗色は濃厚になってゆく。
(も、もう……もう、フウッ――)
 喰らいついて離れぬ蛇のように、縛り付けられているバイブが由紀子の弱点を的確に、
そして途切れることなく責めなぶった。
 太い快楽が螺旋を描き、由紀子の背筋を駆け上がってゆく。
それが脳まで到達し、今にもアクメに陥ろうとしていた。
 そのとき――。
(ハウッ!)
 一瞬、力の抜けていたアナルから気体が漏れた。
湿っぽいおならだった。
あとわずかでも締めるのが遅れていたら、そしてアクメに陥っていたなら、
間違いなく全てを放出してしまっただろう。
 音を聴かれ、臭いに気づかれたのでは――と、今さらながら由紀子は顔を赤らめる。
背後には大勢の人の気配があるのだ。
 満座の中、淫具に犯されながらぶざまにアクメに果てるか、
これ見よがしに尻を突き出したまま脱糞の恥にまみれるか、その両方か。
 迫り来る恥辱と汚辱の板ばさみの中、由紀子は祈るしかなかった。
 どうして、どうしてこんな――。
 絶望に、目が眩む。
 その暗い光の中で突如、過去の映像が浮かんだ。
 あれ、は――。


メニューへ 妄想小説へ 次へ進む

動画 アダルト動画 ライブチャット