黒い森さんの作品

復讐 二章1



「いらっしゃい。・・なんだ、あんたか。」
「なんだは無いだろう!良江、いい情報を持って来てやったぜ。」
店に入って来たいかにもやくざ風の男が良江に言った。
「いい情報って何よ。」
「九条由梨子って言う女の件さ。」
それを聞いて良江の顔からさっと笑顔が消えた。
ブティック・フローレン2号店オープンから二年が過ぎていた。
良江は既にフローレンを辞め、場末の小さなスナックのホステスになっていた。
店にやってきた柿崎と言う男はこの店で知り合った良江の情夫だ。
「由梨子には2つ年下の妹がいるんだがな、こいつが姉さんとは顔も頭のできも全く似てなくてよ、今じゃ相当の悪になってやがる。」
「ほんとう?」
「ああ、それでもって姉貴の事は相当恨んでいる。昔姉貴の不注意から起こした事故で右腕を失った事が原因らしい。」
「あの女にそんな事が・・。それで今どこにいるの?」
「行方不明だったが最近この街に戻っていた事がわかった。」
 良江はあの忌々しい九条由梨子との事を思い出していた。
フローレン2号店オープンから半年後、良江は完全に孤立していた。
それまでに何度も由梨子と対立を繰り返した結果、2号店での自分の仕事はほとんど何も無く、店員達からも疎まれるようになってしまった。
そして1号店にも戻る場所は無くなっていた。
香川に相談しても無駄だった。
香川はもはやすっかり由梨子の味方になってしまっていた。
良江は耐えきれず店を辞めてしまった。
だが、その後すぐにフローレンは3号店を出店したのだ。
良江には何も知らされていなかった。
そうと知っていれば、自分もまだ諦めなかったかも知れない。
由梨子は良江が辞める時にも何も教えてくれなかったのだ。
「わざと教えなかったのね!」
良江は辞めてから一度だけ由梨子の店に乗り込んだ。
「3号店の店長はもう他の人に決まっていたからですよ。
それに自分が店長に選ばれなかったからって、私のせいにされても困りますわ。ねえ?」
その時、由梨子は周りにいたスタッフ達に同意を求めるように返した。
「そうですよ、良江さん。」
「今さら何言ってんですか?」
スタッフ達ももう辞めた良江の事などどうでもいいといった調子で応じた。
良江は散々に恥をかいて、泣きながら帰ったのだった。
 その後すぐに香川が突然急な病で倒れ、代わってなんと由梨子が社長に就任した。
そして今や九条由梨子は5店舗を展開するブティック・フローレンの若き女性社長だった。
マスコミからもたまに取材を受けるまでになっている。
(あの時、由梨子さえ私の前に現れなかったら・・)
私が今の由梨子の位置にいるはずよ!良江はそう思えてならなかった。
こんな場末のスナックで下衆な男達の相手をしている自分の惨めさを思うと由梨子への憎悪が激しく燃え上がるのだった。


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